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〇〇は『赤き雪原』に向かうそうです その65

 晩ごはんを食べ終えるとミノリ(吸血鬼)はどこかに行ってしまった。

 コユリ(本物の天使)にそのことを話すと屋根の上にいることを教えてくれた。

 俺はコユリ(本物の天使)にお礼を言うと、アパートの屋根の上に向かった。


「おーい、ミノリー。いるかー?」


「あら? ナオト。どうしたの?」


 ミノリ(吸血鬼)は予想外の出来事に目をパチクリさせている。


「いや、晩ごはんを食べ終わったら、すぐにいなくなったから少し気になってな」


「そう。けど、別にあんたに心配されるようなことは何もないわよ?」


「そうなのか? けど、俺が三人分の採寸をしてる時、お前は別室でずっと何かをしてただろ?」


「それは……まあ、そうだけど」


 俺はミノリ(吸血鬼)の元に歩み寄ると、彼女のとなりで立ち止まった。


「ミノリ。俺に言いたくないのなら別に言わなくていいけどよ、そうじゃないなら話してくれないか? 俺だけものにされるのはいやだからさ」


 彼女はため息をくと、ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)の正面に移動した。


「あんたはいつも余計なことに首を突っ込みたがるのね」


「仕方ないだろ? 俺は昔からこうなんだから」


「そうね。あんたに隠し事しても、どうせバレるわよね」


「お前は俺を何だと思ってるんだ? 俺はそんなマジシャンっぽいことはできないぞ?」


「マジシャンね……。そんなことがあんたにできるとは思ってないわよ。あたしはただ、あんたの前じゃ隠し事なんてできないって言いたかっただけよ」


「そうか……。それで? お前は俺が三人分の採寸をし終えるまで何をしていたんだ?」


 彼女は一瞬、躊躇ためらったが包み隠さず、彼に話した。それは。


「服の材料になる物を見つけるための計画を立ててた?」


「ええ、そうよ。まあ、あんたにこのことを話したら、絶対『俺もついていくよ』って言いそうだったから話したくなかったんだけどね」


「それは……まあ、そうだけどよ。俺はお前の手助けがないと三人分の服を作ることなんてできないんだからさ、相談くらいはしてくれてもいいんじゃないか?」


「そうね。あたしが間違ってたわ。ごめんね、あんたに何も言わずに勝手に計画を立てたりして」


「別に謝る必要はねえよ。俺だって、何度か採寸し終える前に逃げ出そうとしたんだから」


「あんなのあたしの予想通りよ。というか、あたしじゃなくても、容易に思いつくわよ」


「そうなのか? それは初耳だ」


「まったく、あんたは本当に面白いわね」


「面白い? 俺がか?」


「ええ、そうよ。一緒にいると、悩みなんて吹っ飛んじゃうわよ」


「俺にそんな力はないんだけどな」


「そうね。あんたにそんな力はない。けど、あんたは無意識にそういうことができる」


「無意識ね……。まあ、そういうことにしておこう。それで? 服の材料になる物はいったいどこにあるんだ?」


「それは……その……なんというか」


「どうしたんだ? もしかして俺の髪の毛とかが必要なのか?」


「ううん、違うわ。けど、まあ、それに近いわね」


「それに近い? あっ、分かった。三人の髪の毛を服の素材の一部にするんだろ?」


「えっ? あー、まあ、そうね。その通りよ」


「なるほどな。たしかにそうすれば、いい物が作れそうだな」


「え、ええ、そうね……」


「よし、そうと分かれば、明日から早速始めよう。でも髪の毛だけじゃ、さすがに服は作れないよな。他に素材になりそうな物はないのか?」


「そうね……。一番いいのは『イビルシープ』の体毛だけど、時間が経てば経つほど強くなるから、あまりオススメはできないわよ?」


 それを聞いたナオトは目をキラキラと輝かせた。


「いいねー、そういうのきらいじゃないぞ」


「えっ? ちょ、あんたまさか『イビルシープ』と戦おうだなんて考えてないわよね?」


 彼はニッコリ笑って、自分の考えを表明した。


「はぁ……分かったわ。明日からは『イビルシープ』と戦いましょう」


「やったー! 久しぶりに野生のモンスターと戦えるぞー! よし、今日は早めに寝よう!」


「そうね。今日は早めに寝ましょう」


 その後、二人は部屋に戻ると、少し早めに眠りについたそうだ。

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