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〇〇は『モンスターチルドレン育成所』に行くそうです その6

 四月十七日……。この日、ナオトたちは『蒲公英たんぽぽ色に染まりし花畑』でモンスターチルドレンを元の人間に戻せる薬の材料を探していたが、色々あって『アイ』という人物に『モンスターチルドレン育成所』に招待された。

 それから色々あって、ナオトとアイが本格的に殺し合いを始めようとしていたところへミノリ(吸血鬼)が止めに入った。

 しかし、ナオトはその時、勢いで天使型モンスターチルドレン製造番号(ナンバー) 四の『ミカン』と合体してしまったせいで、その時に装着した黒い鎧を外せなくなってしまった……。


「ナオト、できるだけ動かないでね?」


「できるだけ、優しくな」


「うん、わかった。せーの……ふんぬうううううううう!!」


「痛い! 痛い! 痛い! 痛い! 痛い! ミノリ! 一旦、やめてくれ! 頼むから!!」


「もう! 何なのよ! これ! 全然取れないじゃない!」


「だから言ったろ? 取れないって」


「うーん、何かいい方法はないの?」


 白い床と壁に囲まれた広い部屋でナオトとアイとミノリたちはとりあえずナオトの兜だけでも外せないか色々試していた。

 バターで滑りを良くしてもダメ。壊そうとすると、さらに硬くなるからダメ。レーザーカッターで切ろうとしても、その熱を吸収してしまうからダメ。今のところ、何をやっても外れそうになかった。

 その時、ふと『アイ』がこんなことを言った。


「これはもう……『あの方法』でしか外せないかもしれないわね」


『あの方法?』


 ミノリたちは同時にそう言った。(ナオトは色々試されたため、ぐったりしている)


「私も噂でしか聞いたことがないのだけれどね、まあ、わかりやすく言うと、鎧のたぐいは装着者と一心同体だから、装着者をリラックスさせることができれば、自然と鎧も外れる、というものよ」


 ミノリたちは考え始めた。ナオトをいかにしてリラックスさせるかを……。そして、ある答えに至った。それは……。


「ねえ、ナオト」


「んー? なんだー? ちょっと今は疲れてるから、なにもしてやれないぞー」


 大の字で横になっているナオトに対して、ミノリ(吸血鬼)はそうたずねてみたが、ナオトは疲れ切っていたため、そんな反応しか返ってこなかった。

 しかし、この程度で諦めるミノリではない。何がなんでもナオトをリラックスさせる。それが今のミノリたちにできる唯一のことなのだから!!


「ねえ、ナオト。あたしたちと一緒に探検しない?」


「探検ー?」


「そう、探検よ。ほら、ここはあたしたちモンスターチルドレンが誕生した場所だから、ナオトにもっとあたしたちのことを知ってもらいたいなー……なんて」


「……なるほどなぁ……たしかにゆっくり探検するのもいいかもしれないな」


「でしょ! でしょ! ナオトはこういうの好きだと思ったのよ! そうと決まれば、早速行きましょう!」


 ミノリ(吸血鬼)はナオトのそばへ行き、手を差し出した。

 ナオトは一瞬、躊躇ったがギュッ! とその手をつかむと、スッと立ち上がった。


「ごめんな、ミノリ。俺が無茶したせいで、お前に気を使わせちまって」


 ミノリは首を振ると。


「ううん、そんなことないわ。ナオトはあたしたちとの旅を終わらせたくなかったから、必死で戦ってくれたのよね? だから、謝る必要なんてな……」


 その時、ナオト(『第二形態』になった副作用でショタ化してしまった身長『百三十センチ』の主人公)はミノリ(吸血鬼)をギュッ! と抱きしめた。


「ど、どうしたの? ナオト? あたしなんか変なこと言った?」


「いや、そうじゃない。まあ、あれだ。なんか急にお前の体温を感じたくなっちまったんだ。すまない」


 ナオトの体が微かに震えていることに気づいたミノリ(吸血鬼)は、微笑みを浮かべながら。


「別にいいわよ、このくらい。まあ、あたしの体温を感じたいなんて言い出すとは、さすがに予想してなかったけどね」


 母親のようにギュッ! とナオトを抱きしめ返した。


「うるせえ……今、俺の体は正直になってるんだから、しょうがないだろ?」


「ふふふ……そうね、それは大変ね。なら、あたしだけじゃなくて、他のみんなにも抱きしめてもらったらいいんじゃないの?」


「そう……だな。その方がいいかもしれないな。なんか、お前の前だと俺……すごく弱気になっちまうけど、まあ別に悪くはない……かな」


「はいはい、それじゃあ、みんなにも抱きしめてもらったら出発するわよ」


「ああ、分かった。ありがとな、ミノリ」


「うん、どういたしまして」


 その後、ナオトは他のみんなにも抱きしめてもらった。ナオトの気が済むまで、ゆっくりと体温を感じながら。

 そんなナオトは最後に『アイ』のところへ行った。


「あら、ナオト。私に何か用?」


 アイはナオトに自分の記憶だけを一時的に忘れさせた張本人でもあり、彼の高校時代の担任でもある。

 宇宙が生まれる前から存在している人の形をした何かであるが、彼女は彼に……ナオトに恋をしている。

 自分がいつまでも幼女であることをナオトに知られたくないからなのか、未だに自分の記憶を忘れさせたままである。

 しかし、今こうして、自分の体温を感じたいがために少し照れながらやってきたナオトを目の前にしたアイの心の中は、お祭り騒ぎであった。


「え、えーっと……その……なんというか」


 可愛い……可愛すぎる。あー、今すぐにでも、私のものにしたい……だけど、そんなことをしたら、私はナオトの記憶を元に戻さなくちゃいけなくなる。

 でも、ナオトがほしい。鎧を纏った姿のままでもいいから、今すぐにでも結婚したい。そして、自分色に染めてあげたい……。

 けど、今はナオトが私に抱きしめてほしいとお願いしに来たのだから、我慢……我慢……。


「あー……えーっと、だな。その……お、俺、ちょっと体が冷えてるから、その……ギュッて、抱きしめてくれないか?」


 その恥ずかしがる姿……脳内メモリに保存。高画質でいつでも観れるように加工!

 はぁ……はぁ……ナオトを抱きしめるだけなのに、こんなに胸が高鳴るなんて……ずるいわよ、ナオト。


「え、ええ、いいわよ。ほら、私の胸に飛び込んでおいでー」


 その時のアイの笑顔を見たナオトには、目の前に自分の母親がいるかのように見えてしまった。

 そのため、こう言いながら『アイ』に抱きついた。


「お、お母さあああああああああああああん!! 怖かったよおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 兜で表情が見えないのが残念だったが、アイはナオトをギュッ! と抱きしめると、微笑みを浮かべながら頭を撫で始めた。


「よーしよし。よく頑張ったわね。えらいえらい。よーしよし」


「お母さん! ……お母さん! ……うわあああああああああああああああああん!!」


 説明しよう。ナオトはストレスを感じすぎると心が幼児くらいまでになって、泣き出してしまうのだ。

 元に戻すには、ナオトの母親と同じくらいの体型をしている人とハグさせなければならない。

 つまり、ナオトの母親は貧乳なのである! というか、水平線なのである!!

 ____しばらく経つと、ナオトはアイの膝枕でスヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。まるで、本当の母親に身を委ねているかのように……。

 優しく頭を撫でながら、微笑み、本当の我が子のように、ちょこんと正座をしているアイの姿は、とてもレアであった……。

 ____しかし、そんな時間はそう長くは続かなかった。急に警報が鳴り響いたからだ。

 それが鳴る直前に、アイはナオトの聴覚を魔法で封じていた。ナオトを起こさせないためだ。

 アイは、その場にいた十人のモンスターチルドレンとその他の存在たち(エージェンツ)にアイコンタクトをした。


「地下にある、この育成所では、世界を揺るがすほどの秘密の研究がいくつも行われているけど、その情報は私の分身たちが責任を持って管理しているから、外に漏れることはないわ。だけど、残念ながら、外部には頼りになる防衛システムがないの。あるのは、警備用ゴーレムくらいね。だから、お願い……ここを絶対に守り抜いて!!」


 ミノリたちは、ニシッ! と笑うと、親指を立てた。


「ええ、任せておきなさい! あたしが……あたしたちが絶対にここを守ってみせるわ!!」


 ミノリ(吸血鬼)はアイの目を見ながら、そう言った。彼女のその瞳に迷いなど微塵も感じられなかった。


「ナオトがこんな状況だから、あなたが指揮をとりなさいよ、ミノリ」


「分かってますよ、先生! あたしに任せてください!!」


「そう……なら、早く行きなさい。敵はここを嗅ぎつけるほどの実力の持ち主だと思うから、気をつけなさい」


「はい! 忠告ありがとうございます! では!」


 ミノリはそう言うとみんなを連れて、育成所の外へと向かった……。

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