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〇〇は『赤き雪原』に向かうそうです その96

 シアン(擬人化したメスドラゴン)は巨大な亀型モンスターの甲羅と合体しているアパートの二階にある一室から飛び出すと、アパートの屋根まで飛んだ。

 ジャンプしたわけではなく、背中に生えている二枚の翼を使って飛翔したのである。


「ナオト!」


「え? おー、シアンか。何か用……」


 ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)が最後まで言い終わる前に彼女は彼に抱きついた。


「ごめんなさい! 私、ナオトにひどいこと言った! ナオトは化け物なんかじゃない! だから!」


 彼は彼女をギュッと抱きしめる。


「俺は大丈夫だ。それより、こっちこそごめんな。内緒にしてて」


「ううん、私の方が悪い! 本当はあんなこと言うつもりなんてなかった。あの時の私はどうかしてた!」


「それも知ってるよ。あと、それは心から恐ろしいものを見た時の反応だから、別におかしくないんだぞ?」


「でも! ……でも!」


 そんな感じで謝罪の言葉がしばらく飛び交っていた。それを間近で見ていたミノリ(吸血鬼)はそろそろ終わらないかなーと思っていた。


「まあ、その、なんだ。俺はお前のことを見捨てたりしないから、お前もできればそうしてくれ」


「うん、分かった。私はナオトを守る。これはそのあかし


 シアンはナオトの頬にキスをした。

 それを見ていたミノリ(吸血鬼)は二人の間に割って入った。


「あ、あんた! いきなり何してんの!? 新入りのくせに!!」


「今のは、ただの儀式。本当は一ヶ月くらいかけてやるもの。今回はそれを簡略化した。ナオトは私が守る」


 そんなの分かってるわよ。

 けど、なんというか、こう……。


「ミノリ、お前の言いたいことは分かるけど、それをシアンに言っても多分、理解できないぞ」


「あああ、あんたに何が分かるのよ! ナオトのバカ!」


 彼はスッと立ち上がると、彼女を優しく抱き寄せた。


「ちょ、ちょっと! いきなり何すんのよ! 離しなさいよ!」


「それは無理だ」


「意味分かんないわよ! ちゃんと説明しなさいよ!」


 彼はミノリをギュッと抱きしめる。


「ミノリ。お前はいつも俺やみんなのことを考えてくれてるよな。それはものすごく嬉しいんだけどよ、お前自身の感情を縛りつけるのはやめてほしいんだ。少しずつでいいから素直になってほしいんだ」


「……あんたって、本当にバカね。あたし、すぐに嫉妬しちゃう面倒なやつなのよ? それなのに、こんなに優しくされたら……離れられなくなっちゃうじゃない」


 シアンはミノリのとなりに立つと、彼女の頬にキスをした。


「ちょ、ちょっと! いきなり何すんのよ!」


「あなたのことも私が守る。今のはそのあかし。ただそれだけ」


「そ、そうなの? えっと、あ、ありがとう」


「どういたしまして。あっ、ナオトにもしてあげるね」


「え? いや、俺はさっきやってもらったから別にいいぞ」


「ダメ。ナオトにする回数が他のみんなより少ないのはおかしい。だから、やる。やらせて。やらせろ」


「えっと、なんか命令口調になってるんだけど」


「気のせい」


「いや、でも」


「気のせい……」


 そんな感じで三人はしばらくアパートの屋根の上で騒いでいた。

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