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〇〇は『護衛任務』をするそうです その5

「なあ、ミノリ。これがお前の望みなのか?」


「ええ、そうよ。あたしの膝にあんたの頭を乗せて、頭を撫でる。これが一番、しっくりくるわ」


「そう……なのか? まあ、別にいいけど」


「……ねえ、ナオト」


「んー? なんだー?」


「あたしたちってさ、あんたにとって、お荷物になってたりしない?」


「えーっと、なんでそう思うんだ?」


「だ、だって、あんたが必死になって戦ってる時にそばにいるのは、あたしたちでしょ? だから……」


「別にそんなこと考えたこともないし、これからもきっと考えないよ。だって、誰かを守るのに理由なんて必要ないだろ?」


「それは……そうだけど……」


「お前はさ、深く考えすぎなんだよ。本当に十歳なのか?」


「し、失礼ね! たとえモンスターの力を宿していても、あたしは十歳の女の子よ!」


「ああ、はいはい、悪かったよ。ごめん、ごめん」


「もう……ナオトの意地悪」


「そうかな? 俺は別に……」


 その時、ミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)が彼に念話でこう伝えた。


「ご主人。悪い知らせがあるんだけど、いいかな?」


「……今度はなんだ? 人工衛星でも降ってくるのか?」


「それよりかはマシだけど、お姫様を探しにきた人たちがぞろぞろやってきたよ」


「そうか……わかった。すぐに向かう」


 俺はミノリ(吸血鬼)に事情を話すと、一人でそいつらのところに行くことにした。

 俺は巨大な亀型モンスターの甲羅の中心と合体しているアパートの二階から飛び立った。(一応、その亀型モンスターは不可視の結界を常時展開しているため誰かに見つかることはほとんどない)


「よいしょ……と。やあやあ、みなさん。何かお探しですか?」


 俺がそいつらの先頭に立っているやつの目の前に着地し、そう言うと先頭に立っている隊長らしき人物が俺にこう言った。


「ひとつこう! お前は『鎖の悪魔』なのか?」


 俺の異名が『漆黒の堕天使』に変わったことをこいつらに言っても信じてもらえないだろうな……。


「だとしたら、どうする?」


「質問に答えろ!」


 ここで別のことを言っても、なんの得にもならないよな。


「……ああ、そうだけど。それがどうかしたのか?」


「先ほど、ビッグボード国のプリンセス。『エリカ・スプリング』様から連絡があった。悪魔のような少年に脅されているから、助けてくれと」


 俺がここに来る前にお姫様が『ドライ』と何か話してたけど、もしかして、このことかな?


「へえ、そうかい。もしそれが本当だとしたら、あんたたちは俺をどうするつもりなんだ?」


「無論、この場で倒させてもらう!」


 隊長らしき人物がそう言うと、他のやつらが武器を構えた。あー、面倒なことになってきたな……。


「あー、わかったよ。俺が全部悪いんだろう? だったら、早く捕まえるなり、切り刻むなりすればいいだろう?」


「いや、お前は賞金首だからな。悪いが、ここで倒させてもらう!」


 隊長らしき人物は腰にぶら下げているサーベルを抜くと。


「俺に続けー!!」


 そう言いながら、俺にサーベルの切っ先を向けて襲いかかってきた。

 うーん、ミサキの情報だと、十万人くらいだって言ってたけど、俺一人で倒せるかな?

 まあ、チマチマやるか……。


「とりあえず……飛びまーす!」


 俺は四枚の黒い翼を羽ばたかせると、そいつらの攻撃が当たらないところまで飛び、静止した。


「さてさて、どうしたものかな?」


 その時、ミサキが念話でこんなことを伝えてきた。


「ねえ、ご主人。『超圧縮魔力砲』を試してみない?」


「え? なにそれ。めちゃくちゃ強そうじゃないか。でも、それを使ったら、この辺、全部吹き飛ぶんじゃないか?」


「あー、それは大丈夫だよ。ちゃんと調節するから」


「うーん、でも発射するまでに時間がかかるんだろ?」


「まあ、多少はね。でも、十万人と普通に戦うより早く終わるよ」


「それはそうだが……って、あいつらの中に風魔法が使えるやつがいるみたいだな。まあ、準備だけはしておいてくれ」


「うん、わかった。気をつけてね」


「ああ……。それじゃあ、やりますか!」


 ミサキとの念話が終わると、俺は十万人の相手をすることにした。


「俺は今、天使型モンスターチルドレンのミカンと合体しているわけだから、もしかしたら、ミカンの力が使えるかもしれないな」


 俺は十万人の敵の一人が振り下ろしてきた鉄製の剣を片手で受け止めながら、そんなことを呟いた。


「ああん? 戦いの最中に何言ってやがる」


「いや、ちょっと確認してただけだ」


「ふん、そうかよ。けど、戦いに集中してねえと、案外、あっさりやられるんだぜ!」


「もらったー!」


 俺は俺の背後から現れた新手を先端がドリルになっているシッポで脇腹をビンタすると、片手で受け止めていた剣を握力で砕いた。

 その後、それの持ち主の顔面を殴った。


「それじゃあ、試してみるかな。行け! 俺の分身たち!!」


 俺は四枚の黒い翼を広げると、羽をマシンガンのように発射した。

 すると、それらが俺になり、敵を倒し始めた。

 なるほど。こうすれば、俺がどれかわからないし、俺を無限に増やせるわけか。便利だな……。


「うーん、ついでに何か作れるか試してみるか」


 俺は今『黒影を操る狼(ダークウルフ)』の鎧を着ているわけだから黒い影で武器とか作れるんじゃないかな?

 そう考えた俺は、一番強そうな武器は何か思い浮かべた。

 剣、レイピア、かたなやり薙刀なぎなた手甲てっこう、ダガー、ハンマー、かま、単発銃、機関銃マシンガン散弾銃ショットガン狙撃銃スナイパーライフル、ランチャー、バズーカ、盾、武器腕。


「うーん、防御もできて、攻撃もできるような武器はないかな……」


 戦いながら、そんなことを言った直後、俺は今の自分が何かに似ていることに気づいた。

 あれ? 今の俺って、ガ○ダム・バ○バトスのあの形態に似てねえか?


「よし、それじゃあ、やってみるか!」


 俺と俺の分身たちは攻撃をやめると、右手を天に掲げた。


『……今こそ、全てをねじ伏せる大いなる力となりて、その姿を見せよ!』


 ナオトたちは少し間を置くと、それを黒い影で作った。


『これが俺の……いや、俺たちのシンボルだ!』


 そして、それを手にしたナオトたちは全員でこう言った。


象徴武器(シンボルウェポン)! 超大型の鈍器(ギガント・メイス)!!』


 一見、黒い槍のような形状をしたそれの頭部にはスピノサウルスののようなものが四つ付いており、中心には魚の『ダツ』のようにとがった黒い棒のようなものが収納されていた。

 つまり、出縁型超巨大戦棍(フランジバトルメイス)である。


『さあて……それじゃあ、始めようか!』


 ナオトたちはそれで敵の攻撃を防御したり、隙あらばそれで殴るように攻撃していた。

 それの圧倒的な質量と破壊力は剣や槍とは違って、敵を叩き潰すためだけに特化した恐ろしい武器であった。

 四枚の黒い翼を羽ばたかせて、一気に敵に近づき、それをブンと振り下ろす。

 この時、背中がガラ空きになるが、心配ご無用。

 先端がドリルになっているシッポで背後の敵を追尾するかのように攻撃できるため、ほぼ死角はない。

 ちなみに、全身を覆っている黒い鎧は薄いようで固く軽いため、ナオトの体に負担がかからないものとなっている……。

 その様子をミノリ(吸血鬼)の『全知全能の水晶パーフェクト・クリスタル』で、アパートにいるみんなは見ていた……。


「やつはまだ本気を出していなかったのか!」


「なるほど……『漆黒の堕天使』の名は伊達だてではないということですね!」


 竜人リザードマンのドライとエリカ姫は、彼の戦いぶりに恐怖すら感じていた。

 しかし、分身が分身を生み出し、さらにその分身が分身を生み出すという戦い方には感心していた。

 無限に増え続けるナオトたちが十万人を倒すのに時間はあまりかからなかった……。


「あーあ、ミサキの『超圧縮魔力砲』がどんなものか見たかったけど、試し撃ちもしてない兵器を使わずに済んだから、今回はこれでよかったかもな」


 ナオトが地面に着地すると、ナオトの分身たちは元の羽になり、ナオトの四枚の黒い翼に戻っていった。

 その時、地面に這いつくばっている隊長らしき男が彼を睨みつけながら、こう言った。


「あ……悪魔め……。お前なんか人じゃない……。俺たち人間を滅ぼしに地獄の底からやってきた厄災やくさいそのものだ!」


「身長『百三十センチ』のガキに負けたってことを認めたくないからって、その言い方は良くねえな。それと、俺は誰一人として殺してないから、間違っても俺を人殺し呼ばわりするんじゃねえぞ?」


 ナオトは彼に顔を近づけると、黄緑色の瞳を光らせながら、こう言った。


「話は変わるが、俺は天使と悪魔の力を使える、いわゆる『堕天使だてんし』だ。だからよ、俺を倒したい連中にこう伝えてくれ。『漆黒の堕天使』を怒らせるな……ってな」


 ナオトはそう言うと、その場から飛び去り、アパートに帰っていった。


「何なんだよ……何なんだよ、お前はああああああああああああああ!!」


 隊長らしき男『リボル・ヴィダール』はどこまでも続く草原にその叫び声を響かせると、同時に『漆黒の堕天使』を必ず倒すと心に誓った……。


 *


 ナオトがアパートに帰ると『ドライ』とエリカ姫が玄関で土下座をしていた。

 なんだか面倒くさかったため、スルーしようとすると足元にすがってきた。

 どうやら、先ほどのナオトの戦いぶりを見たことで改心したらしい。

 そいつらが戦闘バカなのか、単純なのかはよくわからなかったが、敵にしたくないと思っているのは事実であったため、二人が望むことをしてやることにした。


 *


 ____その頃。ビッグボードという国の城内にいた、エリカ姫の補佐役である『ハイド・シューティングスター』のところに、十万の兵が『鎖の悪魔』……ではなく『漆黒の堕天使』によって倒されたという知らせが届いた。


「『鎖の悪魔』……いや『漆黒の堕天使』め! よくも私の邪魔をしてくれたな! エリカ姫を無事に連れ戻したという手柄を私のものにすることで、私がこの国の王となる算段さんだんだったというのに……!」


 その時、彼は閃いた。


「いや、よくよく考えれば、これはチャンスだ。私が『漆黒の堕天使』を倒せば、わざわざ姫を連れ戻さなくても、その首一つで、私はこの国の王になれる!」


 黒い長髪を白いひもで縛ってポニーテールにしている黒い瞳の男は不気味な笑みを浮かべながら、高笑いを始めた……。

 その笑い声は城中に響き渡っていたらしいが、昼寝中の国王と王女はそれに気づかず、スヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた……。

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