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〇〇は『橙色に染まりし温泉』でまったりする? その4

 こちら女風呂。(露天風呂)


「ところで貴様らはまだナオトのことが好きなのか?」


 加藤式忍法の使い手『加藤かとう 真紀まき』がそう言うと、それぞれが答えを言った。


「僕は今でも好きだよ、ナオトのこと。まあ、一人の女性として見られてないから可能性は低いけどね」


 黒沢式植物召喚術の使い手『黒沢くろさわ すばる』。


「私の刀に【鉄華丸】という名を付けてくれたナオトには感謝してもしきれないが、あいつが望むのなら、この身を捧げても構わない」


 小宮式剣術の使い手『小宮こみや ひかり』。


「光さんは大胆ですね……。けど、私のもう一つの人格のことを知っても、キョトンとしていたナオトくんになら何をされても抵抗しないと思います」


 坂井式撲殺術の使い手『坂井さかい 陽代里ひより』。


「お前ら、ホント、あいつのこと好きだよな。まあ、あたしもその一人なんだけどな……。というか、あいつってロリコンじゃなかったっけ?」


 杉元式激槍術の使い手『杉元すぎもと 黒曜こくよう』。


「いえ、そんなことありませんよ。それは単に、彼の母親がムスコンだったせいです。なにせ、自分より身長が十一センチ以上高い女性を彼の妻として認めないような人ですから……。あっ、ちなみに私も彼のことは好きですよ。高校時代の彼は私が召喚した馬を私より乗りこなしていましたから」


 相馬式操馬術の使い手『相馬そうま 夏樹なつき』。


「私も……ナオトのことは……好き……早く……会いたい。だって、ナオトは……私のことをちゃんと見てくれるから」


 高木式射撃術の使い手『高木たかぎ 弓子ゆみこ』。


「そうか、貴様らの気持ちはあの頃と変わらないというわけだな」


「で? 結局、お前はどうなんだよ。お前、あいつのことだけは貴様って言わなかったよな?」


杉元すぎもと。貴様は何が言いたいんだ?」


「なあに簡単なことさ。つまり、お前もあたしらと同類だってことだ」


「私が貴様らと同じ……だと?」


「ああ、そうだ。あたしには、お前の考えてることは未だにわかんねえけどよ、お前があいつのことを意識してるのは、みんな知ってんだぜ?」


「そうか……。ならば、もう隠す必要はないな。貴様の言うとおり、私はナオトのことが好きだ。だが、恋人になりたいとか結婚したいとかの好きではない。私はナオトの遺伝子がほしい。つまり、今すぐにでも性行為をしたいという意味での好きだ。そこは勘違いするなよ!」


「なるほど……そうきたか。まあ、お前がどう思っていようと、ここにいる全員がお前のライバルだってことに変わりはねえけどな」


「それは別に構わない。しかし、最後にナオトという名の宝を手に入れるのは、この私だ」


「おっ、言うねえ。けど、あたしらだって、目的は同じだ。お前が本気であいつを自分のものにしようとするなら、それなりの覚悟がないと、一瞬であたしらに負けちまうから、それは頭に入れておけよ?」


「貴様らこそ、私に負けぬよう、努力するのだぞ?」


 結論。ナオトの高校時代の同級生のうち女子はみんな彼のことが好き。(中には異常な者もいたが……)


 *


 こちら男風呂。全員、体を洗っている。


「なあ、布田」


「ん? なんだ? 悠人?」


「今さらくけどさ、お前って、ナオトのことどう思ってるんだ?」


「どうって、どういう意味だよ」


「それは、ほら、あれだよ。友だちとか親友とか義兄弟とか色々あるだろ?」


「あー、そういうことか。うーん、そうだな……。まあ、普通に考えたら、俺たちの先導者リーダーって感じかな」


「まあ、それはそうなんだけどさ。もっとこう、ないのか? あいつの体のここが好きとかさ」


「いや、俺は別にそういうのはないよ。でもまあ、あえて言うなら……」


「あえて言うなら?」


「あいつの生き方が好き……かな?」


「生き方が好きって、なかなかない答えだぞ、おい」


「でも、実際そうだろ? みんなが傷つくくらいなら自分が犠牲になるっていうか、過保護すぎるっていうか、まあ、俺はあいつのそういう他人思いなところが好きだ」


「そうか……。なら、時坂はどうだ?」


「僕ですか? そうですね。僕は彼の補佐役のような立場でしたが、これといって好きなところは……あっ、ひとつありました」


「おう、なんだ?」


「それはですね、誰よりも早く学校に来ていたことです!」


「えっと、それはどういう意味だ?」


「彼は高校時代、僕たちのクラスの先導者リーダーでした。しかし、それと同時にそれまでそれに任命されたことがなかった僕の経歴を彼に壊されてしまったのです! 僕はどうにかして、彼を陥れようとしました。しかし、彼は僕が教室に仕掛けをする前に学校に来ていたのです! これがどういう意味かわかりますか! これは僕の考えなど、お見通しだという彼からのメッセージだったのです! 僕はその時、彼になら、このクラスの先導者リーダーを任せてもいいと確信しました。それが彼に対して今も抱き続けている尊敬にも近い好きです!」


「なるほど……つまり、お前にとって敵だったナオトの態度や行動が好きってことだな?」


「まあ、要約するとそのようになりますかね」


「なるほど……改めて、あいつの凄さがわかったよ。けど、俺はやっぱりあいつの心臓が好きだな」


「お、おい、悠人ゆうと。それは本気で言ってるのか?」


「そうですよ! あなたは心臓フェチですか!」


「ち、ちげえよ! あいつの心臓の音が好きってことだよ! ほら、女子にもいるだろ? 男の手の平に浮き上がってる血管が好きなやつ。あれと似たようなものだ!」


「なるほど。そういうことか」


「ふむ、変わった趣味をお持ちのようですね」


「おい、お前ら何か勘違いしてないか? 俺はあいつの心臓の音が好きなだけだぞ?」


「なるほど。そういうことか」


「ふむ、やはり変わった趣味をお持ちのようですね」


「お前ら……俺で遊んでるだろ……。まあ、いいや。えーっと、それに気づいたきっかけっていうのはな、俺が今も着ている黒い鎧の力を暴走させちまった時だ。あの時、あいつは俺を抱きしめた後、自分の心臓の音を俺に聞こえるように俺の頭を移動させたんだよ。でさ、あいつの心臓の音を少し聞いたら、正気に戻ってたんだよ。あの時は本当に驚いたよ」


「なるほど。そういうことか」


「ふむ、かなり変わった趣味をお持ちのようですね」


「だーかーらー! 俺にそんな趣味はないって言ってるだろ!」


「すまない、つい」


「すみません、僕もつい」


「もうー! なんでお前らは俺をいじるんだよ!」


 その時、リルはなんだかんだこの三人はとても仲がいいのだということに気づくと、クスッと笑った。


 *


 その頃、『ビッグボード国』の全域では……。


「さて、モンスターチルドレンを超越した力がどれほどのものか高みの見物といきましょうか」


 彼の名前は『グレー・アイランド』。彼は決して人の前に現れないが、面白いと思ったことには参加する主義である。(灰色の炎の形態で)

 彼は『漆黒の裏組織(アポカリプス)』という組織の幹部の一人であり、唯一の頭脳派である。

 彼は組織の資金源であるモンスターチルドレンと同等の力を発揮できる薬をこのまちの裏路地にて格安で販売した。

 失敗すれば、モンスターになるか、死ぬ。

 成功すれば、モンスターチルドレンと同等……いやそれ以上の力を発揮できるハイリスク……ハイリターンの代物である。


「さあ、私に見せてください。人類の可能性を!」


 ちなみに、彼(灰色の炎の形態)はそのまちの上空にいた。

 そこから、モンスターチルドレンのような姿になる人々を見物するために。

 人々が恐怖にかられ、泣き叫ぶ姿を、大切な人を殺され、絶望する様を見逃さないように。

 しかし、彼の思惑通りには、いかなかった。


『ミノリ、みんなにこう伝えてくれ。探索は後回しにするが、その代わりにこの国を救うと』


『わかったわ。気をつけてね』


『ああ、はなからそのつもりだ!』


 ミノリ(吸血鬼)の固有スキル『意思の伝達(メッセージ)』でミノリと念話をしていたナオトはその国に向かって、ものすごいスピードで飛んでいた。


「ん? 今なんか灰色の炎みたいなのが浮いてたような。うーん、気のせいかな」


 彼はそのまま真っ直ぐ『ビッグボード国』に向かって飛んでいった。


「い、今のはいったい……。そ、それよりも今の少年はこれから何をするつもりなのでしょうか……?」


 グレーは考えた。今の少年がもし、この騒動をなんとかしようとやってきた者だとしたら……と。


「ふむ、これは一応、確認しておく必要があるようですね。それに、あの少年の正体と目的が何なのかを把握しておくべきだと私の脳細胞たちも賛同してくれましたから!」


 グレーはそう言うと、彼を追い始めた。


「さてさて、これは予想以上に面白い展開になるかもしれませんね」


 グレーは、なんとか彼に追いつくためにスピードを上げた。


 *


 その頃、ビッグボード国に向けて飛んでいたミノリ(吸血鬼)たちは……。(飛べない者は飛べる者に運んでもらっている)


「みんな! ここから班に分かれるけど、無茶や無謀なことはしないでね!」


『了解!』


 まったく……ナオトったら、結局、また人助けをしに行ったわね……。

 帰ったら、大目玉を食らわせてやるから、覚悟しておきなさいよ!

 ミノリ(吸血鬼)はそんなことを考えながら、固有武装『光を喰らう黒影製の翼(ブラックイカロス)』という名の黒い翼を羽ばたかせながら、ビッグボード国に向かって飛んでいた。

 その横をコユリ(本物の天使)が飛んでいた。

 コユリはミノリに近づくとこう言った。


「少しいいですか?」


「なによ、こんな時でもあたしに何か言いたいことがあるの?」


「いいえ、違います。私はあなたに簡単な質問に答えてほしいだけです」


「そう……なら、早く言って」


「わかりました。では……あなたはこれからもマスターと一緒にいたいですか?」


「ええ、もちろんよ。目的を果たすまでは、ナオトには、あたしたちの旅に付き合ってもらうわ」


「そうですか……。では、次の質問です。あなたは、マスターの正体をご存知ですか?」


「そんなの知らないわよ、ナオトはナオトでしょ」


「そうですか……。では、最後の質問です。もし旅が終わったら、マスターと共にマスターの世界に行きますか? それとも故郷であるこの世界に留まりますか?」


「……そうね、それはまだ決めてないわ。けど……」


「けど?」


「ナオトがあたしを……あたしたちを必要としてくれている間は、あたしはあいつの……ナオトのそばに居続けるわ」


「そう……ですか。よくわかりました」


「え? もう終わりなの?」


「はい、もう結構です」


「そう……。じゃあ、今回は頼むわよ」


「何がですか?」


「何がって、同じ班なんだから協力しようってことよ」


「あー、そういえばそうでしたね。しかし、私は私のやり方というものがありますので、どうか邪魔をしないでくださいね?」


「はぁ……わかったわよ。だけど、ピンチになったらちゃんと叫ぶのよ?」


「……わかりました。しかし、私はあなたとは違うのでそんなことにはならないと思います」


「ふん、そんなのわかってるわよ。確認よ、確認」


「そうですか。では、急ぎましょう」


「ええ、そうね」


 ミノリ(吸血鬼)がそう言うと、皆、目的地へと急いだ。

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