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〇〇は『蒲公英色に染まりし花畑』に行くそうです その13

 その頃、何も知らない『小鬼ゴブリン』たちは今年も花畑を燃やし尽くしてやろうと、総勢一万匹で花畑の直前までやってきた。

 だが、今年の花畑には人が一人もいなかった。それに何か殺意のようなものを感じた。

 異変に気付いた『小鬼ゴブリンの隊長』が『目が良くなる木の実』を食べた。(ヨクナール・アイという白い木の実)

 その直後、彼が目にしたのは一列に並んだ吸血鬼などのモンスターとそれを従えているであろう小さなリーダーの姿であった。

 そのリーダーは人差し指で、かかってこいというサインを出した。

 小鬼ゴブリンにだって誇りがある。だから、自分たちを侮辱した者は必ず殺す。

 小鬼ゴブリンたちは隊長の指示を待っていた。いつ指令が下されてもいいように。

 彼らは隊長が人差し指で正面を指差したため、雄叫びをあげながら前進し始めた。


「さあて、そんじゃあ、行くぞ! みんな!!」


『おおー!!』


 ナオトの掛け声で十一人のモンスターチルドレンとその他の存在たち(エージェンツ)も前進し始めた。


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』


 ____三十分後。小鬼ゴブリンたちは負けた。

 ただし、誰一人として死んではいなかった。

 彼らは赤い瞳と白い髪と背中から生えた十本の銀の鎖が特徴的な『悪魔』の姿を見た。(ナオトのこと)


「おい、お前ら。花畑を燃やしても次の年には再生してる理由が知りたいか? って、俺の言ってることが分かるかどうか怪しいな。うーん、まあ、意味くらいは通じるだろ。コホン、えーっとだな。ここには女王がいる。毎年、お前たちがこの辺り一帯を焼け野原にした後、その度に再生してるのが、そいつだ。ということで、これに懲りたら、もう二度とここに来るな。さもないと……小鬼ゴブリンという種族、そのものを滅ぼさなきゃならなくなるからな……以上だ、分かったら、大人しく住処に帰れ!!」


 こういう時、『ゴ◯リンスレイヤー』なら……いや、やめよう。敵にだって家族がいるんだから……。


『………………』


 小鬼ゴブリンたちは完全に戦意を喪失していた。

 というか、ナオトが話している時には、もうすでに泡を吹いていた。

 彼らは負けたことよりも、勝てるはずがない勝負を挑んでしまった自分たちがあまりにも愚かだったということを考えながら、トボトボと帰っていった……。


 *


『イエローズ』のところへ行ったナオトたちがそのことを彼女に話すと、彼女は大声で笑った。

 その後、何度も何度もナオトたちに礼を言った。


「なあ、ローズ」


「なんだ? ナオト」


「お前はここから動けないのか?」


「……それは何度も試みたが、どうにもそれらしい方法が見つからなくてな……」


「そう、なのか……。じゃあ、人型にはなれないのか?」


「人型だと?」


「ああ、そうだ。俺のいた世界ではなんでもかんでも擬人化しようとする傾向があったから……って、そんなのもうとっくに試してるよな。悪い、今のは忘れてくれ」


「そうか! その手があったか!!」


「……え? えーっと、もしかして試してなかったのか?」


「ああ、その通りだ。どうして今まで気がつかなかったのだろうな。もう! 私のバカ!!」


「自分をあんまり責めるなよ……。えーっと、それじゃあ、試してみるか?」


「うーむ、とは言ってもモデルがいなければ、さすがに難しいぞ?」


「そういうものなのか?」


「こういうのはイメージが大事だからな」


「そうか……。なら、俺をイメージしてみるか?」


「なに? お前をか?」


「ああ、そうだ。今の俺は見た目だけなら小学生くらいだから、イメージしやすいと思うぞ」


「……よし、分かった。とりあえずお前をイメージしてみよう」


「おう! いつでもいいぞ!!」


「では、早速……」


 その直後、彼女は何も言わなくなったが、そんなに時間が経たないうちに彼女を金色の光が包み込んだ。


「きれいな光だなー……」


 俺がのんきにそんなことを言っていると、いつのまにか『イエローズ』の姿がなかった。

 だが、その代わりに彼女の声だけが聞こえた。


「どうだ? ナオト。私はうまく人型になれたか?」


 ナオトは辺りを見渡したが、声の主はどこにもいなかった。


「どこを見ているんだ? 私はここだぞ」


「その声……まさか『ローズ』なのか? いったいどこにいるんだ?」


 ナオトはキョロキョロと辺りを見渡したが、彼女の姿はどこにもなかった。


「いい加減に出てきてくれよ! お前はいったいどこにいるんだ!?」


 その直後、彼は後ろから誰かに抱きしめられた。その者の腕の肌は彼と同じ色だったが、その感触は妙に柔らかかった。

 背中に当たるその者の体の一部から分かったことは服を着ていないということだった。

 だから、彼は振り向こうにも振り向けなかった。

 彼は風になびく金色の長髪を横目で見ながら、少し緊張気味でこう言った。


「お、おめでとう、『ローズ』。無事に人型になれたみたいだな」


「ああ、そのようだな」


「えーっと、とりあえず離れてくれないか? このままだと、ちょっと危ないから」


「んー? 何が危ないんだ?」


「いや、だから、その……お前、服着てないんだろ?」


「まあ、そうだが、それがどうかしたのか?」


「いや、だから、服を着てほしいってことだよ」


「なぜだ? 人は一糸(まと)わぬものなのだろう?」


「いつの時代の人間だよ……。というか、俺たちをよく見ろよ。みんな服を着てるだろう?」


「うーむ、たしかにそうだな」


「だろ? だから早く服を着てくれ」


「服……か。なあ、お前の服を真似まねてもいいか?」


「あー、もう! なんでもいいから、早く服を着てくれよおおおおおおお!!」

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