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〇〇は『赤き雪原』に向かうそうです その66

 四月二十三日……午前六時……。


「おはよう、ナオト」


「う……うーん……あー、ミノリか。おはよう」


「おはよう。ほら、早く起きて。今日は『イビルシープ』と戦える日なんだから」


 ミノリ(吸血鬼)がそう言うと、ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)は頭の中で『イビルシープ』という名前を何度も復唱していた。


「……そうだ……俺は……今日……そいつと戦えるんだ。食べ放題じゃなくて、戦い放題!!」


 彼は布団から出ると、スッと立ち上がった。


「ミノリ! 今日の朝ごはんはなんだ!」


「えっ? あー、えーっと、目玉焼きと焼きベーコンとトマトとキャベツのサラダと食パンと牛乳よ」


「そうか! よし、急いでみんなを起こしてくれ! 今日は忙しくなるぞー!!」


 彼はそう言うと、布団を高速で畳んだ。

 その後、洗面所に向かった。

 朝から元気なのはいいことだが、もう少し落ち着いて行動してほしいものだ。


 *


『いただきます』


「いただきます!」


 彼が朝ごはんを食べる直前、ミノリ(吸血鬼)は彼の頭をしばいた。


「な、何すんだよ!」


「ナオト、少し落ち着いて。『イビルシープ』と戦えるからってかれすぎよ」


「そ、そんなことねえよ」


「あっ、今、あたしから目をらした。あんたって本当にうそをつくのが下手よね」


「そ、それは今、関係ないだろ」


「関係あるわよ。バカナオト」


「バ、バカって……お前な」


 その時、シオリ(白髪ロングの獣人ネコ)が二人の間に割って入った。


「二人とも落ち着いて。朝からケンカしないで」


「シオリ……。け、けどさー」


「ナオ兄」


「な、なんだ?」


「今すぐケンカをやめないと、ナオ兄のこと嫌いになるよ?」


 その言葉を聞いた瞬間、彼は意識を失いかけた。

 しかし、彼はそんなところをみんなに見せるわけにはいかないと思ったため、なんとか踏ん張った。


「ご、ごめんよ。シオリ。もうケンカしないから嫌いにならないでくれ。お願いだから」


「じゃあ、仲直りして。ほら、手を出して」


「あ、ああ」


 彼が右手を出すと、シオリは彼の手をつかんだ。

 シオリはミノリ(吸血鬼)に視線を向けると、何を考えているのか分からないジト目で彼女を凝視した。


「あー、はいはい、やればいいんでしょ? やれば」


 彼女が右手を出すと、シオリは彼女の手をつかんだ。


「はい、それじゃあ、仲直りして」


「え……えーっと、その……朝からかれすぎだったよな。悪かったよ、ごめんな」


「ううん、あたしも少し言い過ぎたわ。ごめんね」


 シオリは二人が握手するように手を移動させた。


「二人とも。仲直りの握手して」


「え? あ、ああ、分かった」


「はいはい、分かったわよ」


 二人はお互いの顔を気まずそうに見ながら、握手をした。

 その様子を目にしたシオリはニッコリ笑った。


「よくできました。これで二人とも仲良しだね」


「な、仲良し?」


「違うの?」


 彼女が小首を傾げると、彼はこう言った。


「いえ、その通りです。俺とミノリは仲良しです」


「仲良しね……」


「違うの?」


 彼女が小首を傾げると、ミノリ(吸血鬼)はこう言った。


「え? あー、その……まあ、仲良しよね。あたしとナオトは」


「そっかー。良かったー」


 シオリはニッコリ笑いながら、二人の頭を撫で始めた。

 その様子を見ていた他のメンバーはニコニコ笑っていた。

 朝からいいものを見せてもらったと言わんばかりに。

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