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〇〇は『護衛任務』をするそうです その8

 それから一時間後……。

 ビッグボード国にやってきたナオトたちは、アパートの二階の部屋から外へ出ると、みんなでその国の様子を見ていた。


「へえ……ここがビッグボード国のまちか……。人がたくさんいるな」


「貿易が盛んですから、たまに珍しいものも出回ったりするんですよ」


「なるほどな。もしかして、その中に『誕生石』とかもあったりするのか?」


「『誕生石』ですか。今のところ、そのようなものは出回っていませんが、それは何に使うものなのですか?」


「いや、こっちの話だから、気にしないでくれ」


「は……はあ、わかりました」


 ナオトとエリカ姫がそんな話をしているのを見て、ミノリ(吸血鬼)は少し嫌な気持ちになった……。


「うーん、でも、さすがに黒い鎧(こんなの)着てたら、まずいかな?」


「城下町には変わった格好の人がたくさんいますから、鎧を着ていても怪しまれることはないと思います」


「うーん、でも、俺って賞金首らしいから、少しくらい変装しないといけないよな……」


 ナオトとエリカ姫が話していると、ミノリ(吸血鬼)が二人の間に割って入った。


「どうやら、あたしの力が必要みたいね!」


「ミ、ミノリ。お前、何かいい方法でも思いついたのか?」


「思いついたも何も、この中で一番、ファッションセンスが高いのは、あたしなのよ? 変装させるくらいちょちょいのちょいよ!」


「そ、そうなのか? じ、じゃあ、お願いしていいか?」


 ミノリ(吸血鬼)は目を輝かせながら、嬉しそうにこう言った。


「よろしい。それじゃあ、こっちに来て! ほーら、早く早く!」


「あー、わかったよ。わかったから、そんなにはしゃぐなよ」


 ナオトはミノリ(吸血鬼)と共に部屋の中に入っていった。

 ____それから五分後……。


「ねえ、みんな。これ、どう思う?」


『……うーん』


 ミノリ(吸血鬼)が部屋から出てくると同時に、見た目が一変したナオトがみんなの前に姿を現した。


「え、えーっと……ダメだったら、言ってくれよ? 遠慮しなくていいから」


 ナオトは少し恥ずかしそうにそう言った。

 ちなみに、ナオトの今の服装はこうだ。

 四枚の黒い翼を隠すために赤色のマントを羽織り、先端がドリルになっているシッポは限界まで縮められており、ドリルの部分は真っ黒に染められている。(ドリルの色は元々、金色)


「なあ、みんな。何か言ってくれないか?」


 その時、その場にいる全員がこう言った。


『か……かっこいい……』


「ほ、本当か? 変じゃないか?」


 ナオトがみんなにそうくと、みんなは親指を立てて、応答した。


「ほらね! あたしにかかれば、このくらいちょちょいのちょいって、言ったでしょ?」


「ああ、そうだな、おかげで助かったよ。ありがとう」


「も、もうナオトったら、そんなに褒めても何も出ないわよー」


 ナオトに対して、デレデレになっているミノリ(吸血鬼)の顔を見たエリカ姫は少し嫌な気持ちになった。


「それじゃあ、そろそろ行くか。あっ、女の子(おまえら)は今回、留守番な」


『……え?』


「いやだって、この世界の人たちの中には、まだモンスターチルドレンを化け物扱いする人がいるわけだから、ここにいた方が安全だろ?」


「で、でも! あんたにもしものことがあったら、どうするのよ!」


「少し落ち着けよ、ミノリ。もしもの時に備えて名取なとりとブラストを連れて行くから、問題ないだろう?」


「た、確かに問題はない……けど、あんたはあたしたちが目を離すとすぐに無茶しようとするでしょう?」


「いざとなったら、ここに戻ってくるから、そんなに心配するなよ。な?」


「じ、じゃあ、ちょっと待ってて」


「ん? あ、ああ、わかった」


 ミノリ(吸血鬼)は自分の親指の先端を噛むと、自分の血液で『真紅の指輪』を作った。


「ナオト、これをあたしだと思って、指にめてくれる?」


「え、えーっと、それは絶対にしなくちゃいけないのか?」


 その時、ミノリ(吸血鬼)は少しだけ涙を浮かべた。


「あたしのお願い……聞いてくれないの?」


「わ、わかったよ。お前の言う通りにするから、泣かないでくれ」


「うん、わかった。それじゃあ、左手を出して」


「左手か。ミノリ、わかってるとは思うが……」


「あんたの言いたいことはわかってるから、ちょっとじっとしてて」


「あ、ああ、わかった」


 ミノリ(吸血鬼)はナオトの左手の中指に血液製の『真紅の指輪』をめた。


「これでよし。もう行っていいわよ」


「あ、ああ、ありがとな、ミノリ」


「いいから、早く行きなさいよ。お姫様を無事に送り届けないと、次の目的地に行けないんだから」


「ああ、そうだな。それじゃあ、行ってくる」


「ええ、いってらっしゃい」


 こうして、ナオトは名取なとり、ブラスト、エリカ姫、ついでに竜人リザードマンの『ドライ・チェイサー』と共に、ビッグボード国の城下町へ向かったのであった……。

 ナオトたちを見送った直後、部屋に入ろうとしていたミノリ(吸血鬼)をコユリ(本物の天使)が呼び止めた。


「待ちなさい、アホ吸血鬼。あの指輪はどういうつもりですか?」


 ミノリは彼女に背を向けたまま、こう言った。


「さあね。あたしにもよくわからないわ」


「私の予想が正しければ、あなたはあのお姫様に嫉妬していると思うのですが、どうですか?」


「どうって、そんなの出会った瞬間から殺したかったわよ。あの胸といい、態度といい、オーラといい、あたしをムカつかせる要素しかなかったわ」


「そうですか。では、あなたの作った指輪の効果について、教えてください」


「あー、あれね。あれは、保険よ」


「保険?」


「ええ、そうよ。ナオトがピンチになった時、あれはあたしの代わりに、ナオトの盾……いや、ほこになるように作ったわ」


「つまり、マスターの命を狙うものを容赦なく殺すように作られているということですね?」


「ええ、そうよ。今のあたしたちには、ナオトが必要不可欠だから、それくらいはしてもいいでしょ?」


「そうですか、わかりました」


 コユリはそう言うと部屋の中に入っていった。その直後、ミノリ(吸血鬼)はこうつぶやいた。


「ねえ、ナオト。もし、旅が終わったら、あんたは、あたしたちをどうするつもりなの……?」

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