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〇〇は『橙色に染まりし温泉』でまったりする? その20

「おかしいな……。私は今日、巨大化した虫さんたちと巨大化した植物型モンスターを倒したのに……なんでまた私はこういうことに……巻き込まれるのかな?」


 裏路地には、悪い人たち。

 教会には、ちょっと危ない人たち。

 だとしたら、まちの中心部には騒ぎの元になった人たちがいるかもしれないと彼女は思った。

 しかし、そこにいたのは、頭が二つある黒い龍だった。


「はぁ……仕方ない……。さっさと終わらせよう」


 彼女はそう言うと、先ほど使わなかった『雷上動らいじょうどう』を召喚した。


「さぁ……どこからでもかかってきていいよ……。黒いトカゲさん」


 頭が二つある黒い龍はそれを聞くと、激怒した。


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 その直後、真っ赤な炎を彼女に向かって吐いた。


「おっとっと……」


 彼女はひょいとそれをかわすと、透明な矢を黒龍に向かって放った。

 しかし、それは龍のうろこによって、はじかれてしまった。


「私の矢が刺さらない敵は……久しぶりだね……」


 彼女はそう言うと、黒龍の金色の瞳を狙って、透明な矢を放った。

 すると、黒龍は目を閉じて、それを防いだ。


うろこだけじゃなくて、皮もかたいんだね……。ふふふふ……これは久しぶりに楽しめそう……だね……」


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 頭が二つある黒い龍は雄叫びをあげると、再び彼女に向かって、真っ赤な炎を吐いた。


「それは……さっき見たよ!」


 彼女はそれが放たれた瞬間、龍の舌に向けて、透明な矢を放った。

 すると、もう片方の龍の頭がそれを食べてしまった。


「へえ……つまり、あなたたちを倒すには……同時に射抜かないといけないってことだね……?」


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 頭が二つある黒い龍は「お前なんて、相手にならない! あと一撃で殺してやる!!」とでも言わんばかりの雄叫びをあげた。


「……あなたたちは強いよ。うまく連携が取れているし、お互いのことをよく理解している……。けどね、それはたった一本の矢で粉々にできるんだよ?」


 彼女は初めて……黒龍を睨んだ。その直後、黒龍は悟った。これは非常にまずいと……。しかし、もう遅かった。


「今から……とっておきを……見せてあげるから……じっとしててね?」


「グオ!?」


 黒龍は彼女の目と殺気にビビってしまい、後ろに下がってしまった。

 その直後、彼女は黒龍の舌に向けて、透明な矢を放った。

 黒龍はその矢をなんとかして防ごうと思った。

 しかし、黒龍には、それが矢ではなく、巨大な槍に見えてしまったため、そんなことは不可能だと思ってしまった。

 その直後、黒龍の舌に透明な矢が刺さった。


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!?」


 黒龍はあまりの痛さに涙を出しながら、暴れていた。

 黒龍はなんとかして、その矢を舌から抜こうと頑張ったが、その矢は黒龍の舌からまったく抜けなくなっていた。

 その理由を知る前に、黒龍は痛さと人間に負けたショックで息絶えた。


「高木式射撃術……の型一番『幻影射撃』。久しぶりに使っちゃったな……。ごめんね、黒いトカゲさん」


 彼女はそう言うと、黒龍にぺこりと頭を下げながら、謝った。


「でも、私を本気にさせた黒いトカゲさんが悪いんだよ?」


 彼女はそう言うと、屋根から屋根へと飛び移っていく方法で前に進み始めた。


「次は……どこに……行こうかな……」


 *


「……これでよし……もう動いていいよー……」


「ニャー」


 高木は瓦礫の下敷きになっていた赤い瞳が特徴的な黒猫を助けて、手当てをしてやった。


「よしよし、もう大丈夫だよー」


「ニャー、ニャー」


「ふふふ……可愛いなー」


「ニャー」


「おー、よしよし……。いい子だねー」


 赤い瞳が特徴的な黒猫は彼女の膝の上で彼女に甘えていた。

 高木はその猫を撫でたり、褒めたりして、度重なる戦闘で疲労した心身を癒していた。


「はぁ……どうしてこのまちはこんなことになったのかな……」


「うーん……まあ……そのうちなんとかなるんじゃないかなー」


「そうだね……そうなるといいね……って、今の声、どこから」


「ニ……ニャー」


 高木は今の声の主が目の前にいる黒猫なのではないかと疑った。


「じーっ……」


「ニャー……ニャー」


「……うーん、やっぱり、そんなこと……あるわけないよね」


「そうそう、君の勘違いだよ……あっ」


 高木は目の前にいる黒猫が言葉を発したことに対して驚き、それと同時に目を輝かせた。


「黒猫さん! あなた……喋れるの!?」


「はぁ……まあ、君は命の恩人だから、別にバレても大丈夫かな……。コホン、まあ、その……私の名前は『ユミナ・ブラッドドレイン』。今はこんな姿だけど吸血鬼と悪魔のハーフだよー。よろしくねー」


 まあ、魔王の幹部だったのは、今からずっと前のことだから、言わなくていいよね……?

 赤い瞳が特徴的な黒猫はニコニコ笑いながら、そう言った。

 高木は自分だけ自己紹介しないわけにはいかないと思い、黒猫に自己紹介をした。


「あ、あの……えっと……私は……その……あの……えーっと……」


 黒猫はニコニコ笑いながら、彼女の頭をぷにぷにしている肉球で撫でた。


「慌てなくていいよー。時間はたっぷりあるんだから」


「は、はい……」


 高木は深呼吸すると、仕切り直した。


「コホン……えっと……私の名前は『高木たかぎ 弓子ゆみこ』……です。よろしくお願いします!」


「はい、よくできました。えらいえらい」


 黒猫はニコニコ笑いながら、彼女の頭をぷにぷにしている肉球で優しく撫でた。


「え……えへへ、猫とお話しできるなんて……ここは天国……なのかな?」


「ううん、残念ながら、ここは天国じゃないよ。まあ、私がいた頃よりかは平和になってるみたいだけどねー」


「そ……そうなの?」


「うん、そうだよー。まあ、このまちの様子を見る限り、完全に平和だとは言えないけどねー……」


 突如として出現したモンスター化した人たちによって、ここ『ビッグボード国』はかなりまずいことになっていた。

 彼らが現れたせいで家族や友人とはぐれてしまった人たちがまだこのまちにいるのは、確か。

 それに、モンスター化した人たちを操っている人か物がこのまちのどこかにある、もしくはいるのも確かである。

 今このまちをどうにかできるのは、このまちに来ている彼女と似たような力を持つ者たちとナオトの仲間たち……そして、吸血鬼と悪魔のハーフである『ユミナ・ブラッドドレイン』だけであると、彼女は判断した。


「ねえ、黒猫さん……じゃなくて、ユミナさん」


「んー? なあにー?」


「私と一緒にこのまちを……このまちの人たちを助けませんか?」


「うん、いいよー」


「そう……ですか。ダメですか……。分かりました。なら、私はもう行きま……」


「おーい、私はいいって言ったよー」


「え?」


「いや、だから、私は一度もダメなんて言ってないよー」


「じゃあ、私に協力……してくれるんですか?」


「うん、いいよー。まず、何からやるー?」


「え、えっと……それじゃあ、このまちにいるモンスター化した人たちを元に戻す方法を……」


 ユミナ(黒猫形態)は高木が最後まで言い終わる前にその方法を述べた。


「そんなの簡単だよー。けど、君や私ではそれは無理だよー」


「そ、それは……どういう……ことですか?」


「まあ、簡単に言うとねー。この世界にいるモンスターチルドレンと人が合体したような存在でないとそれを壊せないからだよー」


「そ、そうなのですか?」


「うん、そうだよー。だから、私たちはこのまちに残っているモンスター化した人たちを倒すことと、このまちに取り残されている人たちを救出に専念すればいいんだよー」


「わ、分かりました……。それじゃあ、行きましょうか。ユミナさん」


「ユミナでいいよー。弓子ゆみこちゃん」


「は、はい、分かりました。では、行きましょう」


「うん、そうだねー。さっさと終わらせて、温泉に入りに行こう」


 彼女らはその後、このまちにいるモンスター化した人たちを倒すことと、このまちに取り残されている人たちを救出するということを成し遂げるために、屋根から屋根へと飛び移るという方法で前に進み始めた。


 *


 まさか……『ビッグボード国』が実験に使われるなんてね……。

 はぁ……どうしてこう私の仕事を増やすようなことばかり起こるのかしら……。

 でもまあ、今頃、私の可愛い教え子たちがなんとかしているだろうから……あまり急ぐ必要はなさそうね。

 それにしても、ナオトがモンスターチルドレンと融合するなんてね……。

 成功率一パーセントの『強制合体フォースコネクト』。

 失敗すれば、モンスターチルドレンの養分として吸収される恐ろしいものだけど、成功すれば自分にモンスターチルドレンの力を受け継がせることができる。

 まったく……あなたはどこまで強くなるのかしらね。


「……クゥ?」


「ううん、別になんでもないわ。気にしないで」


「……クゥ!」


「え? 私、今、嬉しそうな顔してたの? あなた、私のことよく見ているのね」


「クゥ! クゥ!」


「ふふふ……そうよね。クゥちゃんは私の家族みたいなものだから、当然よね」


「クゥ!!」


 グリフォンのクゥちゃんは「えっへん!!」と言わんばかりにムフーっと鼻息を吐いた。


「よしよし、あなたは、いい子ね。それじゃあ、このまま『ビッグボード国』まで私を連れていってね」


「クゥー!!」


 グリフォンのクゥちゃんは、そんな声をあげると、スピードを上げた。

 クゥちゃんが背中に乗せているのは、白というより銀に近いショートヘアと黒い瞳と白いワイシャツや白いスカートなど、身につけているものが全て白いのが特徴的な身長『百三十センチ』の美少女……いや美幼女『アイ』である。

『モンスターチルドレン育成所』のおさであり、モンスターチルドレンを生み出した張本人。

 そして、ナオトたちが通っていた高校の先生である。

 戦闘力は測定不能なので彼女に戦いを挑むのはやめておいた方がいい。

 そんな彼女は『長老会』に所属している十六人の大魔法使いたちから、『ビッグボード国』をなんとかするよう言われ、仕方なく向かっているのである。


「ナオト……お願いだから、無茶だけはしないでね。私の……未来の……お、お婿むこさんになる人……なのだから」


 ちなみに彼女は、ナオト(主人公)のことを愛しているため、彼に危害を加えるような不届き者には死もしくは永遠の苦しみを与えるそうなので気をつけよう!


「『漆黒の裏組織(アポカリプス)』か……。黙示録という意味を持つその言葉を組織名にするなんて、おかしな組織ね。この私が気づかないとでも思っているのかしら? まあ、まずは幹部を一人残らず捕まえて、今回の事件の全貌を吐かせましょう。そうね……下っ端たちには地獄に行ってもらいましょうか。『ケルベロス』もお腹を空かせている頃だから、ちょうどいいわね」


 待っていなさい……もうすぐ組織に所属するメンバー全員に、私の恐ろしさを骨のずいまで叩き込んで、一生忘れられないようにしてあげるから。

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