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〇〇は『赤き雪原』に向かうそうです その49

「……ナオト、ちょっといい?」


 ユヅキとヒサメがお茶の間に行った後、寝室にやってきたのは『ニイナ』だった。


「ん? なんだ?」


 彼女は黒いローブに付いている黒いフードを手でつかんで背中に回すと……彼に顔を見せた。


「どうしたんだ? ニイナ。なんか顔赤いぞ?」


「……欲しい」


「……え?」


「ナオトの血が欲しくて、体がうずくの……。だから、なんとかして……」


 少しあらい息をきながら、彼に近づくニイナ……。

 彼は彼女を抱き寄せると、ポンポンと背中を軽く叩いた。


「大丈夫、それは生理現象の一種だ。だから、お前は思う存分、俺の血を吸えばいい……」


「でも……ナオトのことを考えるだけで体がムズムズするの。私、何かの病気なのかな?」


「それはいつからだ?」


「さっき、ここでナオトと話した後、向こうの部屋に行ったら、いつのまにかそうなってた……」


「……そうか……。なあ、ニイナ。他におかしいところはないか?」


「うーんと……ごめん……よく分からない……。けど、気づいたら、ナオトのことを考えてるの。ナイフをにぎっても指をんでもなおらないの。どうしてかな?」


「……それは……『こい』かもしれないな」


「それって、魚の方?」


「いや、違う。今、お前を苦しめているやまいの名前だ」


「それって……なおるの?」


「治る……けど、こじらせると、人の心をゆがませることもあるから、早めになおした方がいいな」


「そうなんだ……。じゃあ、早くなおして。あっ、けど、その前に」


「俺の血を吸いたいんだろ? ほら、遠慮するな」


「……うん。じゃあ、いただきます……」


 ニイナは彼の首筋を甘噛みすると、舌で数回()めた。

 その後、人より少し長い犬歯けんしを彼の首筋に突き刺した。

 彼女は数秒間、彼の血を吸うと……一度、中断した。


「……ナオトの血……おいしい……。いろんな味がする。ずっと飲んでいたい」


「ずっとは無理だけど……定期的になら、飲んでもいいぞ」


「本当?」


「ああ、本当だ」


「ありがとう、ナオト……。じゃあ、もう少しもらうね」


「ああ、いいぞ。けど、むせるなよ?」


「うん、分かった。気をつける……」


 彼女はそう言うと、再び彼の首筋に噛み付いた。

 チュー、チューと彼の血をおいしそうに飲む彼女の姿を見ていた彼は少しだけ目眩めまいがしたが、彼女の気が済むまで、ギュッと彼女を抱きしめていた。


「……ありがとう、ナオト……。おかげで暴走せずに済んだよ」


「そ、そうか。それは……良かっ……た」


 彼は自分の顔が真っ青になっていることに気づく前に意識を失ってしまった。

 彼は意識を失う前に、心配そうにこちらを見つめるニイナの姿を目にした。

 それと同時に、何度も自分の名前を呼ぶニイナの声を耳にした。

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