表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

324/420

〇〇は『赤き雪原』に向かうそうです その93

 ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)はしばらくシアン(擬人化したメスドラゴン)の『人形』になることが決定したため彼は彼女が満足するまで動けない。


「とりあえず左耳、舐めるよ」


 いきなりか。

 もう責める気満々だな。


「はむっ……」


 彼女は彼の弱点である左耳に甘噛みすると、舌でゆっくりと舐め回した。


「……うん、おいしい。ずっと舐めていられる」


 それは非常に困るのだが。

 床に横になっているナオトはずっと天井しか見ていない。


「うーん、なんかつまらないな。あっ、そうだ」


 彼女は彼の口をこじ開けると、彼の舌を親指と人差し指ではさんだ。


「ナオト、私の唾液、飲んで」


 それ、俺がヒバリ(『四聖獣しせいじゅう』の一体である『朱雀すざく』の本体)にしたやつだ。


「ちょっと待っててね。もう少しめるから」


 いや、まだ飲むなんて一言も言ってないんだけど。


「……よし、じゃあ、もっと口開けて」


 も、もっと? あんまり開けても辛いだけなんだが。


「あっ、そうだ。口移ししよう」


 え? それはちょっと困るな。

 いや、ちょっとどころじゃない。かなり困るぞ。

 彼は少しだけ右手の人差し指を動かした。


「ナオト、動いちゃダメだよ。今、ナオトは『お人形さん』なんだから」


 彼女の顔が近づいてくる。

 ひなえさを与える親鳥のように口に含んだ唾液を飲ませようとしている。


「ナオトー、どこにいるのー? ……って、ね、ねえ、シアン。これはいったいどういうこと?」


「吸血鬼に教えることは何もない」


 ミノリ(吸血鬼)は苦笑しつつ彼女をナオトから引き剥がした。


「ナオトはお人好しだから、あんまり嫌だって言わないけど、あんたの欲を満たすための道具にするのは許さない。だから、もうやめて」


「なるほど。理解した。ナオト、もう動いていいよ」


「お、おう」


 彼が上体を起こすと、彼女は彼をギュッと抱きしめた。


「ど、どうしたんだ? シアン。ミノリに何か言われたのか?」


「別に何も言われてない。あと、しばらくこのままでいたい。いい、かな?」


「ああ、いいぞ」


 こいつ、瞬時にナオトが喜びそうなことをやり始めたわね。

 まあ、ナオトに危害を加えそうな雰囲気じゃないから別にいいけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ