表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

246/420

〇〇は『赤き雪原』に向かうそうです その15

 四月二十日……巨大な亀型モンスターと合体しているアパートの二階にあるナオトの部屋(お茶の間)では……。


「……う、うーん……あれ? ここはいったい……」


 彼女が目を覚ますと、知らない天井が目に入った。

 水色のショートヘアとテニスウェアのような服と水色の瞳が特徴的な『トワイライト・アクセル』さん(『ケンカ戦国チャンピオンシップ』の実況をしていた人)はゆっくり上体を起こすと、あたりを見渡した。

 こじんまりとした部屋の中には、布団と壁にかかっている時計以外、何もなかった。


「えっと、たしか『ラブプリンセス国』で暴れているモンスターたちを倒していたはず……だよね? それなのに、どうして私はこんなところに……」


 その時、ふすまがスーッと開かれた。

 その直後、身長百三十センチほどの少年が姿を現した。

 彼はこちらの顔を見ると、いきなり涙を流し始めた。

 その後、彼は彼女の胸へと飛び込んだ。


「……え? ちょ、ちょっと、いきなり何なの? それにどうして泣いてるの?」


「…………な、泣いてなんかねえよ。玉ねぎが目にみただけだ」


 その直後、彼女は彼の服装や声、体格などの情報から彼が何者なのかを思い出すことに成功した。


「……私の記憶が正しければ、あなたは『ケンカ戦国チャンピオンシップ』で伝説を作った『本田ほんだ 直人なおと』さんではありませんか?」


 彼は指で涙をぬぐうと、彼女の顔を見ながら、ニシッと笑った。


「ああ、そうだよ。よく分かったな」


「……やはりそうでしたか。ということは、ここはあなたの家ですか?」


「うーんと、ここは『俺の無敵要塞(マイホーム)』じゃなくて『家賃が安い建物(アパート)』だから、俺の家であって、俺の家ではないかな」


「アパート? それはつまり、宿屋のようなものですか?」


「うーん、まあ、それに近いかな」


「なるほど。そうですか。では私はこれから用があるので、失礼します」


 彼女が布団から出ようとすると、彼はそれを阻止そしした。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! あんたはもう戦う必要なんてないんだから、しばらくここにいてくれよ! お願いだから!!」


「え、えっと、それはいったいどういう……」


 彼女が最後まで言い終わる前に、ピシャリとこう言ったものがいた。


「まあ、分かりやすく言うとナオトとこの家に住んでいるメンバーであんたが倒そうとしていたモンスターたちを一掃いっそうしたから、あんたがあの国に戻る理由は無くなったってことよ」


 黒髪ツインテールと黒い瞳とメイド服(?)っぽい服が特徴的な美少女……いや美幼女『ミノリ』(吸血鬼)は両手を腰に当てた状態でそう言った。


「な、なるほど、そうでしたか……。しかし、モンスターたちを一網打尽いちもうだじんにできるほどの戦力がこの家にあるのですか?」


「本当にそう思っているのなら、あんたの目は節穴ふしあなね」


「そう……なんですか?」


「ええ、そうよ。このアパートと合体している亀型モンスターの魔力ははかり知れないものだから、目を閉じるだけで感じられるようになるわ」


「そうですか。分かりました、やってみます」


 トワイライトさんが目を閉じると、アパートと合体している巨大な亀型モンスターの外装からとんでもない量の魔力があふれ出ているのを察知した。

 その後、彼女は驚きをあらわにした。


「ね? すごいでしょう。あたしたちがその気になれば、この世界を余裕で支配できるし、この世界を跡形あとかたもなく破壊できる……。だから、ここではあたしたちを怒らせないようにしなさいよ?」


 彼女の笑顔には、どこか威圧いあつ感があったため、トワイライトさんは仕方なく彼女の言う通りにすることにした。


「分かりました。ですが、ナオトさんが退いてくれないので私はここから動くことができません。どうにかしてください」


 ミノリ(吸血鬼)は少し考えたのち……。


「まあ、今のナオトはテコでも動かないと思うから、あんたはしばらくそのままよ。じゃあ、あたしはもう行くから何かあったら呼んでちょうだい」


「え? ちょ、っ……」


 スー、トン……。

 彼女が最後まで言い終わる前にふすまが静かに閉まった。

 そのため、トワイライトさんとナオトは寝室に取り残されてしまった。


「……はぁ……まあ、助けてもらった分のお礼はしないとですよね……」


 彼女がポツリとそうつぶやくと、ナオトが彼女の顔を見た。


「なあ、あんた、体の方は大丈夫なのか? ツキネの固有魔法のおかげで切りきずとかり傷は綺麗きれいさっぱり無くなったが……」


 彼が不安げな表情を浮かべていると、彼女は微笑ほほえみを浮かべながら、こう言った。


「まったく、あなたという人は……。相変わらず、他人の心配ばかりしているようですね」


「し、しょうがないだろ! 俺は昔からこうなんだから」


 彼が少しだけ大きな声を出すと、彼女はニコニコ笑いながら、彼の頭をでた。


「なっ……! い、いきなり何すんだよ! というか、子ども扱いするな!」


 彼が彼女から離れようとすると、彼女はそれを阻止そしするかのように彼をギュッと抱きしめた。


「や、やめてくれよ! 恥ずかしいから!」


 彼が手足をジタバタさせるが、彼女は彼を離そうとしない。


「ナオトさん……少しだけでいいですから、このままでいさせてください」


「な、なんで俺があんたの要求にこたえなきゃいけないんだよ! それに……」


 彼が最後まで言い終わる前に、彼女は彼のひたいにキスをした。


「え? ちょ、あんた今、俺に何かしなかったか?」


 彼は自分が今、何をされたのかまったく理解できていなかった。

 彼は何度も何度も、彼女に同じ質問をしていたが、彼女はしばらく何も言わなかった……。


 *


「……可愛い」


「……え?」


「可愛いすぎるよおおおおおおおおおおおおお!!」


「うわああああああああああああああああああ!!」


 ナオトは急に言葉をはっしたトワイライトさんに抱きしめられたまま、押し倒された。


「ああ、もうたまんない! ねえ、ナオトさん。ナオトさんの体、めてもいいですか? いいですよね?」


「は、はぁ!? そ、そんなのダメに決まってるだろ! というか、あんた、もしかしてショタコンなのか?」


 彼がそうたずねると、彼女は彼の頭を執拗しつように撫でながら、嬉しそうにこう答えた。


「はい! そうです! 私はショタコンです! 『例の大会』で出会った時から、あなたのことをずっと考えていました! 今日はどんなところに行ってるのかなーとか、体はどこから洗ってるのかなーとか、まだチェリーくんなのかなーとか……。とにかくあの日から、あなたのことを考えなかった日はありません! だ・か・ら……私といいことしましょう♡」


「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺には心に決めた人がいるから、あんたとそういうことは……」


「そんなの既成事実を作ってしまえば万事解決です! だから、私といいことしましょうよー。ねえ、ねえ」


 彼女がしつこく彼にそう言うので、彼は必死に抵抗ていこうした。


「ダメなものはダメだ! あんたも大人なら、それくらい分かるだろう?」


 彼がそう言うと、彼女はニコニコ笑い始めた。


「……分かってますよ、そんなことはー。でも私だって、一人の女の子なんですよー? たまには甘えてもいいじゃないですかー。ナオトさんにだって、誰かに甘えたくなる時くらいありますよねー?」


「うっ……! そ、それはまあ……そうだが……」


「だーかーら……。おとなしく私に、もふもふされなさーい!」


「うわああああああああああああああああああ!!」


 彼は彼女に抱きしめられたまま、その場から動けなくなってしまった。

 彼女が彼の弱点を見つけるまでは……。


「ああ、ナオトさんの体……とってもいい感じですー。おっ、可愛いお耳発見。いっただきまーす♡」


「ちょ、そこはやめ……ひゃん!?」


 彼はその直後、エビのように飛び跳ねた。

 彼の小さな体のどこにそんな力があるのかと思うくらい、彼は高く飛び跳ねた。

 そのため、天井に激突してしまった。


「ぐえっ!?」


 まあ、トワイライトさんがクッションになってくれたおかげでナオトは怪我けがをしなかったのだが……。

 布団に向かって落下する時、彼は空中で彼女をお姫様抱っこしたため、うまく着地できた。

 ちなみに、トワイライトさんは気を失っていた。

 その後、彼は彼女を布団に寝かせた。

 え? それからどうなったのかって?

 言うまでもないと思うが、彼は彼女が目を覚ますまで、ずっと彼女の手を握っていたそうだよ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ