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○○は不思議なアパートにやってきたようです その1

 おかしい。ここはいったいどこなんだ? 俺は長いような短いようなゲートをくぐって異世界に来たはずだ。

 それなのに、どうしてこんなところにいるんだ? 今、俺の頭の中は、そのことでいっぱいだった。

 そんな中、先ほどまで泣いていたはずのミノリ(吸血鬼)がみんなを集めていた。

 なにやら相談しているようだが……時折、こちらをちらちら見るのはやめてほしいな……。

 さて、そろそろ俺が気になっていることを教えるとしよう。それは……ここが【俺の部屋】だということだ。


「……いったいこれは、どういう……ことなんだ?」


 俺は不思議に思い、ついそんなことを言ってしまった。

 すると、ミノリがこちらにやって来た。その後、俺の手を引き「こっちに来て」と言いながら、俺を外に連れ出した。

 俺はミノリに引っ張られながら、久しぶりに外に出た。(みんなも俺の後に続いた)

 扉を開けると太陽の光に包まれた。

 俺はその光があまりにもまぶしかったので、片方の腕で日光をさえぎりながら外の景色を肉眼で見た。すると、そこには……。


「ここは……いったい……どこ……なんだ?」


 俺たちの目の前には、どこまでも続いているように見える『理想草原ドリームグラスランド』が広がっていたのである。


「ここが、あたしたちの生まれ故郷にして、これから旅をする場所……『神獣世界モンスターワールド』よ!」


 ミノリは、あるのかないのか分からない胸を張ると得意げに、そう言った。

 えっと、ここがミノリたちの故郷で……これから俺たちが旅をする場所で……。俺はそこで疑問に思ったため、ミノリにいてみた。


「おい、ミノリ」


「んー? なあに?」


「ここがこれから俺たちが旅をする場所……なんだよな?」


 ミノリは、キョトンとした顔で俺を見た。まるで……ええ、そうよ。あんた、何言ってるの? と言わんばかりに……。

 ミノリはとっくに気づいていると思ったが、こいつにとっては些細ささいなことなのかもしれないな……。

 しかし、俺にとってはすごく気になることだし、重要なことでもある。そのため俺は、あえてそれを言うことにした。


「ミノリ、俺は一つお前に言いたいことがある」


「なあに? 改まって。も、もしかしてここで告白する気! も、もう! ナオトってば、見かけによらず大胆なのね。でも、あたしはいつでもオーケーよ! さあドンと来なさい!」


「何でそうなるんだ……。いいか、よく聞け。俺が言いたいのはな……」


 俺がそう言いかけた時、コユリ(本物の天使)がこう言った。


「どうしてここにマスターが住んでいるアパートがあるのか……ですよね?」


 コユリがいきなり会話に入ってきたため、少し驚いたが慌てずに返事をした。


「あ、ああ、その通りだ。よく分かったな」


「いえ、これくらいは当然です。どこかのアホ吸血鬼と違って、私はかしこいですから」


 コユリがまるで特定の人物を指しているかのような発言をしたため、ミノリがこう言った。


「どこかの未熟な天使と違ってあたしは一人前の吸血鬼よ。自分の力をろくに制御できないような役立たずに、ナオトを守れるの?」


 その瞬間、二人の目つきが一変した。これは、とてもまずい状況になったな……。

 俺が二人から距離を取ると背後に気配を感じたため、とっさに振り返った。


「な、なんだシオリか、おどかすなよ。それで、どうしたんだ? もしかして、喧嘩けんかを止めに来てくれたのか?」


 俺はシオリ(白髪ロングの獣人ネコ)にそう言ったが、返事はなかった。


「おーい、シオリー。生きてるかー?」


 俺がシオリの目線にまでかがみながら、そう言うと、ものすごい力で右手首をつかまれ、部屋に引きずり込まれそうになった。

 その時、マナミ(茶髪ショートの獣人ネコ)とツキネ(変身型スライム)がシオリを止めようとしたが、シオリが目にもまらぬ速さでけ抜けた勢いで二人とも吹き飛ばされてしまった。

 俺はシオリに引きずられながら部屋に入った。それと同時にシオリは玄関のかぎを閉めた。

 その後、なぜか敷かれている布団まで運ばれた。

 俺はつかまれた部分を撫でながら、シオリを見た。

 ____あー、痛かった。まったく、一体なんだってんだ。急に俺を部屋に引きずりこむなんて……。

 まあ、あの二人の仲が悪いのを見て、なんとも思わないやつはいないからな。きっと気を使ってくれたのだろう。

 俺はそう思い、シオリがいる方に目をやった。だが、そこには、ついさっきまで俺に膝枕をしてくれていたシオリではない、シオリがいた。


「お前……誰だ。シオリをどこにやった!!」


 俺が怒鳴ると、そいつは口を開いた。


「やれやれ、もうバレちゃったのかー」


「ふざけてるのか! シオリに何をした!」


「何言ってるの? その子なら、ここにいるじゃない」


「なんだと? 冗談はよせ」


「本当のことよ。私はシオリ。あなたがこの子に付けた名前……。そうよね? ナオト」


「いったいこれは、どういうことなんだ……? 説明しろ!」


「……二重人格」


 そいつはそう言うと、俺を押し倒した。

 その直後、俺の体は動かなくなった。

 ミノリと同じ魔法か? いや、この感じはサナエのところに初めて行った時とほぼ同じ感覚だ。ということは……今、シオリが俺に使っている魔法は……。

 シオリ(?)の目はミノリが魔法を使う時と同じくあかくなっていた。

 そして、こちらを見るなり、不気味な笑みを浮かべた。


「お、お前は本当に……シオリ……なのか?」


 こういう場合、体は動かなくても会話はできることは知っていたため、その笑みにひるまずに問いかけた。


「ええ、そうよ。私はシオリ。でも、いつもあなたと話している子の中にいる『もう一人のシオリ』……だけどね」


 そいつはそう言うと、俺のひたいに右手を置いた。


「いつものシオリを……どこにやったんだ?」


 俺は質問を続けた。

 そうしないと目の前にいる『シオリであってシオリではない人物』に何をされるか分からないからだ。

 それに、俺にかけられている魔法は恐らく……。


「その前に、この子の魔法を教えるわね。この子の魔法は『重力制御グラビティコントロール』。半径十キロ圏内の物質の重さを自由に操ることができる、とっても便利な魔法よ」


 俺が次にこうとしていたことを先に言われてしまったが、それも経験済みだったため、焦らず慎重に会話を続けた。


「そうか、それは便利だな。でも、その魔法は俺の知っているシオリは決して使わないだろうな」


 そいつは再び不気味な笑みを浮かべながら。


「さて、それはどうかしらね……」


 まるで今のシオリは、そうしないと言っているかのようにシオリの中のもう一つの人格は答えた。


「なら、シオリはその魔法で何をしたいと思っているんだ?」


「あなたの知っているシオリは『あなたを独り占めしたい』と思っているわよ?」


「そ、そんなのうそに決まってる! そうだろ! シオリ!!」


 そ、そんな……まさか、シオリがそんなことを考えていたなんて……。

 その時、俺はミノリとサナエ以外の子と長時間、会話をした記憶がないことに気づいた。

 シオリはもう一つの人格と交代しまうほど、苦しみ……傷つき……嫉妬しっとしていたのだろうか……。

 あー、くそ。今回は全て自分の責任だ。

 だとしたら、俺が今すべきことはなんだ? こんなおさない女の子の心を理解できないやつに何ができるというんだ!

 ____だとしても、俺は今ここにいる俺にしかできないことをするだけだ!

 俺の中の迷いは数秒足らずで消え失せた。

 こうして、シオリを元に戻すための作戦が始まった。作戦名コードネームは『奪還スティール』。

 さあ、ここからは俺の順番ターンだ! 

 待ってろよシオリ! 今、助けてやるからな!!

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