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〇〇は『ケンカ戦国チャンピオンシップ』を観に行くそうです その5

 長方形の闘技場で行われた『ケンカ戦国チャンピオンシップ』の開会式は、白いローブと目の周りを白い仮面でおおっているのが特徴的な身長『百六十センチ』ぐらいの女性が「さぁ! 好きなだけ戦いなさい! そして、勝利を勝ち取るのです!」というセリフを言っただけで終わってしまった。

 というか、あの人どっかで見たことある気がするんだよな……まあ、いいか。

 さあてと、そろそろ予選に行くか。

 俺たちは観客席につどう人たちがかなり盛り上がっていることを目の当たりにしながら、予選の準備をするために選手用の通路へと向かった。

 その女性は二人が(ナオトとブラスト)予選に行くところをじっと見ていた。そして、心の中でこんなことを考えていた。

 あんな姿になってまで、こんな大会に出るなんて、さすがはナオトね。

 けど、この大会に紛れ込んでいる『五帝龍』たちには気をつけるのよ。


「さあー! 始まりました! 第一回 ケンカ戦国チャンピオンシップ!! 実況は、この私! トワイライト・アクセルがつとめさせていただきます! そして、本日はこの大会に来ても大丈夫なんですか! というレベルのスペシャルゲストがお越しになっています! それでは、さっそく紹介しましょう! この世界の象徴と言っても過言ではない『はぐれモンスターチルドレン討伐隊』司令! オメガ・レジェンド様です!!」


「みなさん、こんにちは。今回、この大会の解説をつとめさせていただく『オメガ・レジェンド』です」


「いやー、それにしても、こんな大物がこのような大会を観に来てくださるとは思いもしませんでしたよー」


「はははは、私はただ、そういう役職に就いているだけだよ」


「またまた、ご謙遜けんそんを。国民全員があなたを目標にしているくらいなんですから、どっしり構えていればいいんですよ」


「ふーむ、そういうものかな。まあ、それはそうと、この大会の予選を早く始めた方が良いのではないかな?」


「はっ! そうでした! 私としたことが、実況者としてあるまじきことをしてしまいました! それでは気を取り直して『第一回 ケンカ戦国チャンピオンシップ』の予選を開始します! 皆さま! 命知らずの戦士たちにどうぞ盛大な拍手をお送りください!」


『わあああああああああああああああああああ!!』


 観客たちの歓喜の声と拍手がスタジアムを包み込む中、俺たちは長方形の闘技場に再び入場した。

 何だ? この異常な盛り上がりは。まあ、いいか。


「それでは、ルールを説明します! 予選は、千人の戦士たちが本戦に進むための十六(わく)をかけて戦うバトルロワイヤル形式です! 時間は無制限! 十六人になるまで、ひたすら戦います! 武器や魔法の使用も認めます! あらゆる手を使って目の前の敵をぶっ飛ばせ! 説明は以上になります! それでは予選スタート!!」


 その解説の合図と共に、赤、青、緑、黄、黒の火柱が空をいろどった。

 こうして、命知らずの戦士たちが一斉に戦い始めたのであった。

 しかし、それは例の五人組のせいで一瞬で終わってしまった。


『くらえ! 合体魔法【万物破壊可能隕石ワールド・メテオ】!』


『うわああああああああああああああああああ!!』


 俺とブラストを含めた数名しか、その魔法を防げなかったせいで予選はたったの十秒で幕を閉じた。


「な、なんということでしょう! 身長『百三十センチ』の五人組がたった一発の合体魔法で本戦へ進むことができる十六人を決めてしまいました! いったい彼らはどこにあんな力を隠し持っていたのでしょうか! 彼らについて、どう思いますか? オメガさん」


 あの魔法は、たしか『五帝龍』が『純潔の救世主(クリアセイバー)』に放った唯一ゆいいつの魔法だったはず。

 もしかすると、彼らは……いや、考えすぎか。


「……ま、まあ、かなり強力な魔法だということには変わりはないだろうね。彼らは実に素晴らしい力を持っているよ」


「おおーっと! オメガ様からおめの言葉をいただけるなんて、すごいぞ! 小さな戦士たち! 皆さま! 小さな戦士たちに盛大な拍手を……」


 その時、五人組の一人(赤髪)が、大声でこう叫んだ。


「俺たちは強いやつと戦えるって聞いたから暇つぶしに、この大会に参加した! けど、この有様ありさまはなんだ! ケンカ戦国チャンピオンシップ? 聞いてあきれるぜ! こんなもんじゃ、肩慣らしにもなりやしねえ! だから、俺たちがこの大会を面白くしてやるよ! いいか! これから、三十分後に本戦を開始する! その一回戦は、十一対五のチーム戦! 勝利条件は俺たちを倒すことだ! そして、もし、二回戦があった場合、俺たちがここに来る途中で見つけた『秘密兵器』と戦ってもらう! そして、もしもそいつを倒すことができたら、残ったやつらでバトルロワイヤルをしてもらう! 以上だ! あと、もし、この提案を破棄はきした場合、ここにいる全員をぶっ殺すからな! 覚悟しておけよ! じゃあ、またあとでな!」


 炎が燃えているかのような逆立った赤い髪と赤い半袖のシャツと赤い半ズボンと赤い運動靴が特徴的な少年は残りの四人と共に選手用通路から退場していった。

 スタジアムが沈黙ちんもくに包まれている中、俺は解説のお姉さんの方を見た。


「え、えーっと、こういう時はどのように対処すれば」


「私が今から運営側に連絡して許可をもらってくる」


「オ、オメガ様! いったい、何を……!」


「ずっとこちらを見ている、あのナオト(しょうねん)を見たまえ。先ほどの少年たちとは違って、純粋じゅんすいに戦いを楽しみたいという思いに満ちあふれた目をしている。今、我々にできることは彼のような存在を後世にも残していかなければならないということだ。違うかね?」


「は、はい! そうですね! 分かりました! それでは、今すぐ運営側に連絡を……」


「話は全て聞かせてもらったよ、トワイライトくん」


「そ、その声は! 運営側代表の『カスタム・スカイ』さん! 急にどうして……」


「今、この世界の人々が私のように風魔法や鏡魔法を通して、この大会を観戦している。予選は大変なことになったが、逆にこれを利用させてもらおうではないか」


「で、ですが!」


「やってみようじゃないか、トワイライトくん。ここでダメなら、この先、この大会を開催することはできなくなるのだから……」


「オメガ様……分かりました! やってみます! コホン、えー、皆さま、大変長らくお待たせ致しました。運営側との協議の結果、先ほどの少年たちの提案を採用することになりました。例の少年たちの提案通り、三十分後に本戦の一回戦を開始します。皆さま! もうしばらくお待ちください!」


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』


 おいおい、マジかよ。

 こいつら、自分たちの命より大会が中止になることの方が大事なのか?

 まあ、この大会自体が異常だから、しょうがないか。

 残ったメンバーは、一度、選手用通路から闘技場から離脱した。

 はぁ……なんかやばいことに巻き込まれちまったな。誰か助けてくれないかな。

 こうして、残りのメンバーは三十分後に始まる地獄に備えて、コンディションをととのえ始めたのであった。

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