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〇〇は『赤き雪原』に向かうそうです その111

 綿の精霊たちは女王であるメインに「たまに戻ってきてほしい」と言った。

 メインはそこで首を横に振らず元気に「はい!」と言った。

 その時、綿の精霊たちが俺に殺意を向けているような気がした。

 無理もない。俺はこの世界の宝を盗んだ泥棒のようなものなのだから。


「じゃあ、行くか」


「うん!」


「はぁ……まったく、すっかりナオトのとりこになったわね」


「お前も似たようなものだろ」


「か、勘違いしないで! あたしはあんたを利用してるだけよ!」


 はいはい。

 まったく、お前は相変わらず素直じゃないな。


「あっ、そういえば、ここから出るにはどうしたらいいんだ?」


「それなら、向こうに出口があるよ。ついてきて」


「お、おう」


 出口の場所は知ってるんだな。

 というか、こいつの母親は今どこにいるんだろうな。

 彼がそんなことを考えていると、彼の脳内に聞いたことのない声が響いた。


「娘の命はこの世界のコアです。もし、娘が死ぬようなことがあれば、あなたを呪い殺します。覚悟しておいてください」


「肝にめいじておきます」


「お兄ちゃん、今なんか言った?」


「いや、何でもないよ。さぁ、早くここから出よう」


「うん!」


 ミノリ(吸血鬼)は彼が誰かと約束をしたことに気づいた。

 気づいたが、それに対して口出しする権利は自分にはないと思い、それに言及することなく二人のあとに続いた。


 *


「あー、良かった。やっと出られたー」


「うわあ、ここが外の世界なんだね」


 綿の精霊たちがいる世界から出た俺たちはミサキが管理している植物園の綿の木がある場所に着地した。


「おかえり。ナオト。はぁ……あんたって何かするたびに女の子を連れてくるのね」


「げっ! ミノリ! あー、いや、これには深いわけがあってだな」


「知ってるわよ。あっちの世界にいた時のあたしと記憶を共有してるから」


 なら、最初からそう言えよ。

 というか、あの世界にいたお前はどうなったんだ?


「あっ、それと向こうの世界にいたあたしはちゃんとあたしの血になって、あたしの中に帰還したわよ」


「そうか。つまり、あの世界にいたミノリはお前の一部になったってことだな」


「元々、あたしの血なんだから戻ってきてくれないと困るのよ。色々と……」


 へえ、そういうものなのか。


「ねえねえ、お兄ちゃん。ここはどこ? なんかお花とか草がたくさんあるよ」


「うーんとだな、ここは……なんて言ったらいいかな」


「ここは僕が管理している植物園だよ。メインちゃん」


 誰? 男の子?


「よう、ミサキ。なんか久々に顔を見たような気がするな」


「そうかな? 僕は別にそう思わないけど」


「ねえねえ、お兄ちゃん。この男の子はだあれ?」


 メイン、こいつは男じゃないんだ。

 見た目は男っぽいけど、女の子なんだよ。


「いいか、メイン。こいつはミサキ。この亀型モンスターの本体で一応、女の子だ」


「そうなの? 分かりにくいなー」


 それはまあ……そうだな。


「ご主人、一応は余計だよ」


「あー、すまない。でも、初対面で気づけるやつなんているのか?」


 それは……まあ、ほとんどいない……かな。


「まあ、そこそこいる……と思うよ」


「ほう」


 ミノリ(吸血鬼)が咳払いをする。


「えっと、それでその娘はこれからどうするの? やっぱり一緒に暮らす、のよね?」


「まあ、そうなるな」


「ねえねえ、お兄ちゃん。お兄ちゃんは綿が欲しいの?」


「え? あー、まあ、欲しくないと言ったら嘘になるな」


「そっか。じゃあ、お兄ちゃんの体に綿の木を植えるね」


 ……え?


「え? ちょ、そんなことしたら、俺死んじゃうぞ?」


「え? 大丈夫だよ。だよね? ミサキお姉ちゃん」


「うーん、まあ、たしかにその通りなんだけど」


 そ、そうなのか!? 初耳なんだが!!


「ということで、お兄ちゃん。少しじっとしててね」


「え? う、嘘だろ。や、やめ……ああああああああああああああ!!」


 この日、ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)の頭に綿の木が生えた。

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