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〇〇は『赤き雪原』に向かうそうです その75

 カリン(聖獣王)の体調が良くなったため、俺は寝室から退室した。

 その直後、ライカ(悪魔型モンスターチルドレン)に話しかけられた。


「師匠ー、何してたのー?」


「え? あー、まあ、ちょっとカリンに体をいじられ」


 この言い方だと誤解されるかもしれないな。


「じゃなくて……。そう! マッサージしてもらってたんだよ」


「マッサージ?」


「あ、ああ、そうだ。マッサージだ」


「へえ、そうなんだ」


 ライカはナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)の体をじーっと見つめながらグルリと一周した。


「な、なんだ? 俺の体に何か付いてたか?」


「ううん、別に何もないよ。というか、雨止まないねー」


「え? あー、そうだな」


 今はまだ四月だから梅雨ではないよな。

 だとしたら、積乱雲……いや、乱層雲がこの辺りの空を覆ってるのかな?


「ねえ、師匠。私の固有武装で雲吹っ飛ばしてもいい?」


「ダメだ」


「えー、なんでー?」


「自然の摂理にさからうと、ろくなことがないし、雨が降らないと困る存在が少なからずいるからだ」


「まあ、たしかに雨が降らないと植物も育たないし、川の水も少なくなっちゃうけどさー。家の中にずっといたら体がなまっちゃうよー。今すぐ外に出たいよー」


「気持ちは分からなくもないが、こんな日は家にいた方がいいぞ。というか、モンスターチルドレンの中には水が弱点のやつもいるんだろ?」


「弱点……というか、正しくは弱体化する……かな」


「弱体化?」


「うん、そうだよ。モンスターチルドレンは人だった時期が短ければ短いほど、水を体に浴びると弱体化するんだよ」


「そうだったのか。けど、水を飲むことはできるのに浴びると弱体化するなんて、おかしくないか?」


「それはあれだよ。血液に直接注入されると毒が回るけど、飲んだら体にいい毒みたいなものだよ」


「なるほど。つまり、皮膚に接触した時は弱体化するけど、体内に取りこむ時は養分として吸収するんだな」


「まあ、そういうことだね。だから、水をかけられそうになったら、それを全部飲めばいいってことだね」


「それ、人の肺活量じゃ不可能だろ」


「私たちにはできるよ。人じゃないから」


「今はまだそうだが、お前たちはいずれ人間に戻る。だから、それまではあんまり無茶なことはしないでくれよ?」


「そんなこと分かってるよー。心配性だなー、師匠はー」


 雨はまだ止みそうにない。

 というか、少し雲の動きがおかしいような。

 気のせいかな?

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