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〇〇は『橙色に染まりし温泉』でまったりする? その22

 それから十分後……。


「おーい、もういいかー?」


「……あ……ああ……もう大丈夫だ……」


「そうか。なら、仕切り直しだな」


「そ、そうだな……。そうすることにしよう」


「よし、じゃあ、ここはせますぎるから、別の場所に移動しようぜ」


「あ、ああ、分かった」


 スリムになった巨大アマガエルがそう言うと、彼は別の場所に移動し始めた。


「……うーん、どこがいいかな……。よし、じゃあ、一番広いところに行くか」


 彼はこのまちで一番広い広場にやってくると、ぐぐーっと背伸びをした。


「今日はいい天気だなー」


 その直後、スリムになった巨大アマガエルがやってきた。


「まあ、そうだな。しかし、このまちは今、最悪の状況におちいっているがな……」


「そうだなー。けど、俺は別に構わねえよ。お前との決着をつけられるのなら、それで満足だ」


「なんだと? お前はこのまちをどうにかしようとやってきたのではないのか?」


「このまちをどうにかするって言っても、俺にできるのは、このまちに必要ないやつらを始末することだけだから……あいつみたいには、できねえよ」


「あいつ……? あいつとは誰だ?」


「俺の……いや……俺たちの永遠の先導者リーダーのことだよ。あー、早く会いてえなー」


「なるほど。お前がここに来た真の理由は、そいつに会うためだな?」


「まあ、そういうことだ。だから……さっさと終わらせたいんだよ。分かるだろ?」


「ああ、分かるさ。自分が尊敬している者に早く会いたいという気持ちは……こんな姿になっても分かる」


「そうか……。それじゃあ、そろそろ始めようぜ。両生類代表と哺乳ほにゅう類代表の戦いを……」


「ああ、そうだな。では、行くぞ?」


「ああ、どこからでもいいぜ」


「本当にどこからでもいいのだな?」


「ああ、いいぜ」


「そうか……。では、本気で行くぞ!!」


 スリムになった巨大アマガエルは、地面を思い切り蹴ると、両手に水をまとわせた。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 スリムになった巨大アマガエルは水刃で彼の首を切り落とそうと奮闘しているが、なかなか彼に当たらない。


「おいおい、どうした? 止まって見えるぜ?」


「くっ……!」


 彼は黒い鎧を全身にまとっているとは思えないほどの軽やかな動きで、スリムになった巨大アマガエルの攻撃をいとも簡単に回避していた。


「調子に……乗るなああああああああああああ!!」


 その直後、水刃が少し長くなった。


「おっ、いいねー。けど、それだと命中率は上がってもスピードは上がらないぜ?」


「なんだと?」


 彼はそう言うと、ピョーンと高く飛んだ。

 その後、背中から黒い翼を二枚生やした。


「な、なにいいいいいいいいいいいいいいいい!!」


「俺の異名は『黒き天使』。まあ、この翼は元々、うちの先導者リーダー以外のことを貴様呼ばわりする白いやつのものなんだけどな……」


「そんなことはどうでもいい! それより飛べるなんて聞いてないぞ! 早く降りてこい!!」


「おいおい、これくらいでびっくりするなよ。まだ戦いは始まったばかりだぜ!」


 彼はそう言うと、スリムになった巨大アマガエルに向かって急降下した。


「こ……この……卑怯者おおおおおおおおおお!!」


 スリムになった巨大アマガエルはそう言いながら、両手を合わせると、水の刀を作った。


「これでも……くらええええええええええええ!!」


「ほい、すきあり」


「グハァ!?」


 スリムになった巨大アマガエルは、自分に何が起こったのか分からなかった。

 カエルはうつ伏せで倒れた状態で、自分の目の前に立っている忍者を睨んだ。


「……お前……俺に……何を……した……?」


 彼はスリムになった巨大アマガエルの前で屈むと、こう言った。


「簡単なことだ。お前の背後からもう一人の俺がお前や脊髄せきずいに針を刺したんだよ。脊髄せきずい麻酔ますいってやつだ」


「そうではない……。お前が俺に使った技の……ことだ」


「俺は忍者だぞ? お前が知っていそうな技は全部、できるに決まってるだろ?」


「つ……つまり……俺を……攻撃した……もう一人のお前というのは……」


「まあ、そういうことだ。けど、俺に『影分身の術』を使わせるようなやつは、あいつと先生ぐらいだったから誇っていいぞ」


「ふん……最初から……俺のことを……相手にしていなかったやつが……言うセリフじゃ……ないな……」


「いや、別に俺はお前のことを弱いだなんて、一言も言ってないぞ? ただ、スリムじゃない方のお前なら俺に勝てたかもしれないな……」


「なるほど……。まさか……二足歩行が……弱点になってしまうとは……慣れないことは……するものではないな」


 スリムになった巨大アマガエルは、そう言うと意識を失った……。


「……お前との戦い……本当は……結構、楽しかったんだぜ? あの世か来世でまた会えたら、その時は相手になってくれよ?」


 彼はそう言うと、スリムになった巨大アマガエルの頭を優しく撫でた。


「よし……それじゃあ、行くか」


 彼は、このまちにまだ居るかもしれない強敵を見つけるために走り始めたのであった……。


 *


『ビッグボード国』に到着した『アイ』は、探知系の魔法を使って、そのまちがどうなっているのかを調べた。


「なるほどね。私の教え子たちがどうにか頑張っているようだから、今回は私の出番はなさそうね。けど、一応、まちの様子を見ておかないと『長老会』のメンバーに怒られるかもしれないから、まちを少し見て回りましょうか……」


 白というより銀に近いショートヘアに黒い瞳。

 白いワイシャツ、白いスカート、白い靴下、白い運動靴を身にまとった身長『百三十センチ』の美幼女『アイ』はそう言うと、『ビッグボード国』の城下町の中へと入っていった。


「……モンスター化した人たちがこのまちにいるせいで、このまちはこんなことになってしまった……。けど、これは明らかに不完全なモンスター化ね。自分がなんだったのかほとんど覚えていないし、戦闘力はさほど変化していない。まあ、脳のリミッターが外れているから、普通の人間を相手するなら、別に問題はなさそうね」


 彼女がそう言うと、モンスター化した人たちが彼女を取り囲んだ。


「あら? これはいったいどういうことかしら? まさか、私と戦うつもりじゃないでしょうね?」


 彼らは彼女がモンスターチルドレンを生み出した者であることを知らないため、ジリジリと彼女に近づいていった。


「……そう。私と戦う気なのね? なら、教えてあげる。私と互角に渡り合えるようになるには、あなたたちが何人いたとしても、無理だということを!!」


 彼女は一秒以内に自分の周囲にいたモンスター化した人たちを倒してしまった。

 まあ、彼女の戦闘力が測定不可能であることを知らずに戦いを挑んだ時点ですでに敗北することは決まっていたのだが……。


「はぁ……こんなのがまちの中にうじゃうじゃいるのよね……」


 彼女は少し俯いたが、その時、ナオトの気配を感じたため、スッと顔を上げた。


「どうやら、ナオトは無事にこのまちに着いたようね。でも、どうしてナオトはこのまちの上空にいるのかしら? うーん、とにかくこのまちにいるモンスター化した人たちを一気に無力化する方法を考えましょう。ナオトの様子を見に行くのは、そのあとでも間に合うだろうしね」


 彼女は先ほど倒したモンスター化した人の額に触ると、体内がどのような構造になっているのかを調べた。


「……どうやらモンスターチルドレンの血液を悪用している連中がいるみたいね。まあ、こんなことをするのは『漆黒の裏組織(アポカリプス)』しかいないっていうことは分かってるんだけどね……。さてと、それじゃあ、このまちにいるモンスター化した人たちには、弱体化の魔法をかけておきましょうか」


 彼女が指をパチンと鳴らすと、彼らの動きは少し鈍くなった。


「まあ、レベルを一段階下げただけどね……。さてと、それじゃあ、ナオトに会いに行きましょうか」


 彼女はそう言うと、このまちの上空にいるナオトのところに行くために、大空へと飛び立ったのであった。

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