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〇〇は『橙色に染まりし温泉』でまったりする? その16

 四月十八日……午前八時十五分……。

 この日、ビッグボード国内でモンスター化した人たちがまちや人を襲う事件が起こった。

 今から始まるのは、その事件のほんの一部である。


「まったく……人が気持ちよく温泉にかっている最中に襲ってくるなんて、空気の読めない人たちですね」


 そんなことを言ったのは白い半袖Tシャツと水色のショートパンツと金髪ショートと黒い瞳が特徴的な美女『相馬そうま 夏樹なつき』だった。


「言っておきますが、今の私は機嫌が悪いので手加減はできませんよ?」


「…………」


 モンスター化した人たちは彼女の言葉を聞いていなかったかのようにただただその場に立っていた。


「無視……ですか。はぁ……呆れました。元人間なのに、まともに返事すらできないのですか?」


「…………」


「また無視ですか……。では、用がないなら、早くこの場から消えてください。目障りです」


「…………」


「はぁ……分かりました。では、私がこの場から消えるとしましょう」


 彼女がその場から離れようとすると彼らは彼女の行く手を阻んだ。


「どうやら、生かしておく気はないようですね。なら、どうして先ほどからあなたたちは黙っているのですか?」


「…………」


「あなたたちは常に耳栓をしているのですか? それとも、何かの病に侵されているのですか?」


「…………」


「……もういいです。あなたたちの顔など見たくありません。さようなら……」


 彼女がその場から離れようと高くジャンプすると、彼らは彼女の後を追ってきた。


「なるほど。そういうことですか。私を確実に仕留めるための作戦でしたか。分かりました。では、私はあなたたちから全力で逃げることにします」


 彼女はそう言うと屋根をピョンピョンと伝っていった。

 彼らが追ってこられないように不規則に移動した。そして……。


「どうやら、うまく逃げ切れたようですね。はぁ」


 彼女はそう言うと屋根の上で溜め息をいた。

 その時……何かが彼女の目の前に降ってきた。


「もうー! 今日は仏滅ですかー!」


 彼女はそう言いながら、両腕をクロスさせて顔を覆い隠した。

 砂埃が宙を舞ったのち、その中から姿を現したのは、特殊な素材でできている赤いスーツと赤い武装と白髪ロングと水色の瞳が特徴的な美少女だった。


「な、何なんですか! あなたは! それにその衣装と武装は何ですか! コスプレですか! だとしたら、お金の無駄使いですよ!」


 相馬がそう言うと彼女はこう言った。


「失礼ですね。私はこう見えても魔導兵器ですよ? 単なるコスプレではありません」


「だとしたら、ここに何をしに来たのか教えていただけませんか? このまちは今、大変なことに……」


「それはマスターから聞いています。そして、私がここに来たのは彼らの殲滅ではありません」


「そうですか。では、あなたの真の目的は何ですか?」


「少し待ってください。マスターにいてみます」


 彼女はそう言うとマスターに連絡した。

 その結果……。


「結論が出ました。あなたに真の目的を話しても構わないとのことです」


「そうですか。では、教えてください。あなたの真の目的を……」


 その直後、体長三十メートルの巨人が相馬から見て数十メートル先の右側に現れた。


「な……何ですか! あれは!」


「落ち着いてください。このまちの人たちが数百人ほど集まって合体しただけの存在です」


「あ、あなたはどうしてそんなに落ち着いているのですか! 早く何とかしないと……」


「その必要はありませんよ。なぜなら……」


 その直後、どこからか飛んできた二本の黒い槍がそいつの両目を潰した。


「彼が倒してくれるからです」


「な……っ! 今のは……いったい……」


「それは今から説明します。ついでに私がここに来た本当の理由も話します」


「そ……そうですか。よ、よろしくお願いします」


「はい。では、話します」


 彼女はそう言うと今の出来事について話し始めた。


「先ほどの攻撃を放ったのはあなたがよく知っている人物です。その者の名は『本田ほんだ 直人なおと』です」


「え……? それは……本当……ですか?」


「はい、間違いありません。彼はこの世界に来ています。あなたたちと同じように」


「ちょ……ちょっと待ってください! なぜあなたが彼のことを知っているのですか!」


「それは私が魔導兵器だからです」


「それは理由になっていません! ちゃんと話してください!」


「では、一つ確認します。あなたは相馬式操馬術の使い手。『相馬そうま 夏樹なつき』様ですか?」


「え? あっ、はい、そうです。間違いありません。あれ? 私、あなたにそのことを言いましたか?」


「今のが私の能力の一つ。『個人情報取得眼』です」


「や、厄介な眼ですね。あなたはその目で他者の個人情報を取得できる。そういうことですね?」


「はい、その通りです。ついでに自己紹介をしておきます」


 彼女はそう言うと自分の胸に手を当てながら、自己紹介をした。


「私の名前は『アリサ』。『ブラッド・カルテット』という人物によって作られた魔導兵器です。以後お見知りおきを……」


「こ、こちらこそよろしくお願いします。それで、あなたはここに何をしに来たのですか?」


「私としたことがまだそのことについて話していませんでしたね。では、今からそのことに話します」


 彼女はそう言うと気を付けの姿勢をとった。


「私は先ほどまでモンスターチルドレンと人が合体できるのかということについてとモンスターチルドレン育成所の現在位置を特定するために地下にある研究所にいました。結果は……どちらもダメでした。まず、強力な魔力結界で建物をほぼ完全に覆っていて、なおかつ日替わりで位置を変えるモンスターチルドレン育成所の現在位置を探るなど不可能です。それが地上にあるなら、まだいいのですが、地下となると話は別です。なぜなら、私の魔力感知を鈍らせるからです。なお、モンスターチルドレンと人が合体できるのかどうかはほぼありえないという結論に至ったので、実際に合体に成功しているナオト様に会いに来ました」


「……つ、つまりあなたは、ナオトに会うためにこんなところに来たということですか?」


「はい、その通りです。しかし、私は正直、マスターの指示に従いたくないのです」


「なぜですか? あなたを作ったのはその人ではないのですか?」


「確かにマスターは私を作りました。しかし、マスターは分かっていないのです。この世界の女王にして、モンスターチルドレン育成所の所長『アイ』の恐ろしさを」


「私はその人のことを知りませんが、要するにあなたはあなたのマスターを危険な目にわせたくないということですか?」


「おそらくそうだと思います。だから私は、モンスターチルドレンと人が合体できるのかどうか、この目で確かめておきたいのです」


「そうでしたか。あなたは優しいのですね」


「優しい? 魔導兵器であるこの私がですか?」


「はい、そうです。だって、あなたはなんだかんだ言ってマスターのために何かしようとしていますから」


「私にそのようなプログラムはありませんが、あなたの言う通りかもしれません。マスターのことを考えない日はありませんから」


「そうですか……。では、私はこれで失礼します」


「待ってください。ナオト様に会いに行かないのですか?」


「はい、行きません。私が彼の前に姿を見せる時は今ではありませんから」


「そうですか。では、私は彼のところに行って目的を果たします。少しの間でしたが、あなたと出会えて本当によかったです」


「そうですか。では、また会えるその日までお互い頑張りましょうね」


「はい、その日を楽しみにしています」


 その後、二人はそれぞれの役目を果たすために動き始めた……。

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