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〇〇は『赤き雪原』に向かうそうです その62

 服を作る上で大切なことは着る人のことを考えながら作ることと着る人のことをよく知ることだとミノリ(吸血鬼)は言った。

 それは別に否定はしない。

 しかし、俺がその着る人たちの採寸をする必要はないと思う。

 まあ、ルル(白魔女)の分は終わったから、あとはメルク(ハーフエルフ)とニイナ(殺し屋の中の殺し屋)の分だけなのだが。

 さてと、それじゃあ、やるとしますか。


「ナオトさん、早くしてください。日が暮れてしまいます」


「あー、うん、そうだな。そうだよな。早くしないといけないよな。分かってるよ、うん。けど」


「けど?」


「お、お前の体ってさ、大人びてるだろ?」


「まあ、そうですね」


「だから、その……やりづらいんだよ。出るとこ出てるから」


 メルク(ハーフエルフ)の見た目は成人女性に近い。しかし、ハーフエルフの見た目と年齢は一致しない場合が多いため、大人なのか子どもなのかよく分からない。


「ナオトさん、そういうことを気にしていたら、いつまでっても童貞のままですよ?」


 ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)は童貞という言葉を耳にすると、声を張り上げた。


「そ、それは今、関係ないだろ!!」


「関係ありますよ。ナオトさんはお人好しで他人思いのいい人ですけど、女性に言い寄られたら結局言いなりになるか、いいようにされています。そんな人はいくら内面が良くても一生童貞のままです」


「ぐ……ぐうのも出ない」


「ほら! すぐ弱気になる! そんなんじゃダメです! もっと強気で男らしく堂々と胸を張ってください!」


 そんなこと言われても、急に強気になんかなれないよ。


「ナオトさん」


 本当はガラスメンタルなのに、強いフリをしてるだけなんだから。


「ナオトさん」


 だから、俺は一生このままなんだよ。


「ナオトさん!!」


「は、はい! 何でしょうか!」


 メルク(ハーフエルフ)は俺を抱き上げると、凝視し始めた。


「な、なんだよ。というか、どうして俺を抱き上げたんだ?」


「特に理由はありません。しかし、私は今、ナオトさんを抱き上げてから抱きしめたいと思っています」


「お、おう」


「そして、そのあと、〇〇や〇〇をしたいとも思っています」


「はい?」


「さらに、ここを抜け出して幸せな家庭を築きたいとも思っています」


「ちょ、ちょっと待て。それはお前の本心なのか?」


「はい、そうですよ。ナオトさんが拒まないのなら、今すぐにでも、それらを実行したいと思っています」


 人生設計はもうできてますって顔するなよ。

 というか、俺が拒まなかったら今すぐにでも実行するのか。

 割と本気なんだな、メルクは。


「しかし、未来の妻になる予定の私の体を採寸できない人を夫にしたくありません」


「え? そうなのか? 体の隅々まで相手に知られることになるんだから、普通拒むだろ?」


「好きな人に自分のことを知ってほしいと思うのはいけないことですか?」


「いや、それは別に悪いとは思わないけど」


「ですよね。なら、どうしてナオトさんは私の体を採寸するという服作りに必要な手順の一つを拒むんですか?」


「それは……ほら、あれだよ。俺だって男だからさ、お前のことを襲おうとする可能性は少なからずあるわけで」


「あー! もうー! 言い訳なんて聞きたくないです! やるんですか! それともやらないんですか!」


「そ、それはもちろんやりたいけどさ、なんというか心の準備が」


「心の準備? ということは、体の準備はもうできているということですね?」


「えっ? あー、まあ、そうなるのかな」


「分かりました。では、私が今からナオトさんをその気にさせてあげます」


「え? ちょ、それはいったいどういう……」


 彼が最後まで言い終わる前に彼女は彼を押し倒した。

 彼女は彼の四肢ししを封じた後、目を閉じながら彼の弱点である左耳を甘噛みした。


「ひゃん!? ちょ、そこはマジでダメなんだよ! おい、やめろ! やめてくれ!」


「……ナオトさん、可愛いですよー。もっと可愛い声出してください」


 彼女は彼の左耳を執拗しつようもてあそぶ。

 彼が拒んでも、暴れても、決してやめようとしない。


「わ、分かったよ! 採寸する! 採寸するから! だから、もうやめてくれ!」


「はい、よくできました。えらい、えらい」


 彼女はニッコリ笑いながら、彼の頭を優しく撫でた。

 彼は何が起こったのか理解していなかった。

 彼女はクスクスと笑いながら、彼に手を差し伸べた。


「すみません、ルルさんがナオトさんにいたずらしてるところを見ていたら、私もやりたくなってしまいまして」


「な、なあんだ、そういうことか。まったく、お前ってやつは」


 彼は彼女の手をつかむと、スッと立ち上がった。


「ナオトさん」


「ん? なんだ?」


「大好きです」


 彼女はそう言うと、彼の額に優しくキスをした。


「な、ななな、何なんだよ! いきなり!!」


「あはははは、照れてるナオトさんも可愛いですねー。よしよし」


「頭を撫でるな! というか、採寸するから早く服を脱げ!」


「服を脱ぐだけでいいんですかー? 他にしてほしいことはないんですかー?」


「そ、そんなもんねえよ! とにかく早く採寸させろー!」


 彼は彼女にからかわれながらも、無事に彼女の体を採寸したのであった。

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