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〇〇は『橙色に染まりし温泉』でまったりするそうです 下

『橙色に染まりし温泉』……。(山奥にある……)


「ふぅー……生き返るなぁー……」


 ナオトが『例の温泉』にかっていると、青龍(本体)がとなりにやってきた。


「そうか、そうか。それは良かった。どうやら私の汗が君の役に立っているみたいだね」


 緑色の瞳と青い長髪が特徴的な美少女……いや美幼女はナオトのとなりに来ると、そうつぶやいた。


「ああ、お前のおかげで、鎧も徐々に外せられるようになってきたよ。ありがとな」


 彼は、不意に彼女の頭を撫でた。

 すると、彼女の頬が少しだけ赤くなった。


「れ、礼には及ばないよ。私は依頼の報酬を受け取ってもらえないと困るから、こうしているだけであって決して君のことが好きだからじゃないからね!」


「ああ、分かってるよ。でも、ありがとな。お前がいなかったら、こうしてゆっくりすることもできなかったからさ」


「え、あっ、うん……。ど、どういたしまして」


 二人がのんびり温泉にかっていると、みんなも温泉に入る音がした。


「なんだよ、あいつらもかりたかったのか? まあ、温泉を探すのを手伝ってくれたから別にいいか」


「そうだね。こういう時は人数が多い方が楽しいもんね」


「だな……。うーん、でもこれからどうしようかなー」


 彼は両腕を頭の後ろで組むと、そう言った。


「ん? それってどういうこと?」


 すかさずハルキ(青龍の本体)が彼にそうたずねた。


「うーんとなー。今回、この国にやってきたのは、俺のこの鎧を外せられるようにするためだから、もうこの国には用はないんだよー」


「そうなの? じゃあ、次、どこに行くか、まだ決まってないの?」


「まあ、そうだなー。うーん、次はどこを目指せばいいんだろうなー」


 彼がそうつぶやくと、ミノリ(吸血鬼)が体にタオルを巻いた状態で二人の前にその姿を見せた。


「ふっふっふっふっふっふ。あんたがそう言うと思ったから、次の目的地はもう決めてあるわよ!」


「おー! それは本当か! ミノリ!!」


「ええ、本当よ。あたしを誰だと思ってるの?」


 ミノリ(吸血鬼)が得意げにそう言うと、彼女の背後から現れたコユリ(本物の天使)がサラッとこう言った。


「血を吸うことしか能のないただの吸血鬼だと私は思っています」


「ちょ、ちょっと! 銀髪天使! 余計なこと言わないでよ! 今、いいところなんだから!」


「はて? 私には、次の目的地をあなたが言おうとしているようにしか見えませんでしたが……」


「そ、そうよ! 今、あたしがそれを言おうとしたのよ! それなのに、あんたが邪魔したせいで台無しじゃない! どうしてくれるのよ!」


「私は別にあなたのことなど、どうでもいいです。なので、さっさと次の目的地について話せばいいと思います」


「そう……。でも、なんかあんたと話してると調子がくるうから、少し向こうに行っててよ」


「私がどこにいようと、私の勝手です。なので、あなたに指図されるくらいなら、ここにとどまります」


「あっ、そう。じゃあ、もう好きにしていいから、おとなしくしてなさい」


「はい、最初からそのつもりです」


 コユリ(本物の天使)はそう言うと、ナオトの右腕にしがみついた。


「はい、そこ! どさくさにまぎれてナオトに密着しない!」


「はて? 私は一番落ち着く場所にいるだけですよ? 言いがかりはやめてください」


「言いがかりって……あんたね! いい加減にしないと本気で怒るわよ!」


「何ですか? やるんですか?」


 二人が目から火花を散らし始めると、ナオトが二人を落ち着かせるために、二人をなだめた。


「まあまあ、二人とも。ケンカはその辺にしてくれよ。なあ?」


「ナ、ナオトがそう言うなら、仕方ないわね……」


「そ、そうですね。マスターがそこまでおっしゃられるのでしたら、仕方ありません」


 す、すごいな……。モンスターチルドレンのケンカを止めるなんて……やっぱりナオトは只者ただものじゃないな。

 その時、ハルキ(青龍の本体)はそう思った。


「それで? 次の目的地について俺に話したいことがあるんだろ?」


「あー、そうそう、そうだったわね。コホン、えー、それでは今から次の目的地について話そうと思います。知りたい人は、こっちに集まってきてください」


 ミノリ(吸血鬼)がそう言うと、他のみんながぞろぞろと集まってきた。

 なんかカッパの会議みたいだな……まあ、いいか。


「さてと、それじゃあ、次の目的地について話すわよ。えー、次の目的地は、ここから結構、北に行ったところにあります。それは『赤き雪原』です!」


「えーっと、その『赤き雪原』って、何だ?」


 ナオトのその発言が周りの空気を一変させた。


「ちょ、ちょっと! 待ってよ! あんた、そんなことも知らないの?」


 ミノリ(吸血鬼)が彼に驚嘆の声を漏らす。


「ああ、知らないぞ。いや、待て。もしかして、それは北海道にあるのか?」


「うーん、まあ、そうね。あんたの世界では『十勝平野とかちへいや』って呼ばれてる場所よ」


「へえ、そうなのか……。で? そこには何があるんだ? 赤い雪でもあるのか?」


「うーん、まあ、雪……みたいな赤い何かがあるみたいだから、それが薬の材料だと思うわ」


「へえ、そうなのか。あっ、そうだ」


「何よ」


「俺たちが今、入ってるこの温泉も薬の材料なんじゃないのか?」


「ええ、そうよ。だから、さっきから手分けして、バケツとかで集めてるわよ」


「へえ、用意がいいな」


「ふふん! まあ、これくらいは当然よ! もっとめてもいいわよ!」


 ミノリ(吸血鬼)が鼻を高くしていると、コユリ(本物の天使)がポツリとこうつぶやく。


「勝手に自分の案にしないでください。考えたのは、私です」


「そ、それを実行できるように調整したのは、あたしよ! だから、今回はあたしの功績……」


「はい? 私の案がなければ、あなたが調整する機会などなかったわけですよね? ですから、今回の一件は私の功績です!」


「な、何よ! 言わせておけば!」


「何ですか? やるんですか?」


 二人がケンカを始めようとしていたため、ナオトは二人の間に割って入った。


「はいはい、二人とも。ケンカはやめろ。せっかくの温泉が台無しになるぞ」


 ナオトはそう言いながら、二人の頭を撫でていた。


「そ、そんなことしても、あたしは許さな……ふにゃあー」


「い、いくらマスターでも、そんなことで私は……はにゃー」


 二人はすっかりナオトの頭ナデナデのとりこになっていた。

 それを見ていたみんなは、この二人は相変わらずチョロいな……と思っていた。


「それじゃあ、次の目的地に向けて、出発……と言いたいところだが、温泉に入れる機会はこの先、少ないと思うから、大いに満喫まんきつしてから出発するぞー!」


『おおー!!』


 こうして、ナオトたちは温泉を満喫することにしたのであった。

 次の目的地は『赤き雪原』である。

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