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〇〇は『ケンカ戦国チャンピオンシップ』を観に行くそうです その18

 四月十六日。午後三時……。


「お袋の【邪眼】の力のおかげで『第三形態』の副作用はきれいさっぱりなくなった……。よし、そんじゃあ、あいつとの決着をつけに行こうかな」


『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公ナオトがふと、そんなことを言うと、いつのまにか顔バレしないように目の周りを隠していた仮面を外していたミノリ(身長『百三十三センチ』の吸血鬼)が彼にこう言った。


「あいつって、『オメガ・レジェンド』のこと?」


「ああ、そうだ。俺があいつと戦っている間は『第三形態』になってたけど、あの時、俺、暴走してたから戦ってる時の記憶が途中までしか無いんだよ」


「そう……。でも、決着をつける必要なんて本当にあるの?」


「ん? それは、どういう意味だ?」


「あんたは今日、四回も鎖の力を使ってるのよ? そんな状態で、あいつと戦えるの?」


「お袋の【邪眼】の力をあなどるな。お袋の【邪眼】は俺以外の生命体の命を奪える危険な力だが、俺に使えば、三時間以内にかかった呪いのたぐいを全部、消すことができるんだぞ?」


「え? そうなの?」


「ああ、そうだ」


「それは冗談……じゃないわよね?」


「ああ、もちろんだ」


 ミノリ(吸血鬼)は十人のモンスターチルドレンとその他の存在たちの元へ行き円陣を組むと、何かの会議を始めた。

 ____三十秒後。ミノリがトコトコとこちらに歩いてきた。


「ナオト、どうしても決着をつけたいの?」


「ああ、そうしないと、俺の気が収まらないからな」


「じゃあ、あたしと一緒に行きなさい」


「えっ? なんでだ?」


「あたしは目の周りを仮面で隠してたから大丈夫だったけど、あんたは顔バレしてるでしょう?」


「あー、たしかに、あの大会って、世界中に放送されてたもんな……」


「まあ、あたしがあんたの『姉』ってことにしてあげるから、それは問題ないわ」


「え、えーっと、俺はお前のことを『ミノリお姉ちゃん』って呼ばないといけないのか?」


「そんなことしなくていいわよ。けど……」


「けど?」


「ずっと留守番しててくれた『みんな』の頭を撫でてあげてもらえると助かるわ」


「ん? あ、ああ、それくらいなら別に構わないぞ」


『やったー!!』


 みんなはそう言いながら、俺を囲むと頭を撫でてほしそうに頭を突き出した。

 俺が一人ずつ時間をかけて、ゆっくりとみんなの頭を撫でると、みんなの顔はいつもよりツヤツヤしているように見えた。


「おい、ミカン。お前もこっちに来いよ」


 ※『ケンカ戦国チャンピオンシップ』の二回戦の相手だった、天使型モンスターチルドレン製造番号ナンバー 四のミカン。旧名『ハル』。


「エッ? イイノ?」


「何言ってんだ。お前だって、もう俺の家族なんだから、甘えたい時はいつでも……」


「ワーイ!!」


「ちょ、いきなり抱きつくなって。というか、人の話は最後まで聞けよ」


「ナオトー♪」


 ミカンはそう言いながら、俺の頬に顔を擦りつけてきた。

 こいつが、俺と戦っていたなんて想像できないな。まあ、懐いてくれたからいいか。


「ミカン。そろそろ離れてくれるとうれしいな……なんて」


 ミカン(翼が四枚生えている天使)は俺のその言葉を聞くと、俺から少し離れた。だが……。


「ナオトハ、ワタシノコト、キライナノ?」


 少し涙目になってしまった。


「え? い、いや、そんなことはないぞ。ただ、そろそろ決着をつけに行かなきゃいけないなーと思っただけだ」


「ホントウニ?」


「ああ、本当だ」


「ジャア、ワタシト……キス……シテクレル?」


「そっかー、ミカンは俺にキスしてほし……って、お前、今の本気で言ったのか?」


「ワタシ、ナニカ、ヘンナコト、イッタ?」


「い、いや、そんなことはないぞ。そんなことはないけど」


「ジャア、キス、シテクレル?」


「え、えーっと、なんでキスにこだわるんだ?」


「スキナヒトト、キスシタイッテ、オモウノハ、オカシイノ?」


「えーっと、だな。俺は一応、お前の家族だから、その、なんというか……俺は、お前の恋人にはなれないんだぞ?」


「…………」


「なあ、ミカン。お前は俺のことをどう思って……」


「ダイスキ」


「即答かよ。えーっと、それじゃあ、俺のどこが好きなんだ?」


「ソンザイ、ソノモノ」


「そ、そうか。えーっと、具体的に言うと、どのへんが好きなんだ?」


「イワナイト、ワカラナイノ?」


「いや、だって、俺とお前は数時間前に出会ったばかりだろう?」


「ナオト」


「な、なんだ?」


 ミカンは静かに俺を抱きしめる。


「アナタノ、コノネツガ、スキ」


「そ、そうか……って、左耳を……舐めるな!」


「アナタノ、ソノハンノウガ、スキ」


 ミカンはそう言うと、俺の心臓の音を聞く。


「アナタノ、シンゾウノ、オトガ、スキ。トクン、トクンッテ、カワイイオトガ、キコエルカラ」


「そ、そうかなー?」


 ミカンは俺の額に自分の額を合わせる。


「アナタノ、カンショクガ、スキ」


「別に手入れとかはしてないんだけどな……」


「ソレカラ……カプッ」


「……!!」


 ミカンは俺の首筋に噛み付くと、静かに血を吸い始めた。


「ミ、ミカン。やめ……ろ」


 俺の血を吸うのをやめたミカンは微笑ほほえみを浮かべた。


「アナタノ、チノアジガ、スキ」


「そ、そうか」


「ネェ」


「な、なんだ?」


「ワタシト……シヨウヨ」


「それは……ダメだ」


「ドウシテ?」


「俺はこれから決着をつけに行かなきゃいけないからだ」


「ソレハ、ワタシヨリ、ダイジ、ナノ?」


「どっちも同じくらい大事だ。けどな、物事には優先順位っていうものがあるんだ。だから、少しの間でいいから待っててくれないか?」


「イヤダ」


「ミカン、俺は死んだりしないよ」


「イヤダ」


「ミカン、分かってくれ」


「マッテルナンテ、イヤダ」


「ミカン?」


 ミカンは俺を静かに抱きしめると、静かに泣き始めた。


「ワタシハ、ナオトト、イッショニ、イタイ! ダカラ、ワタシモ、ツレテイッテ!!」


 俺はミカンを静かに抱きしめ返すと、優しく頭を撫で始めた。


「お前のその願いは俺が叶えてやる。だから、もう泣くのはやめてくれ。じゃないと、俺が悪者になっちまうよ」


 ミカンはさらに俺を抱きしめる。


「ウン、ワカッタ。モウ、ナカナイカラ、ワタシヲ、ツレテイッテ」


「ああ、分かった。お前も一緒に連れて行くよ」


「ウン、アリガトウ。ナオト」


「どういたしまして」


 こうして俺はミノリ(吸血鬼)とミカン(翼が四枚生えている天使)と共に、再び『ケンカ戦国チャンピオンシップ』の会場に行くこととなった。(ミノリは俺の『姉』として行くらしい)

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