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〇〇は『赤き雪原』に向かうそうです その39

「……さてと……それじゃあ……」


「師匠ー!」


 彼が最後まで言い終わる前にライカ(紫髪短めツインテール)は彼に抱きついた。


「おいおい、どうしたんだ? ライカ。今日はやけに機嫌がいいじゃないか」


 彼がそう言うと、彼女はニコニコ笑いながら、こう言った。


「だってー、師匠とお話しするの久しぶりなんだもん。嬉しくもなるよー」


「なるほど、そういうことか。けど、少し離れてくれないか? あんまり近いと話しづらいから」


「えー、そんなー。このままでいいじゃん」


「いや、そんなことしたら、となりの部屋にいるやつらに殺されるかもしれないから勘弁してくれ」


「うーん、それもそうだね。じゃあ、しばらく離れることにするよ」


「ありがとう、恩に着る」


 彼がそう言うと、彼女は彼から離れた。

 その後、畳の上にチョコンと正座をした。

 彼はそれを見届けると、畳の上に座った。

 今日のライカは一段と嬉しそうだ。ずっとニコニコ笑っている。


「コホン……。えーっと、それじゃあ、自己紹介してくれ」


「はーい!!」


 ライカは元気よく返事をすると、スッと立ち上がった。その後、自己紹介をした。


「私は悪魔型モンスターチルドレン製造番号(ナンバー) 一の『ライカ』だよー。少し前までは『怠惰たいだの姫君』の力をこの身に宿していたけど、今は師匠の鎖に封印されてるから使えないよー。チャームポイントはいつもキラキラしている金色の瞳とちょっとエッチな黒い服だよー。よろしくねー」


 彼女の自己紹介が終わると、彼はパチパチと拍手をした。


「いやあ、良かったよー。特に最後のちょっとエッチな黒い服ってところが良かったよー」


「えー、そうかなー? でもちょっとエッチなのは本当だから、つい言っちゃったよー」


「あははははは、ライカは面白いなー」


「えー、そんなことないよー」


 二人は少しの間、笑い合った。

 二人はとなりの部屋にいる人たちがふすまをこじ開けてくる前に、ピタッと笑うのをやめた。


「さて……それじゃあ、本題に入ろうか」


「そうだね」


「……コホン。なあ、ライカ」


「なあに? 師匠ししょう


「最近、困ってることとかないか?」


「困ってること? うーん、今のところは全然ないよー」


「そうか……。じゃあ、俺に何かしてほしいことは」


 彼が最後まで言い終わる前に、彼女は彼に抱きついた。


「それは師匠に褒めてもらうことだよー!」


「そうか、そうか。ライカは素直だな」


「えへへ、さっそく褒められちゃった」


「よしよし、ライカはいい子だなー」


 彼が彼女の頭を撫でると、ふすまの向こう側から、殺意と嫉妬と憎悪がごちゃ混ぜになった何かが伝わってきた。


「な、なあ、ライカ。少し離れてくれないか?」


「えー、どうしてー? 今日の師匠は私のお願い何でも聞いてくれるんでしょー?」


「そ、それはそうだが……。そ、その……限度というものがあってだな……」


「え? 何? ギャランドゥー?」


「いや、限度だ」


「言動?」


「違う、限度だ」


「ゲンドウ?」


「それは人の名前だ」


「じゃあ、剣道?」


「いい加減にしないと、竹刀しないで叩くぞ?」


「あははははは! な、何それー! おもしろーい!」


「え? あー、しないと竹刀しないか。今のは完全に意識してなかったのだが……。まあ、笑ってくれたから良しとしよう」


 ライカは彼の目の前でゲラゲラ笑っている。

 どうやら、ツボにハマったらしい。


「おーい、ライカー。大丈夫かー? 笑いすぎると死ぬぞー」


 彼がそう言うと、彼女はお腹を抱えながら息を整えた。


「あ……あははははは……はぁ……はぁ……はぁ……はぁー、苦しかった。でも、今ので分かったよ。師匠には笑いの才能があるかもしれないってことが」


「笑いの才能ね……。いつかコンビでも組んでみようかな」


「その時は私を呼んでね?」


「うーん、まあ、考えておくよ」


「分かった……。それじゃあ、師匠。さっきの続きやろう!」


「ん? ああ、そうだな。よーし、ライカを褒め倒すぞー!」


 二人はしばらくの間、褒める&褒められるという行為をひたすら繰り返した。

 しかし、楽しい時間はすぐに終わってしまう……。


「……さてと……それじゃあ、ライカ。そろそろメルクを呼んできてくれないか?」


「うん、いいよー。任せといてー」


 彼女はそう言うと、となりの部屋に移動して、メルクにそのことを伝えた。

 メルクはスッと立ち上がると、ライカの頭を撫でてお礼を言った。

 その時のライカは、とても機嫌が良かったため、しばらくニコニコ笑っていたという。

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