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〇〇は『蒲公英色に染まりし花畑』に行くそうです その6

 俺が部屋に戻ると、みんなは晩ごはんの準備をしていた。

 しかし、そんな中、トコトコとこちらに歩いてくる者がいた。それは……。


「ご主人、ちょっとその子と話がしたいんだけどいいかな?」


 巨大な亀型モンスターの本体である『ミサキ』だった。


「その子じゃなくて、ヒバリだ」


「そっか……。ヒバリか」


「ん? なんだ? 名前の由来が知りたいのか?」


「いや、なんでもないよ。ほら、ヒバリ。こっちにおいで」


 ミサキがヒバリに手を差し伸べると、ヒバリは一瞬で俺の背後に隠れた。


「えーっと、俺も行った方がよさそうだな……」


「やれやれ、同じ『四聖獣』なのに、こうも気弱だといざという時に役に立たないよ」


「ミサキ、それは言いすぎだぞ」


「……冗談だよ」


「冗談でも言って良いことと悪いことがあるだろ?」


「……ご、ごめんよ、ご主人。わざとじゃないんだ」


「そうか。けど、それはヒバリに言うべきだと思うぞ?」


「わ、分かってるよ」


 ミサキはヒバリに頭を下げながら。


「ヒバリ。そ、その……ごめんなさい」


 その直後、ヒバリはトコトコとミサキのところへ歩いて行くと、ミサキを優しく抱きしめた。


「え、えーっと、これはいったい……」


「よかったな、ミサキ。これからよろしくだってさ」


「そうなのかい? え、えーっと、こちらこそよろしく」


「うん、よろしくね。ミサキちゃん♪」


 こうして、ミサキとヒバリは仲良くなった。そのため、俺はヒバリに付き添わなくてよくなったのである。

『四聖獣』同士だから、面識があるのかと思ったけど、二人とも初対面みたいだな。

 何もすることがなくなった俺はミノリたちがやってくれていた晩ごはんの準備を手伝うことにした……。


 *


『いただきまーす!』


 四月十六日。午後五時四十五分。晩ごはん……って早いな。

 俺たちは結構大きめのちゃぶ台の周りに座って、晩ごはんを食べ始めた。(白ごはんと唐揚げと味噌汁とミックスサラダと『ライチーター』の体から取ったライチのジュース)


「なあ、ミサキ。さっき、ヒバリと何を話してたんだ?」


「んー? あー、それはねー」


「ミサキちゃん! それは言っちゃダメ!!」


「ヒバリ、これはご主人に伝えておかないといけないことだから、仕方ないんだよ」


「そ、そんな……」


「えっと、なんかヒバリが嫌がってるけど、俺に話してもいいのか?」


「うん、大丈夫だよ」


「本当か?」


「僕が信じられないかい?」


「そ、そんなことはないけど……」


「なら、問題ないよね?」


「あ、ああ」


「それじゃあ、これからのことについて話すね」


「これからのこと?」


「うん、そうだよ」


「それはもしかして、この世界でいうところの四国地方に行くための許可をヒバリからもらったから、明日からそこへ向かうぞー! って、ことか?」


「……察しのいいご主人も好きだけど、今回は言わないでほしかったな……」


「す、すまん。つい……」


「ううん、別にいいよ。それにもう一つは、ヒバリが自分で伝えたいって言ってたからね」


「ん? そうなのか? ヒバリ」


「ふえっ!? い、いや、それは……う、うん、そうだよ」


「ヒバリ、なんか顔赤いぞ? 大丈夫か?」


「だ、大丈夫! 大丈夫だから、私の話をちゃんと聞いて!!」


「おう、いいぞ。なんでも言ってくれ」


「そ、それじゃあ、言うね」


 その直後、ヒバリはいきなり俺をギュッ! と抱きしめた。そして……。


「ナオト!」


「なんだ?」


「私と契約して、私のご主人様になってください! お願いします!!」


 ヒバリの体温が伝わってこないのが残念だったが、俺は優しくヒバリを抱きしめると、こう答えた。


「そんなのもちろんいいに決まってるだろう?」


 ヒバリはナオトの顔を見ると。


「ほ、本当?」


「ああ、本当だ」


「本当にいいの?」


「ああ」


「私と契約したら、私と毎日チュッチュしないといけなくなるよ?」


「ああ……って、今なんて言った?」


 ヒバリのその発言が皆の箸を止めた。


「えっと、私と契約したら、私の体内から放出される熱がナオトにも伝わっちゃうから、私とス、スキンシップ……とかをしないと、ナオトは焼け死んじゃうから」


「……それって、本当……なのか?」


「……うん」


「なんとかして、そうならないようにできないのか?」


「……一つだけ、方法があるよ」


「本当か!」


「う、うん、でも……」


「でも?」


「ナ、ナオトの肉が必要に……なる」


「俺の肉? どこでもいいのか?」


「えーっと、し、心臓がひつよ……」


「あんた、さっきから何言ってんの?」


 ヒバリが最後まで言い終わる前にミノリ(吸血鬼)が居ても立ってもいられなくなって、話に割り込んできた。(その後、こちらに歩いてきて、俺の膝の上に腕を組んで座った……なんでだ?)


「あんたはただ、ナオトの心臓を食べたいだけなんでしょ?」


「ち、違うよ!」


「へえ、そう。それじゃあ、あんたの本当の目的を教えなさいよ」


「ミノリ、それはいったいどういう……」


「ナオトは黙ってて」


「は、はい」


 ミノリ(吸血鬼)は溜め息をくと。


「……それで? あんたはここに何をしに来たの?」


「そ、それは……その……」


「言わないとどうなるか、今すぐ教えてあげてもいいのよ?」


「……ご、ごめんなさい」


「え? 何? 何か言った?」


「ごめんなさい! 私にはもう他のご主人様がいるから、ナオトとは契約できないの!」


「……だそうよ、ナオト」


「え、えーっと、それでお前は俺に何をしてほしいんだ?」


「私のご主人様を……殺してほしいの!」


「……え?」


「私の今のご主人様はうざいし、キモいし、変態なの!」


「えーっと、ウ○メイドかな?」


「違う! あれよりひどい!!」


「そ、そうなのか?」


「もうあんなご主人様なんて、いらない! 殺して!」


「……えーっと、とりあえずそいつに合わせてくれないか? 殺すのはそれからでもいいだろう?」


「う、うん」


「よし、決まりだな。それで? そいつは今、どこにいるんだ?」


「……私の外装の中で寝てる」


「さっきのでっかい方のヒバリか。よし、分かった。それじゃあ、晩ごはんを食べ終わってからでいいか?」


「うん、いいよ」


「よし、それじゃあ、さっさと食べて、そいつのところに行くとするか」


「あ、ありがとう。私なんかのために……」


「家族は助け合って生きていくものなんだから、そんなに気にするな。それと自分をもっと誇りに思え。お前はあの『朱雀すざく』なんだからよ」


「うん、分かった。ありがとう、ナオト」


「どういたしまして。よし、それじゃあ、食べますか!」


 こうして、ヒバリのマスターがどんなやつか確かめるために、俺は晩ごはんをなるべく早く食べることにしたのであった……。

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