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〇〇は『ケンカ戦国チャンピオンシップ』を観に行くそうです その20

 ナオトは『オメガ・レジェンド』のところへ行くと彼の頬に『おうふくビンタ』をし始めた。


「ほらほら! さっさと起きろよ! おっさん!」


「う、うーん……痛みを感じるということは、私はまだ生きているのだな」


 ナオトは『おうふくビンタ』をやめると、彼を指差しながら怒鳴った。


「ああ、そうだ。あんたは生きている。けど、これから俺がぶっ飛ばす! だからさっさと立ち上がれ!」


「己《おのれ》の力を暴走させてしまうような輩《やから》に喝《かつ》を入れられるとは、私もまだまだだな」


『オメガ・レジェンド』はそう言いながら、立ち上がると彼の瞳をしっかりと見ながら、こう言った。


「少年よ、今度は正々堂々、戦おうではないか」


「ああ、そうだな。でも、今度はちゃんと『第三形態』の力を使いこなすから本気で戦わねえとマジで死ぬぞ!」


「そうか。では望み通り、本気で戦ってやろう。まあ、私の頭の中ではあの世で泣き叫ぶ君の姿が思い浮かんでいるがね」


「ふん! そんなことを言っていられるのも今のうちだぜ!」


 両者は、ほぼ同時に闘技場に上がると、己《おのれ》の内に宿る力を全て解放した。


『身体能力超強化・改《スーパーレインフォース》』!!」


「『大罪の力を封印する鎖《トリニティバインドチェイン》』第三形態……」


 その時のナオトの瞳からは殺意や憎悪ではなく、純粋に戦いを楽しみたいという思いが感じられた。


「『黄色い無邪気な香雪蘭(イエロー・フリージア)』アアアアアアアアアアアアア!!」


 ナオトは黄色の鎧を身に纏《まと》うと同時に、瞳の色を暴走時の真紅ではなく水色に染めていた。

 その後、彼の背中から黄色の鎖が十本飛び出した。


「今度は鎖も使うから、気をつけろよ?」


「ふん、そんなもので私に勝てるわけがなかろう」


「はは、言うじゃねえか」


「少年こそ、いい目つきになったではないか」


 ミノリ(吸血鬼)とミカン(翼が四枚生えている天使)は観客席から二人の試合を観戦するようです。


「ただいまより『ケンカ戦国チャンピオンシップ』決勝戦を開始します! 皆さま! 心ゆくまでお楽しみください!!」


『トワイライト・アクセル』さんが開始の合図を送ってくれたのは予想外だったが、両者はそんなことなど気にせず相手の出方を窺《うかが》い始めた。

 観客は二人。実況は一人。バトル形式は一対一。

 どちらかが気を失うまで戦い続ける。

 場外に出ようと、それは変わらない。

 さあ、舞台は整った。戦士たちよ、思う存分戦いに身を投じるがいい!


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』


 両者は闘技場の床を思い切り蹴ると、ただ一直線に突っ込んでいった。

 ぶつかり合う拳と拳。

 時間が経つにつれて勢いと威力が増していく両者の攻防は、今大会で最も激しいものだった。

 雷と光が戦っているかのような戦いは、さらに激しさを増していく。


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』


 両者の攻防は、すでに人の域を超えていた。

 しかしそれでもなお、両者の攻防は止まらない。

 二人の激しい攻防からは痛みや疲れなど微塵《みじん》も感じない。

 しかし、お互いの拳が顔面に入った瞬間、戦況は大きく変わった。

 両者は、ほぼ同時に後退すると遠距離戦を開始した。


「鎖よ、我の前に立ち塞《ふさ》がる敵を攻撃せよ!」


「我が拳に宿りし、聖なる光よ。今こそ、その力で行く手を阻む敵を討ち滅ぼせ!」


「『十鎖《とうさ》の連撃《れんげき》』!!」


「『連続光速拳《れんぞくこうそくけん》』!!」


 両者の連続攻撃は、どんどん、どんどん、その勢いを増していった。

 二十秒ほどで両者は急に連続攻撃を中断した。

 その後、数歩、後退した。


「このままじゃ埒《らち》が明かねえから、そろそろ決着と行こうぜ?」


「そうだな。君との戦いは実に面白かったが、そろそろフィナーレだ」


「考えてることは同じなのに、あんたが言うとなんか腹立つな」


「それは君の精神レベルが子どものままだからではないのか?」


「見た目で判断してると、負けるぞ?」


「見た目が子どもだろうと私は容赦などしない」


「そっか。なら、もうそろそろ俺のことを名前で呼んでくれてもいいんじゃないか?」


「残念だが、私は強者の名前しか覚えられないのだ」


「へえ、それじゃあ、あんたの脳みそに俺の名前を刻み込んでやるよ!」


 ナオトは闘技場の床を思い切り蹴ると『オメガ・レジェンド』がいる方に向かって走り始めた。


「君にそんな隙など見せないがな!」


『オメガ・レジェンド』もナオトとまったく同じ動作をすると、ナオトめがけて走り始めた。


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』


 両者の拳がお互いの顔面に刺さる前に、ナオトは少しだけ身を低くして、それを未然に防いだ。


「俺の名前は……本田《ほんだ》 直人《なおと》だあああああああああああ!!」


 ナオトの拳が彼の顎《あご》に直撃した直後、ナオトはそのまま彼をぶっ飛ばした。


「ぐあああああああああああああああああああ!!」


 彼は空中を数秒間、舞った。

 ドサリとうつ伏せで倒れた彼には意識がなかった。

 ナオトは天に拳を掲げると、深呼吸をした後《のち》、こう叫んだ。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 その時、観客席に座っていたミノリ(吸血鬼)とミカン(翼が四枚生えている天使)が抱き合いながら、歓喜の声をあげ始めた。


「試合終了! 『ケンカ戦国チャンピオンシップ』決勝戦を制したのは『本田《ほんだ》 直人《なおと》』選手だあああああああああああああああ!!」


 しかし、ナオトがミノリたちのいる方に行こうとしたその時、悲劇は起こった。


「『絶対凍結《アブソリュートフリーズ》』!!」


 彼に向けて放たれた魔法が彼に直撃し、一瞬で彼を凍らせてしまったのだから……。

 その魔法を発動したのは……。


「はーはっはっは! 油断したな! 少年! いや、『本田《ほんだ》 直人《なおと》』!!」


 ついさっき意識を失ったはずの『オメガ・レジェンド』だった。

 右手から放ったその魔法は氷系の魔法。

 故に、炎系の魔法なら溶かすことが可能であろうが残念ながら、この会場内に炎系魔法を使える者はいなかった。

 彼はゆっくりと立ち上がった後も笑い続けている。

彼のその姿を見たミノリ(吸血鬼)の怒りは限界を超えてしまった。

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