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〇〇は『赤き雪原』に向かうそうです その101

 植物園に現れた黒い天使……その正体は!


「ミノリー!! 怖かったよー!!」


「ちょ、あの程度でそこまで泣く必要あるの? というか、あたしに血を吸われるよりかはマシでしょ?」


 ミノリ(吸血鬼)はナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)を抱きしめながら、優しく頭を撫でる。


「お前は血を吸った後、ちゃんと噛んだところをふさいでくれるだろ? でも、この二人は本気で俺のことを襲おうとしてたんだ。だから、怖くて怖くて」


「情けないわね。あんたなら、なんとかできるでしょ? シャキッとしなさいよ。シャキッと」


「で、でもよー」


 あー、これはダメね。

 とりあえずなぐさめてあげましょう。


「ナオト、あんたは厄介ごとに巻き込まれやすいというか厄介ごとに首を突っ込んでいくタイプなんだから、ちょっと嫌なことがあってもいちいち気にしない方がいいわよ」


「そう、だな。ありがとう、ミノリ。お前にはいつも助けられてばかりだな」


 彼女はニッコリ微笑ほほえむ。


「そんなことないわよ。あたしはあんたのおかげで毎日楽しく過ごせてるし、あんたがいればこの先どんなことがあってもきっと大丈夫だって思ってる。だから、あんたはもっと堂々としてなさい。分かった?」


「ああ、分かった。それにしても、お前は本当に優しいな。本当に吸血鬼なのか?」


「元は人間だけど、今は吸血鬼よ」


「そう、だったな。お前は……お前たちはモンスターチルドレンだったな」


 二人がそんな話をしていると、ツキネ(黒髪ポニテのアパートの管理人さんの姿に変身している変身型スライム)とミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)が目を覚ました。


「あっ、兄さん。おはようございます」


「おはよう、ご主人。あれ? どうしてミノリ(きみ)がここにいるんだい?」


「はぁ……どうやらさっきまでの記憶はないみたいね。あんたたちはナオトを襲おうとしてたのよ。おそらく、さっきまであんたたちの頭に生えていた植物のせいだと思うから、早くその植物を特定して管理方法を改めた方がいいと思うわよ」


 ミノリはすごいな。

 すぐに対処できて。


「なんだかよく分からないけど、そうさせてもらうよ。四聖獣しせいじゅうの一体である僕が植物に負けるわけにはいかないからね」


「生き物は最終的に自然に帰るんだから、別に気にしなくてもいいと思うわよ。それで? 綿わたの木はどこにあるの?」


「すぐそこだよ。案内しようか?」


「あんたはさっきの変な植物の方をなんとかしなさい。あっ、でも場所だけ教えてもらえる?」


「分かった。えーっと、たしか……」


 ミノリ(吸血鬼)は必要な情報をミサキから受け取ると、こちらにやってきた。


「ナオト、あんたはここから出るまで、あたしの手を離しちゃダメよ」


「え? それはいったいどういう……」


「いいから早くして。ほら、早く」


「お、おう」


 俺がミノリの手を握ると、彼女は目的地に向かって歩き始めた。


「ちょ、ちょっと! 私を置いていかないでくださいよー!」


 ツキネが俺たちの後を追い始める。

 綿わたの木はもうすぐそこだ。

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