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〇〇は『橙色に染まりし温泉』でまったりする? その3

 四月十八日……。午前八時……。朝食後……。


「さてと、それじゃあ、昨日決めた班に分かれてくれ」


 ナオト(『第二形態』になった副作用でショタ化してしまった身長『百三十センチ』の主人公)がそう言うと、みんなはしぶしぶ彼の言う通りにした。


「よし、それじゃあ、みんな、気をつけ……」


「待って……!」


 その時、ミノリ(吸血鬼)が彼の胸に飛び込んだ。


「ミノリ、わかってるとは思うが、今さら班を変えてくれって言っても……」


「そんなこと今さら言うわけないじゃない! あたしはただ、単独で行動しようとするあんたのことが心配なだけよ!」


「……心配してくれるのは嬉しいけど、どう考えても八班に分けるには、こうするしかないんだよ」


「でも、それだとあんたが危なくなった時、誰も助けてくれないのよ? あんたはそれでいいの!」


 ナオトはミノリ(吸血鬼)をギュッと抱きしめると、こう言った。


「いいか、ミノリ。今回の一件はいつも俺のために尽くしてくれているお前たちに感謝の気持ちを伝えるためのものでもあるんだぞ?」


「そ、それでも、あんたに何かあったらって思うと不安で仕方ないのよ」


「そうか、俺はそこまで頼りないのか……」


「い、いや、別にそういう意味で言ったわけじゃ」


「ああ、わかってるよ。お前はただ、俺と離れるのが寂しいんだろ?」


「そ、そうよ……何か問題ある?」


「いや、ミノリらしいなって思っただけだから、気にするな」


「そ、そう……。じゃあ、気をつけてね」


「ああ、お前たちも気をつけろよ」


「……ねえ、ナオト」


「ん? なんだ?」


「え、えーっと、もしかして、その格好のままで行くつもり?」


 現在のナオトの体はこうなっている。

 黒い鎧で全身を覆っている。

 背中には四枚の黒い翼が生えている。

 尾骨から先端がドリルになっているシッポが生えている。(ドリルは金色……黒いシッポはむちのような形状をしているため、しなやかに動く)

 常に黄緑色の瞳。


「あー、そういえばそうだな。じゃあ、またミノリに頼もうかな」


 その直後、ミノリ(吸血鬼)はナオトに顔を近づけた。

 その後、目を輝かせながら、こう言った。


「ええ、いいわよ! それじゃあ、今から準備するからちょっと待ってなさい!」


「ああ、よろしく頼むぞ」


 説明しよう。ミノリ(吸血鬼)は服を作るのが得意なのだ。

 ナオトがそう言うと、ミノリ(吸血鬼)は全速力でお茶の間から作業部屋に行った。

 数十分後。ミノリ(吸血鬼)は白いマントを持ってきた。(おそらく、自作)


「えーっと、今から俺に何をする気なんだ?」


 ミノリ(吸血鬼)はニコニコ笑いながら、こう言った。


「それはできてからのお楽しみよ! あー、あと、しばらく動かないでね」


「お、おう、わかった」


 ミノリ(吸血鬼)はその直後、自分の親指の先端を噛んだ。

 その後、ミノリ(吸血鬼)は親指の先端から出てきた血を操り、俺の黒い鎧と四枚の黒い翼と先端がドリルになっているシッポを赤く染めた。

 ミノリ(吸血鬼)は仕上げに、ナオトの背後に回った後、白いマントを着せた。


「ナオト、もういいわよ」


「お、おう、わかった……って、なんで俺の鎧を赤く染めたんだ?」


「まあ、あれよ。黒は全てを真っ黒にするから、なんか怖いイメージがあるけど、赤ならヒーローっぽい色だから怪しまれないでしょ?」


「いや、赤い鎧を身につけている少年が歩いているっていう噂が町中に広まりそうなんだが……」


「別にいいんじゃない? あんたが『漆黒の堕天使』だってことがバレなきゃいいんだから」


「そ、そうかな? みんなはどう思う……って、何でみんなして高速で首を縦に振るんだよ……」


 彼がみんなの方を向くと、全員がミノリ(吸血鬼)に同意していた。


「ほら、みんなも同意してくれたわよ」


「うーん、まあ、これでいいよ。別の意味で目立ちそうだけど……」


「そう……なら、そろそろ出発してもいいわよね?」


「え? いや、俺……まだ心の準備が……」


「いいわよね?」


「は、はい……」

 

 俺はミノリ(吸血鬼)の笑顔(威圧たっぷり)に敵わなかった。


「それじゃあ、今日は温泉を満喫するわよ!」


『おおー!!』


「お、おー」


 みんなは声を張り上げていたが、俺は弱々しく声を上げた。

 こうして、俺たちは八班に分かれて『別府八湯』ならぬ『ビッグボード国八湯』に行くこととなった。


 *


 その頃、ナオトの高校時代の同級生たち(十二人)とリル・アルテミスという黒髪ロングの美少女……いや美幼女はこれからナオトたちが向かう場所の付近で温泉を満喫していた。(露天風呂)


「ふむ、やはり温泉とはいいものだな」


 加藤式忍法の継承者『加藤かとう 真紀まき』はそう言った。(常に白い鎧で全身を覆っている)


「だよねー、温泉はいいよねー」


 黒沢式植物召喚術の使い手『黒沢くろさわ すばる』はそう言った。(男の娘)


「ああ、まったくだな」


 小宮式剣術の使い手『小宮こみや ひかり』はそう言った。(巫女)


「はいー、心も体も癒されますー」


 坂井式撲殺術の使い手『坂井さかい 陽代里ひより』はそう言った。(眼鏡を外さないと力を解放できない)


「あー、そうだなー」


 杉元式激槍術の使い手『杉元すぎもと 黒曜こくよう』はそう言った。(男勝り)


「しかし、こんなところでのんびりしていてもいいのでしょうか?」


 相馬式操馬術の使い手『相馬そうま 夏樹なつき』はそう言った。(馬の扱いが上手い)


「別に……いいと……思う……よ」


 高木式射撃術の使い手『高木たかぎ 弓子ゆみこ』はそう言った。(武器なら何でも使える)


『極楽、極楽ー』


 その場にいた女性陣はそう言った。


 *


 こちら男風呂。(露天風呂)


「あー、癒されるなー」


 月影式忍法の継承者『月影つきかげ 悠人ゆうと』はそう言った。(常に黒い鎧で全身を覆っている)


「ですねー」


 時坂式時間拘束術使い手『時坂ときさか 賢太郎けんたろう』はそう言った。(黒縁の眼鏡がトレードマーク)


「まあ、たまにはこういうのも悪くないかもな。というか、リルはこっちで大丈夫なのか?」


 布田式抹殺術の使い手『布田ぬのだ 政宗まさむね』はそう言った。(察しが良い)


「は、はい! 大丈夫です! でも、こんな立派な温泉に入れるなんて夢みたいです!」


『はじまりのまち』で布田に命を救われたことがきっかけで布田と共に行動すると決めた美少女……いや美幼女『リル・アルテミス』はそう言った。


「そうか、そうか。そんなに嬉しいか。まあ、今回はここまでついてきてくれたお礼だから、思う存分楽しめよ」


 布田がそう言うと、リルの顔が真っ赤になった。


「おい、リル。大丈夫か? もう出た方がいいんじゃないか?」


「だ、大丈夫です! まだいけます!」


「いや、別に勝負はしてないんだが……」


「私は大丈夫です!」


「そ、そうか……でも、無茶はするなよ?」


「はい!!」


 そんな二人のやり取りを見ていた悠人ゆうと賢太郎けんたろうはひそひそ話をしていた。


「なあ、お前はあの二人、どう思う?」


「どう……とは?」


「時坂……お前って、そういうところあるよな」


「そうですか? 僕はいたって普通ですよ?」


「まあ、それはいいとしてだな……。お前は、布田とリルのこと、どう思う?」


「そうですね……。僕には仲のいい兄妹のように見えますけど」


「まあ、それはそうなんだけどさ。もしも、二人が付き合ってたら、お前はどう思う?」


「それは別にいいと思いますよ」


「別にいいって、お前な……」


「血が繋がっているわけではないのですから、付き合ってもいいと僕は思いますけど、それがどうかしましたか?」


「あのな、リルはどう見てもまだ小学四年生くらいだろ? それに対して、布田は今年で二十八だ。これが何を意味するかわかるか?」


「そうですね……客観的に見ると、彼はロリコン認定されてもおかしくありませんね」


「そう、そこなんだよ。あいつのことだから、そういうことはないと思うけど、ちょっと心配なんだよ。だからさ、それとなくいてみてくれないか?」


「どうして僕がそんなことをしなければならないのですか? 自分でいてくださいよ」


「いや、俺、そういうの苦手だからさ、頼むよ、時坂」


「……仕方ないですね……。わかりました。それとなくいてみます」


「ありがとな、時坂。やっぱりこういう時だけは、お前が頼りになるよ」


「だけとは失礼な。僕はあらゆる状況に対応することができる臨機応変そのものであってですね……」


「あー、その話は後でゆっくり聞くから今は、俺の依頼の方を優先してくれ」


「わかりました。では、しばらくお待ちください」


「おう、頼んだぜ!」


 賢太郎けんたろうは布田とリルのところに、ゆっくり近づいていった。


「あのー、布田くん。少しよろしいですか?」


「おう、いいぞ。なんでもいてくれ」


「コホン……。では、単刀直入に言いますが、あなたとリルさんはどういう関係なのですか?」


 バ、バカ野郎! ストレートにそういうこと言うなよ! デリカシーとかないのかよ!

 悠人ゆうと賢太郎けんたろうの今の発言に対して、そう思った。


「え? 俺とリルの関係? まあ、一言で言うなら、兄妹だな」


「そうですか。では、リルさんのことを一人の女性としては見ていないということですね?」


 その時、リルは布田のことをじっと見つめ始めた。


「そうだな……。恋とか結婚とか俺にはよくわからないから、なんとも言えないな」


 その時、リルは少し悲しそうな顔をした。


「そうですか。では、質問を少し変えます。あなたはリルさんのことを兄妹として好きですか?」


「ああ、もちろん好きだ」


「では、その好きという感情の程度はどのくらいのものですか?」


「程度って、なんか物に例えればいいのか?」


「はい、そのとおりです」


「うーん、そうだな……」


 その時、リルは先ほどよりも布田のことをじっと見つめ始めた。


「まあ、あえて言うなら、空くらい好きだな」


「と言いますと?」


「空ってさ、どこまでが空かわからないだろ? だから、リルに対する俺の好きっていう気持ちは曖昧だけど、すごく広くて言葉では言い表わせないってことだ」


 それを聞いたリルは先ほどよりも顔が真っ赤になった。


「なるほど。あなたの気持ちはよくわかりました。では、僕はこれで……」


「ああ」


 賢太郎けんたろう悠人ゆうとのところに戻ると、布田が言った言葉を彼に伝え始めた。


「今のって、いったいなんだったんだろうな。なあ、リル。お前はどう思う?」


「ふぇっ!? わ、私ですか?」


「ああ、そうだ」


「そ、そうですね。何かのアンケートに使うのでは、ないのでしょうか?」


「そっか。そうかもしれないな」


「は、はい、あくまで私の想像ですが……」


「そうか……。けど、お前のことは絶対俺が守るから、お前はしっかり俺についてくるんだぞ」


「兄様……。はい! たとえ世界の果てでも、絶対についていきます!」


 そんな二人のやり取りを見ていた悠人ゆうと賢太郎けんたろうは、ほっと胸をなでおろした。

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