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〇〇は『護衛任務』をするそうです その3

「ただいまー。まあ、事情は知ってると思うから言わないけど、しばらくお姫様と竜人こいつをここでかくまうことにするから、そのつもりでなー」


 家に帰ってきたナオトのその言葉を聞いたみんなは親指を立てた。

 それを見たナオトは、二人をここでかくまっても大丈夫だということを理解した。


「それじゃあ、ドライはみんなに自己紹介でもしててくれ。俺はお姫様に事情を説明してくるから」


「あ、ああ、分かった。気をつけろよ」


「ああ」


 ナオトはそう言うと、お姫様をシッポでグルグル巻きにした状態でアパートの屋根に登った。


「さてと……それじゃあ、お姫様。突然で悪いけど、あんたはこの家にしばらく住んでもらうぞ」


 やっと我に返ったお姫様はいきなり彼を怒鳴った。


わたくしがそんな要求を受け入れるとでも思っているのなら大間違いです! 今すぐ私を解放しなさい! さもないと……!」


「殺す……か? 虫も殺したことなさそうなあんたにそんなことができるのか?」


「そ……それは……」


「あんたはここにいないと確実に殺される。それでもいいのか?」


「わ、私はビックボード国のプリンセスです! 自分の身は自分で守れます!」


「嘘つけ! さっきから震えてるじゃねえか!」


「こ、これは武者震いです!」


「へえ、そうかよ! じゃあ、ここで死んじまえ!」


 ナオトはお姫様を巻きつけていたシッポをほどくとお姫様の襟首を掴んで、思い切り投げ飛ばした。


「い……いやあああああああああああああああ!!」


 体長五百メートルの巨大な亀型モンスターの甲羅と合体しているアパートの屋根から落下し始めたお姫様は泣き叫んだ。


「いやだあああああああああああ!! まだ死にたくなあああああああああああああい!! 誰か! 誰か助けてええええええええええええええええええ!!」


 仰向けで落下する水色のドレスをまとった胸がCカップほどのお姫様は、助けを求めた。

 しかし、ここには家来やメイドなどいない。誰も助けになど来てくれない。

 それを理解したお姫様は泣き叫ぶのをやめて、とある人物に命令した。


「『鎖の悪魔』……いえ、『漆黒の堕天使』! 今すぐわたくしと契約をしなさい! 私を国に無事に送り届けてくれるのなら、私の初めてをあなたに差し上げても構いません! ですから、あなたは全力で私を守ってください!!」


 その直後、何者かが落下するお姫様をお姫様抱っこした。


「あんたの初めてなんていらねえよ。まあ、あんたの地位とかは利用させてもらうがな」


「それで構いません! さあ、早くわたくしを助けなさい!」


「はぁ……人使いの荒いお姫様だな。あんたは」


 ナオトは四枚の黒い翼を羽ばたかせると、アパートの屋根までお姫様を運んだ。

 お姫様を屋根の上まで運ぶと、彼女はナオトに右手を差し出してきた。


「えーっと、俺があんたを殺そうとしたやつだってことは分かってるよな?」


「ですが、あなたはわたくしを助けてくださいました。助けられたら、どんな者にでもお礼はちゃんと言う……それが私の流儀です」


「なるほどな。それじゃあ、遠慮なく」


 俺と『エリカ・スプリング』姫は握手をした。鎧ごしに伝わってくる熱は俺の身体中を駆け巡った。

 微笑みを浮かべながら、俺の顔を見ているお姫様の表情はとても穏やかなものだった。

 二人はゆっくり手を離すとなんとなく会話を始めた。


「そんじゃあ、お姫様。俺はこれからあんたをなんて呼べばいいんだ?」


「国に戻るまでとはいえ、一国のプリンセスが堕天使と契約してしまいましたからね、呼び捨てで結構です」


「そっか。じゃあ、エリカ。あんた、年はいくつだ?」


「女性にそういうことをく人は嫌われますよ?」


「いいから答えてくれ。ちなみに俺は今年で二十八だ」


「そ、そうなのですか? もっと若いのかと思っていました」


 このお姫様は俺が本物の堕天使だって、まだ思ってんのか? うーん、まあ、いいか。少しの間、ここでかくまうだけだし……。


「俺のことはいいんだよ。ほら、早く」


「あ、あなたは意外とせっかちなのですね……。わかりました。では、言いますから耳を貸してください」


「ん? あー、分かった」


 ナオトはエリカ姫の口元に自分の耳がくるように移動した。

 その直後、エリカ姫はナオトの耳元でこう囁いた。


わたくしは今年で……」


 なるほど、なるほど。つまり、このお姫様は権力争いに巻き込まれたわけか……。


「ねえ、堕天使さん」


「誰が堕天使だって?」


「い、いえ、わたくしがあなたを呼ぶときはどうすれば良いのかと思いまして」


「え? あー、そうだな。ナオトでいいよ」


「わかりました。では、ナオト。わたくしの剣として、また盾として私のために生きることを誓いなさい!」


「ほんの数日だけ護衛するだけなんだが……」


「いいから、誓いなさい!」


「はいはい、分かりましたよ。やればいいんでしょ、やれば」


「よろしい。では、こう言いなさい。『私は、あなた様の剣として、また盾としてあなた様の力となることを誓います』と」


 俺は一応、それっぽくするためにひざまずくと、エリカ姫の手を取った。

 そして、彼女が言った言葉を一言一句、間違わずに言ってみせた。


「私は、あなた様の剣として、また盾としてあなた様の力となることを誓います」


 黒い鎧を全身にまとっているせいで手の甲に『キス』をすることはできなかったが、代わりに彼女の手の甲に額を重ねた。


「よくできました。では、あなたに最初の命令を言い渡します」


「ははー。なんなりとお申し付けくださいませ」


 俺は彼女から少し離れると頭を下げてそう言った。すると、エリカ姫はこう言った。


「と、とりあえず……こここ、ここからわたくしをおおお、下ろしなさい! それが最初の命令よ!」


「承知しました」


 俺は彼女を再びお姫様抱っこすると、俺の部屋まで運び入れた。

 こんなやり取りが早く終わるようにしないといけないなぁ……と、ナオト(『第二形態』になった副作用でショタ化してしまった身長『百三十センチ』の主人公)は心の中で呟いた。

 まあ、あれだよな。このお姫様を無事に国まで送り届けられれば、俺たちの旅は再開できるし、報酬もたんまりもらえて一石二鳥……だよな。

 こうして、ナオトたちの『護衛任務』が始まったのであった。

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