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〇〇は『赤き雪原』に向かうそうです その30

 次はコユリ(銀髪ロングと金色の瞳が特徴的な天使)なのだが……。


「それじゃあ、まずは自己紹介を……」


「私は天使型モンスターチルドレン製造番号(ナンバー) 一の『コユリ』です。『傲慢ごうまんの姫君』の力を宿していましたが、マスターの鎖によって封印されました。ちなみに、好きな人はマスターです。恋人にしたい人もマスターです。生涯のパートナーにしたい人もマスターです。とにかくマスターのことが好きすぎて、今にも襲ってしまいそうです」


「あ……あははははは……。なかなか個性的な自己紹介だったな」


「ありがとうございます。ではマスター。とりあえず服を……」


「断る」


「まだ何も言っていませんよ?」


「いや、最後まで言われなくても分かる内容だったから、つい……」


「そうですか。では、さっさと本題に入りましょう」


「そ、そうだな……」


 コユリはおそらく……いや間違いなく俺よりかしこい。

 だから、一瞬でも油断すれば、俺はコユリのとりこになってしまうだろう……。

 いや、今のは流石さすがにないな。

 いくらコユリでもこういう時はちゃんと……。


「マスター、私には悩みがあります。それは……マスターが私と物理的に合体してくれないことです」


 前言撤回ぜんげんてっかい

 今のコユリは天使じゃない。色欲にえたけものだ。


「えーっと、それはつまり……そういうこと……なのか?」


「はい、そういうことです。というか、今すぐ連呼したいです」


「連呼したいって、お前な……」


「私は本気です。できれば、マスターの初めてを奪いたいです」


「えっと、その場合、コユリは俺に処女しょじょささげることにな……」


「モンスターチルドレンにとって、パートナーを見つけて子どもを産むのは生物が呼吸をするのと同じくらい自然なことです。なので、私は今すぐにでもマスターを自分色に染めたいです」


「途中までは納得できるけど、後半はお前の本心だろ?」


「はい、その通りです。何か問題でも?」


 彼女が小首を傾げると、彼はため息をいた。


「はぁ……どうしてお前は俺にそこまで固執こしつするんだ?」


「固執しているわけではありません。これは運命なのです」


「は?」


「私はマスターと結ばれるために生まれてきました。なので、マスターが私と合体するのはもう時間の問題です」


 今日のコユリ……なんか変だな……。

 いつもより早口だし……。


「……なあ、コユリ」


「はい、何ですか?」


「……これは俺の予想だから、確定はできないんだけどよ……。お前、今ものすごく緊張してないか?」


 その時、彼女の顔が真っ赤になった。


「そ、そそそ、そんなことはありません。わ、わわわわ、私は緊張なんて、ししし、してません!!」


 今日のコユリは……面白いな……。表情がコロコロ変わる。


「ほう、そうなのか……。じゃあ、俺が何をしてもどうじないのかなー」


「も、ももも、もちろんです! さぁ、いつでもどうぞ」


 彼女がそう言うと、彼は彼女を押し倒した。


「ひゃあ!?」


「んー? どうしたんだ? そんなにおびえて」


「お、おおお、おびえてなんかいません! ちょっとびっくりしただけです!」


「そうか、そうか。それじゃあ、今からお前をめちゃくちゃにしてもいいんだな?」


「え? それってどういう……」


 コユリ(本物の天使)が最後まで言い終わる前に彼は彼女の白いワンピースを破こうとした。


「や、やめてください! これはとても大切なものなんです!」


「ほう、そうなのか……。けど、服を着てたらできないぞ?」


「できないって何がですか?」


「え? そんなの決まってるじゃないか。お前がしたがってた物理的な合体ってやつだよ」


「そ、そんな……。じょ、冗談ですよね? いくらなんでも、こんな無理やり……」


「無理やりだと? 俺はお前の望みをかなえてあげたいだけだぞ?」


「りょ……両者の合意がなければ、マスターは犯罪者になりますよ!」


「この世界の法律で俺をさばけるなら、ぜひやってもらいたいなー」


 ど、どどど、どうしよう……。その気にさせるつもりなんてなかったのに……。

 困ってる、困ってる。さあてと、それじゃあ、そろそろ終わらせますか。


「おい、抵抗しないのなら始めちゃうぞ? いいのか?」


「……や……優しくしてくれるのなら……別に構いません」


 彼女は涙目になりながらも、そんなことを言った。

 彼は彼女のその顔を見た瞬間、いたずら心に火がついた。


「そっか。じゃあ、遠慮なく……」


 彼女が目を閉じたのを肉眼で確認すると、彼は彼女の首筋に顔を近づけた。


「……はむっ……」


「ひゃん!?」


 彼が彼女の鎖骨さこつを甘噛みすると、彼女は可愛らしいあえぎ声をあげた。


「マ……マスター……そこは……やめてください」


「んー? そこってどこだー? 言ってくれないと分からないぞー?」


 彼がそう言うと、彼女は両手で顔をおおい隠した。


「……もう……やめてください……。私はただ……マスターに構ってほしかっただけなんです……」


 彼は「……ふっ」と笑うと、彼女の頭を撫でた。


「……バーカ。そんなの最初から分かってるよ」


「え?」


 彼女は指の隙間すきまから彼を見ながら、そう言った。


「お前が俺のことをよーく知っているように、俺もお前のことをよーく知っている。だから、お前が俺に構ってほしくて、あんなことをやったのは最初からお見通しなんだよ」


「……そ、それじゃあ、私を襲う気はないんですね?」


「ああ、ないぞ。今のところは……だけどな」


「……マスター」


「……さてと、そろそろ終わりにしよ……」


 その時、彼女は彼を抱き寄せた。


「お、おい、コユリ。これはいったいどういう……」


「……大好きです」


「え?」


「私は……マスターのことが大好きです」


「お、おう……」


「マスターは私のこと、好きですか?」


「そ、それはまあ……きらいではないよ」


「……ずいぶん遠回しな言い方ですね」


「……す、すまない。今はちょっと……」


「ちょっと……何ですか?」


「その……あれだ。心拍数が上がってるから、それを言ったら恥ずか死ぬ」


「つまり、私のような美幼女に抱きしめられて興奮しているのですね?」


「ち、違う! 断じて違う! これはその……き、緊張しているだけだ」


「そうですか。なら、私がマスターの緊張をほぐして差し上げましょう」


「え? いや、いいよ。少し休めば落ち着くから」


 その時、彼女は彼の弱点である左耳を甘噛みした。


「……はうっ!?」


「……マスターは相変わらず、耳が弱いんですね」


 彼女が彼の耳元でそうささやくと、彼の顔は真っ赤になった。


「……や、やめろ……やめてくれ……。それ以上されたら、俺は……」


「私がこのタイミングでやめると思いますか? はむっ」


「……あうっ!?」


 コユリ(本物の天使)は彼の左耳を甘噛みするのもやめない。

 どうやら彼女は彼の性感帯をひたすらめ続けるらしい。

 舌で耳全体をめたり、吐息といきで耳の奥を刺激したり、耳たぶを執拗しつように甘噛みしたり……。

 彼女は彼が自分では起き上がれなくなるくらい、彼の左耳をめ続けた……。


「……はぁ……はぁ……はぁ……も、もう……やめて……ください……。お願い……します……」


 彼女は彼を押し倒すと、彼の左耳をれながら、ふうーっと息を吹きかけた。


「……うぐっ!? どうして……どうしてやめてくれないの……? これ以上されたら……壊れちゃうよー」


 彼の荒い息(づか)いと火照ほてりきった体はコユリの支配欲に火をつけた。


「残念ですが、マスターの願いはかなえられません。なぜならば、私はまだ満足していないからです。なので、なんとかえてください」


「そ……そんなー……。それはあんまりだよー」


「今のマスターにそんなことを言える権利があると思いますか?」


「え、えーっと……それは……」


「……はい、時間切れです。では、罰としてマスターにはもう少し私の遊び相手になってもらいます」


「そ、そんなー……」


「それでは行きますよー。はーむっ!」


「だ……だから……左耳は……もうやめてよー!」


 その、彼はコユリにめちゃくちゃ左耳をめられた。

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