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〇〇は『ケンカ戦国チャンピオンシップ』を観に行くそうです その7

 四月十六日。午後十二時三十五分。

 ナオトと、合体して一人になった『少年五人』との戦いは始まった。


『俺たちのおの餌食えじきになれ! 紫野郎!!』


「それは勘弁してほしいな」


『このっ! このっ! このっ!』


「おっとっと、危ない、危ない」


 合体して一人になった『少年五人』は闇製の二本のおのをナオトに当てようとしていた。

 しかし、ナオトはそれを鮮やかにかわしながら、先ほど『黒い剣』に変形してくれた『黒影を操る狼(ダークウルフ)』を使って、合体した『少年五人』を翻弄ほんろうしていた。

 ※その狼は、絶滅した『ニホンオオカミ』の怨念から生まれた存在である。

 今はナオトの影の中に住んでいる。


「おい、お前たちはわけあって、そんな姿になっちまった『五帝龍』なんだろう? なら、もっと俺を殺すつもりで来いよ。じゃなきゃ、負けるぞ」


『うるさい! お前のようなただの人間に先代の誕生石使いですら使わなかった二月の誕生石が使えるはずがないんだ! なのに、どうしてお前はその力を使うことができる!』


「そんなの知らねえよ。ただ一つ言えることは、俺とこの力は一心同体ってことだ!」


『ぐっ!!』


 ナオトが、合体して一人になった『少年五人』の闇製の二本のおのを『黒い剣』で弾き飛ばすと、合体して一人になった『少年五人』は距離をとった。


「おいおい、もう降参か? 伝説の『五帝龍』の力はこんなもんか?」


 ナオトがそう言うと、合体して一人になった『少年五人』は不気味な笑みを浮かべた。

 それを不審に思ったナオトはブラストと名前の分からない残りの二人のところまで後退した。


「ブラスト、お前に一つだけ言っておくことがある。聞いてくれないか?」


 ブラスト(一月の誕生石をその身に宿すおの使い)は。


「それはいいが、あいつはいったい何をしようとしているんだ?」


「俺の考えが正しければ、あいつはこの会場にいる観客全員を皆殺しにするつもりだ」


「な、なんだと! それは本当か!?」


「今のところ可能性は半々だから、確信はない。けど、あの目を見た瞬間、そんな気がしたんだ」


「なるほど、そういうことか。それで? 俺に言っておきたいこととはなんだ?」


「これから言うことを何も言わずにやってくれるのなら話す」


「どういうことだ? お前、まさか死ぬつもりじゃないだろうな?」


「バーカ。俺はみんなのところに帰らなくちゃいけないんだよ。こんなところで死んでたまるか」


「そうか。なら、話してくれないか? お前の考えというやつを……」


「ああ、いいぜ。ただし、聞いたからには後戻りはできないぞ? それでもいいのか?」


「お前の役に立てるのなら、やってみせるさ」


「そっか。じゃあ、言うぞ。俺が考えた作戦っていうのはな……」


 ナオトはブラストの耳元で作戦内容を伝えた。

 それを聞いたブラストは、ナオトの思考回路がどうなっているのかを調べたくなったが、そんな時間はなかったため、仕方なく実行することにした。


「お前の作戦内容は把握はあくしたが、その作戦がうまくいくとは限らないぞ?」


「そんなことは分かってる。けど、やらなきゃこの会場にいる生命体は全て、あの世行きだ。だから……」


「分かった。もう何も言うな。どうせ何を言っても、お前は俺の言うことなんかに耳を貸さないのだろう?」


「なんだよ、よく分かってるじゃねえか。まあ、そういうことだから、俺が合図したら作戦開始だ」


「了解した……だが、俺から一つ条件がある」


「条件?」


「ああ、そうだ」


「ほう、それはいったい何だ?」


「死ぬな」


「ん? なんだって?」


「だから、死ぬなと言ったのだ」


「いや、別に死ぬ気はないって、さっき言っただろ?」


「それでもだ。お前の存在そのものが、この世界にとって重要なものであることを自覚しろ」


「自覚ね……俺って、そんなすごい存在じゃないんだけどな」


「そんなことはない。お前の力は今の戦いを見ただけで十分理解できた。だから、お前は死なないように戦え。いいな?」


「ああ、分かったよ。ありがとな、ブラスト」


「礼なら、この戦いが終わってからにしてくれ」


「そっか。それじゃあ、そうさせてもらおうかな」


「作戦が成功することを祈っているぞ、ナオト」


「そっちこそ、死ぬなよ。ブラスト」


「お前に言われずとも分かっているさ」


「……そうか。よし、それじゃあ、行ってくる!」


 ナオトは勢いよく闘技場の床を蹴って、合体して一人になった『少年五人』の方へと向かった。

 その直後、ブラストは『大罪の力を解放する斧トリニティブラストアックス』を召喚し、それを天高くかかげると魔力を集め始めた。


「どうした『五帝龍』! 俺を倒すんだろう!」


 ナオトが合体して一人になった『少年五人』を挑発すると。


『そんなことを言っていられるのも今のうちだぞ! 人間!』


 その直後、合体して一人になった『少年五人』の身長が二十センチほど伸びた。

 そして、先ほどの闇製の二本のおのを見えない力で手繰り寄せると、一気に振り下ろした。(身長は百五十センチになった)


「おっと! 危ねえな……」


 ナオトは『黒い剣』でなんとか二本のおのを受け止めると、こんなことを言った。


「おいおい、『五帝龍』の力ってのは、この程度のものなのか?」


 それを聞いた合体して一人になった『少年五人』は。


『変わったのは、外見だけではないぞ!』


 そう言いながら、闇製の二本のおのをグググ! と『黒い剣』が折れるのではないのかというくらい押し込んだ。


「おっと……これは、ちょっとやばいかもな」


『そうだ! 人間風情(ふぜい)が俺たちにかなうはずないんだ! さっさとくたばれ!!』


「たしかに、これはやばいな……けど、俺はまだ死ねない……死ぬわけにはいかない! おい、聞いてるんだろう? アメシスト。いいから、寄こせ! お前の全部!!」


 その時、ナオトの紫水晶の重鎧じゅうがいの金色のひとみがピカッ! と光った。


『おらぁ!!』


 その直後、合体して一人になった『少年五人』はナオトの腹部にりを入れたかと思うと、瞬時にナオトの背後に回り、横一文字に彼の背中を闇製のおの(一本)で切ろうとした。しかし……。


『……な、何!』


 そのおのはいつのまにか『黒い剣』で弾き飛ばされていた。


『な、なんだ! 今の反応は!』


 合体して一人になった『少年五人』が驚きをあらわにしている中、ナオトは『アメシスト』に要求すべきではないことを要求していた。


「まだだ……! もっと、もっと……! もっと寄こせ! アメシスト!!」


 その時、再び彼のよろいの金色のひとみがピカッ! と光った。


『こいつ! 急に動きが!』


 ナオトの動きは先ほどのものとは比べものにならないほど良くなっていた。

 彼は『黒い剣』で流れるような動きでおのを受け止めたり、受け流したり……かと思えば、瞬時に攻撃を仕掛けたりしていた。

 とても身長差が約二十センチある相手と戦っているような者の動きではなかった。だが……。


『いい加減にくたばれ! 人間!!』


 合体して一人になった『少年五人』の右ストレートがナオトの顔面に直撃。

 ナオトはそれになんとか耐えたが、左の脇腹に鋭い蹴りが入ってしまったため、彼はその場にひざまずいてしまった。


『これで! 終わりだー!!』


 ナオトは力の使いすぎで疲れ切っていたため、その場から動くことさえできなかった。

 ナオトは、ここで終わってしまうのだと悟り、静かに目を閉じた……だが、その時。


「何やってんのよ! ナオトおおおおおおおお!!」


 この場にいるはずがないミノリ(吸血鬼)の声が確かに聞こえた。

 ナオトはその声が聞こえた瞬間、最後の力を振り絞り、もう一度立ち上がった。

 彼は合体して一人になった『少年五人』の闇製のおのを背中から生えている十本の紫の鎖で受け止めると、目にも留まらぬ速さで前進。

 その後、合体して一人になった『少年五人』の左腕のひじ関節に『黒い剣』をグサリ! と突き刺した。


『うわああああああああああああああああああ!!』


 合体して一人になった『少年五人』の叫び声は会場全体にひびき渡った。

 しかし、その直後、そいつは。


『この……! バケモノがあああああああああ!!』


 そう言いながら、右拳をナオトの顔面に当てようとした。

 しかし、ナオトはそれに瞬時に反応。

 その後、そいつの右手首を『黒い剣』ですばやく切りいた。


「お前にだけは言われたくねえよ」


『俺たちはこんなところで終わるわけにはいかない! 終わるわけにはいかないんだあああああ!!』


 ナオトはそいつの言うことを無視して、そいつの胸骨に『黒い剣』を突き刺した。


「まったく。お前のせいで、さっきのがミノリの声だったどうか分からなかったじゃないか。しかもブラストの出番がなくなっちまった……。まあ、もしもの時に備えて、ブラストに結界を張るように言ったのは俺だから、少しは俺のせいかもな」


 ナオトが目の前にいる存在に目をやると、人間に敗北した精神的ダメージとナオトとの戦闘による肉体的ダメージで気を失っていた。

 ミノリ(吸血鬼)はそんなナオトの姿を見て、にっこり笑っていた。


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』


「な、なんと! たった一人で彼らを倒してしまいました! 彼はいったい何者なのでしょう! ケンカ戦国チャンピオンシップ……一回戦! これにて終了いたします! 二回戦にも期待しましょう!!」


 実況の『トワイライト・アクセル』さんがそう言うと観客たちは、うるさいを通り越した猛烈な歓喜の声を上げた。

 しかし、そんな中、彼女のとなりにいた解説の『オメガ・レジェンド』だけは、ナオトのことをまじまじと見ていた。

 どうやら、彼はナオトに興味を持ったようだ。

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