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〇〇は『モンスターチルドレン育成所』に行くそうです その8

「もうー! 邪魔しないでよー!」


 魔法を使うゴブリン五体の火球を避けながら、ミノリは攻撃の隙がないか探っていたが、そんな隙など、どこにもなかった。しかし……。


「……ふん!」


「えーいっ!」


「それー!」


「くらうがいい!」


「おとなしくやられなさーい!!」


 それぞれが放ったエネルギー波が魔法を使うゴブリン五体の足元に命中。

 ここは草原だが、その下には地面があるため、砂埃が舞った。よって、目くらまし作戦大成功!


「な、なんであんたたちがここにいるのよ!」


「別に……助けたつもりは……ない」


「うーん、まあ、暇だったからねー」


「お姉様に褒めてもらいたいからです!」


「たくさんの敵と戦いたいからに決まってるでしょ?」


「久々に登場したから、存分に戦っておこうって思っただけよ! か、勘違いしないでよね!」


 シズク(左目を眼帯で隠している黒髪ロングのドッペルゲンガー)。

 ルル(白髪ロングの白魔女)。

 コハル(藍色髪ロングの藍色の湖の主。ミサキの妹)。

 キミコ(ハチミツ色の長い髪が特徴的なきつねの巫女)。

 カリン(金髪ツインテの聖獣王)。

 久々に登場した者もいるが、どうやらミノリに先に進んでほしいという気持ちは同じようだ。

 ミノリ(吸血鬼)は、「ふっ……」と笑うと。


「危なくなったら、逃げるのよ!」


 そう言って、ゴブリン王のところへと急いだ。


「じゃあ、そろそろ」


「始めよっかー」


「お姉様に褒めてもらうために!」


「お兄ちゃんのために!」


「お兄ちゃん? もしかして、ナオトのこと? なら、私もそうしようかしら!」


『マブリン共! 覚悟ー!!』


 ※魔法を使うゴブリンの略称。


 *


 ゴブリン王まで、あと数十メートルのところまでやってきたミノリ(吸血鬼)は『ゴブリン忍者』を相手にしていた。


「侍だけかと思ったけど、やっぱり忍者がいたのね」


 そいつはクナイ、まきびし、手裏剣などの道具を使いながら、日本刀で一気に畳み掛けてくる。

 本当にゴブリンなのだろうか? というか、この世界のゴブリンは知能が高い……。


「あっ! しまっ!!」


 ゴブリン忍者の動きについていくのが、やっとだったミノリ(吸血鬼)は自分の血液で作った【日本刀】をそいつの日本刀に弾かれ、落としてしまった。

 ミノリがずっと戦い続けてきたせいだろうが、一つのミスが死に直結するのが戦場である。

 ゴブリン忍者がミノリの首を自分の日本刀で斬ろうとした時……。


「お邪魔するよー!」


「ごめんなさい! 来ちゃいました!」


「まったく、面倒ですね!」


 ゴブリン忍者に攻撃を仕掛けてきたのは、ライカ(紫髪短めツインテ悪魔)。

 ライカを魔法で援護するメルク(灰色髪ショートのハーフエルフ。大人?)。

 なんとなくやってきて、その辺のザコを攻撃し始めたフィア(四大天使の遺伝子を持つナオトの守護天使。長い髪と天使の翼と目の色は赤、青、緑、黄の四色である)。

 その三人は、ミノリにゴブリンたちの攻撃が当たらないように戦っていた。


「あたしに先に行けってことなの? ……分かったわ。でも、無理はしないでね!」


 ミノリ(吸血鬼)は先ほど落とした血液製の日本刀を拾うと、ゴブリン王のところへと急いだ。


「さあて! 君の全力見せてもらおうか!」


「あまり挑発しちゃダメですよ!」


「無理そうだったら、私が倒しますよ?」


 ライカの瞳には迷いなどこれっぽっちもなく、ただ目の前の敵と戦いたいという気持ちがひしひしと伝わってきたため、フィアはザコ処理を再開することにした。


『覚悟はいいな? 小鬼ゴブリン共!!』


 *


「はぁ……はぁ……はぁ……ま、まさか……殺し屋までいるなんて……」


 ナイフ使いのゴブリン。やはり、この世界のゴブリンは知能が高いようだ。

 手先が器用でないと、ナイフでジャグリングなどできるはずがない。

 だがしかし……。こんなところで立ち止まってはいられない。ゴブリン王まで、あともう少しなのだから。

 ミノリ(吸血鬼)が少しよろめきながらも、日本刀を構えた、その時……。


「お前は……名取式剣術を……知っているか?」


「ねえ『殺し屋の中の殺し屋』って、知ってる?」


 いつのまにかミノリの両サイドに殺し屋二人が立っていた。

 名取なとり 一樹いつき。(名取式剣術の使い手で名刀【銀狼ぎんろう】の所持者。ナオトの高校時代の同級生。前髪で両目を隠しているのは人見知りだから。普段は途切れ途切れに話すが武器のことになると、よく話す。存在感が薄い)

 マリー、改め、ニイナ。(幼い頃からずっと殺しの技術を習得してきた幼女。肉体変形魔法とナイフを使って戦う。黒いローブでほぼ全身を隠しているのは、体を見られるのが恥ずかしいから。『例の大会』でのナオトの戦いぶりに惚れ、弟子入りを志願した。しかし、彼はニイナを家族として迎え入れた)


「あ、あんたたち! いつのまに仲良くなったの?」


「それは……内緒だ」


「まあ、そういうことだから」


「そ……そう。なら、あいつは頼んだわよ!」


「……ああ……任され……た」


「……さてと……それじゃあ……やろうか」


 ミノリ(吸血鬼)は、ナイフ使いのゴブリンを二人に任し、先に進むことにした。


「名取式剣術の使い手……名取 一樹」


「殺し屋の中の殺し屋……ニイナ」


『推して……参る!!』


 *


 ゴブリン王まで、あと数メートルのところまでやってきたミノリ(吸血鬼)。

 しかし、最後に立ちはだかったゴブリンは、もう脳筋としか言いようがないほどの筋肉バカゴブリンであった。


「なんか……いちいち、ポーズをとってるけど……ボディビルダーでもしてるのかしら?」


「どうやら俺の出番のようだな!」


「え?」


「ブラスト・アークランド! ただいま参上!!」


 ミノリの背後からジャンプ(?)でやってきて、うまく着地すると黒いタンクトップを脱ぎ、おのれの筋肉を見せつけるかのように、脳筋ゴブリンの前に立ちはだかったのはブラスト・アークランド。

 誤って一月の誕生石である『ガーネット』をその身に宿した斧使い。

 かなりの大男で『ケンカ戦国チャンピオンシップ』にナオトと共に参加した実力者である。


「あ、あんた……なにを争ってるの? というか、ザコ処理は済んだの?」


「ああ! ザコなら、俺があらかた片付けた! ここは俺に任せて、先に行け!!」


「え、あ、うん、わかった。じ、じゃあ、頑張ってね」


「ああ!!」


 ミノリ(吸血鬼)は男同士の戦いというのをあまり理解できなかったが、とにかくゴブリン王のところへと急いだ。


「さあ! 存分にやり合おうではないか! なあ? マスリンよ!!」


 ※筋肉マッスルとゴブリンを合わせた名称。


 *


 とうとうゴブリン王の目の前にやってきた、ミノリ(吸血鬼)は刀の切っ先をゴブリン王の顔に向けながら、こう言った。


「覚悟しなさい! ゴブリン王!! あんたなんて、三秒であの世に送ってあげるわ!」


 玉座からゆっくりと立ち上がったゴブリン王は床に置いてあったケリュケイオンのような巨大な杖を持つと、こう言った。


「武器を捨てろ、幼き吸血鬼よ!」


「ふん! 誰がそんなこと……!」


 ミノリ(吸血鬼)はおのれの意思とは関係なく、血液製の日本刀のの部分から手を離してしまった。


「こ、これは……ま、まさか……あたしと同じ力なの?」


「我が戦友たちが受けた屈辱を貴様にも、味わわせてやろう……とりあえずひざまずけ!!」


「く……くそ……! こんなことしたくないのに……どうして!」


 ミノリ(吸血鬼)が杖の力に抗いながらも、ゴブリン王の前でひざまずくと、ゴブリン王は杖の説明をした。


「この杖は、目の前にいる対象にしか効果を発揮できないが、この杖から発せられる波動はあらゆる生命体の神経を掌握し、杖の所持者の言うことを聞かなくてはならなくなるのだ」


「あー、そう……。だからどうしたって言うの? あたしの体を自由にできても、心までは自由にできないわよ」


「そうか……なら、この小娘がどうなってもいいのだな?」


「ひ、雲雀ひばり! どうしてそんなところに! というか、あんた! 雲雀ひばりに何したのよ!」


 ※彼女は『四聖獣』の一体『朱雀』である……。

 彼女はゴブリン王の杖の先端についている紫の宝玉の中から出現し、ゴブリン王の左手の上に移動させられた。


「今は気絶させているだけだが、お前の行動次第では殺すこともいとわない」


「……!! そ、それだけはやめて! その子は大切な家族なの!! お願い!!」


「ふむ……では、我の妻となれ」


「なっ……! こ、このロリコン! 変態! どうかしてるわ!」


「勘違いするな。我は威勢が良い娘が好みなだけだ。して、どうするのだ? この娘を犠牲にするのか、それともおのれを犠牲にするのか。早く選べ」


 あたしは将来、絶対にナオトと結婚したいし、こんなやつの奥さんになるなんて、死んでも嫌!

 だけど……ごめんね……ナオト……。あたし……家族を見捨てるなんてこと……できない……。


「わ、わかったわよ……あんたのお嫁さんになってあげるから! 雲雀ひばりを返しなさい!!」


「よかろう……では、早速……」


 その時、ものすごい勢いでゴブリン王の額に突っ込んできた者がいた……。


「そんなこと……俺が許すわけ……ねえだろうがああああああああああああああああああああああ!!!」


「がはああああああああああああああああああ!?」


 その者は黒い鎧を全身にまとい、背中から四枚の翼を生やし、尾骨から先端がドリルになっているシッポを生やし、黄緑色の瞳でゴブリン王を睨みつけた。

 彼の精神は二十代後半だが、体は『第二形態』になった副作用でショタ化してしまった。

 しかし、彼女らにとっては救世主である……。その者の名は……『本田ほんだ 直人なおと』。


「行っけー! ナオトおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 ミノリ(吸血鬼)は目尻に涙を溜めながら、そう叫んだ。さぁ……反撃開始と行こうか!!

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