表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

334/420

〇〇は『赤き雪原』に向かうそうです その103

 なんだろう、なんかふかふかしてるな。

 雲の上にいるのかな?

 いや、待て。雲に触ることはできてもふかふかしていると感じることはないはずだ。

 だとしたら、この感触はいったい……。

 ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)が目を開けると、どこまでも白い空間が広がっていた。


「ここは……どこだ?」


「あっ、起きた」


「起きたね」


「起きたよ」


「びっくりした」


「動いた」


「生きてる」


「こんな子どもが選ばれたのか」


「どうでもいい」


 な、なんだ? いろんな声が聞こえてくるぞ?

 彼が上体を起こすと、丸い綿わたかたまりに目と口がある謎の生命体たちが彼を囲むように移動した。


「お、お前たちはいったい……」


「おや、ようやく目を覚ましたのですね」


 彼の目の前に胸と秘所を綿のようなもので隠している女性が現れた。

 ひとみあかく、透明に近い白髪ロングは髪というより糸に近い。


「あんたは誰だ? 俺をどうするつもりだ?」


「どうやらひどく混乱しているようですね。まあ、とりあえず質問に答えましょう。私は女王です。正確には綿の精霊たちの女王ですね」


 綿の精霊?

 そんなのがいるのか。


「あなたは私たちを満足させるまで、ここから出ることはできませんが、別に骨のずいまでしゃぶりくすつもりはありませんので、そこは心配しないでください。他に何か知りたいことはありますか?」


「満足させるって、なんだ? 俺は具体的に何をすればいいんだ?」


 彼女はニッコリ笑うと、彼の目の前でしゃがんだ。


「それはですね。こうして、私たちを抱きしめるだけでいいんですよ。ほら、このように」


 彼女の体は体というより綿を抱きしめているような感じだった。

 人の形をした綿。そんな感じだ。


「え、えっと、お前たちは綿の精霊なんだよな?」


「はい、そうです」


「なら、俺みたいな人間じゃなくて、お前らでハグすればいいじゃないか」


「ここにいるのは人のぬくもりというものをあまり知らない子どもたちと、ここから出ることができない女王だけです。それ故に時々、こうして誰かのぬくもりを感じないとぬくもりというものを忘れてしまうのです。それを忘れてしまうと、私たちは枯れてしまうのです」


 そうか。だから、わざわざ俺をこんなところに連れてきたんだな。


「なるほどな。まあ、そっちの事情はなんとなく分かったけど、俺はなるべく早く帰らないといけないんだよ。だからさ、できればでいいから手短に済ませてくれないか?」


「それはあなたの頑張り次第で決まります。さぁ、子どもたち。この少年のぬくもりを感じるのです」


『わー!』


 先ほどの丸い綿のかたまりのような生命体がうじゃうじゃ現れる。

 はぁ……これは早めに帰れそうにないな。

 ナオトはしばらくの間、目を閉じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ