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○○は仲間を集めるそうです その12

 俺は今、目の前に座っている『天使型』の名前を何にするのかについて、手足を組み、目をつむった状態で考えている真っ最中だ。

 しかし、この部屋は今、ただならぬ殺気で満ちている。

 俺は、みんなが部屋の中に入ったのを確認すると四人に耳栓をして、俺とその子のやりとりが聞こえないようにした。

 それは四人が(特にミノリ)俺と話している間、その子に嫉妬心を抱かせないようにするためと、ツキネ(変身型スライム)の時と同様にみんなが()ねる可能性があったからだ。

 だから、念には念を入れて、目隠しをしてから座らせた。

 これだけやれば大丈夫だよな? と少し心配ではあったが、俺たちの邪魔をさせないようにした。

 しかし、どうやらそれは、うまくいっていないようだ。

 なぜなら、視覚と聴覚を封じているはずなのに、まるでこちらのやりとりを聞いているかのようだったからだ。

 それに気づいたのは、俺がその子に「どんな名前がいい?」などと()いている時だった。殺気のようなものが部屋中を覆い尽くせば、誰でもそれに気づく。

 その四人が今にも飛びかかってきそうで正直、怖かった。

 そのせいで俺の集中力は、かなり低下していた。

 ____とまあ、こんな感じで今に至る。

 俺はなんとかしてこの問題を解決したいが今、優先すべきことではないため、まずは、その子の名前を考えることにした。

 さて、名前か……。六人目(サナエはここにはいないが、忘れるんじゃないぞ)にもかかわらず俺はその事について真剣に取り組んでいた。

 今回もいい名前がすぐ浮かんでくると思ったが、そう上手うまくはいかない……。

 この子にぴったりの名前、この子にぴったりの名前とブツブツ言っていると、その子が。


「あのー、もしかして悩んでます?」


 こちらを少し心配した様子でそう言った。


「ま、まあな……。なんか今回は、なかなかいいのが思い浮かばないんだよ……」


 俺は目を開けて、頭をきながら、そう言った。どうやらこの子には、すべてお見通しのようだ。

 この子に出会った時は殺されかけたが、今はこうして俺を心配してくれている。

 それに比べて俺は言い訳をしているだけ……。これが切り替えの早さの違いというものなのかは分からないが、そういう面で俺はこの子に負けている。


「俺がお前にぴったりな名前を必ず考えるから、もう少しだけ待っててくれないか?」


 俺はいつの間にか、その子に向かってそう言っていた。その直後。


「はい。楽しみにしてます!」


 その子が放った天使クラスのスマイル(まあ、本物の天使だが……)に俺は一瞬ドキッとしてしまった。まったく、こういう顔ができるなら、最初からすればいいのに……と思った。

 さて、そろそろ『名付親(ネイマー)』としての本領を発揮させよう。その時、俺に変なスイッチが入ったが、俺は真剣に事に当たった。

 俺は手足を組み、目を閉じると、四人の威圧にも負けないくらい集中した。

 ____そして、ついにその子にぴったりな名前を思いついた。俺はゆっくりと目を開けると……。


「今からお前の名前は……」


 一旦、区切るとゴクリ、と五人分の生唾を飲み込む音が聞こえた。しかし俺はそれを気にせず続けた。


「お前の名前は今から『コユリ』だ」


 俺はその子に『コユリ』という名前をつけた。少女は……いや『コユリ』はこちらの目を見ながら。


「『コユリ』……ですか……。とてもいい名前ですね、気に入りました!」


 一言、感想を述べた。


「そうか、それは良かった」


「漢字はどう書くのですか?」


「えっと、小さな百合(ゆり)と書いてコユリだ」


 俺は近くに置いてあった紙に油性マジックで、それを書いてコユリに見せた。


「そうですか……ありがとうございます!」


「どういたしまして」


 さて、これでようやく長かった『仲間集め』が終わるわけだな。

 ここまで長かったけど、これで俺の役目は終わりだな……と俺がほっとしていると、さっきまで座っていたはずの四人が俺の背後に立っていた。

 俺が恐る恐る振り返ると、そこには嫉妬よりも怒りや殺意が感じられるオーラを放つ四人の姿があった。俺はそれを見た瞬間、終わった……と思った。

 俺はこの状況をなんとかできる方法がないか必死で考えた。

 もし仮にそれが浮かんでこなかった場合、俺は死を覚悟しなければならない。

 だが、不思議に思うことが一つあった。それは、四人がまるで俺たちの会話を全て聞いていたかのようだったからだ。

 もし、俺たちの会話を聞いていなければ、こんなことには、ならなかったはずだ。

 ならどうして? と俺は疑問を抱いたが、今はそれよりも目の前の状況をなんとかしようと考えた。俺は、わずか五秒たらずで。


「よ、よう! みんな! おとなしくしてたか?」


『四天王の怒りを抑制しよう作戦』を計画し、実行した……。


「ええ、おとなしくしてたわよ。あんたたちの会話をリアルタイムで聞きながら……だけどね?」


「た、楽しそうでしたね、ナオトさん……。私の時とは……大違いです」


「ナオ兄がお仕置きを受ける数が増えたよー」


「兄さん、こればっかりは……どうにもならないですよ」


 四天王の怒りは静まりそうもない。えーっと、あと俺にできることは……。

 俺が次の手を考えようとしたその時、部屋全体が白き光で照らされ、それと同時に四人の動きが止まった。


「……コユリ、これは……お前がやったのか?」


 俺の背後に立っているコユリに問うと、彼女はこう言った。


「はい、これが私の固有魔法『反闇の閃光(アンチダークネス)』です」


「……え、えーっと、その魔法の発動条件は?」


「半径三キロ圏内に、あなたがいることです」


「うーんと、解除方法は?」


「私がもういいだろうと思った時です」


「そっか……なら、もういいよ」


「え?」


「あとは俺がなんとかするから」


「本気ですか?」


「そうじゃなきゃ、そんな事、言わないよ」


「分かりました。でも保証はできませんよ?」


「完全に大丈夫とは言い切れないけど、それでもこれは俺の問題だ。だから、頼む」


「……分かりました。では、解除します」


 コユリは、そう言うと魔法を解除した。どうやらこの魔法は自分以外のモンスターチルドレンの時間を止められるもののようだ。

 なら、時間が再び進み出す前に俺がなんとかして四人の怒りを静める行為をすればいいってことだな!

 俺はそう考えると魔法が解けた瞬間、四人をまとめて、ギュッと抱きしめた。


『え!』


 四人はそんな声をあげたが、それでも俺は四人を離さなかった。


「コユリと話している時が楽しそうに見えたのは誤解だ。というか、俺はみんなのことが大好きなんだ! だから、これからもずっと仲良くしてくれ! ダメか?」


 すると、いつの間にか全員の顔が赤くなっていた。


「ま、まあ、そこまで言うなら、許してあげても……いいわよ?」


「ナ、ナオトさんがそう思っているのなら、私はそれで構いません……」


「え、えーっと、今回だけ、お仕置きは無しにしてあげてもいいよ……」


「ま、まあ、私は、最初からそのつもりでしたけどねー」


「……みんなありがとう。特に、コユリ」


「いえ、これくらいお安い御用です」


 こうして俺の誤解は解け、仲間もそろった。やれやれ、これでようやく旅に出ることができるな。


「じゃあ、みんなで世界を救うわよー!」


『おおー!!』


 ミノリ(吸血鬼)の掛け声に便乗びんじょうして、俺たちはそう言った。こうして俺たちの異世界での冒険が始まる(?)のであった……。

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