〇〇は『主人公がショタ化』するのを目の当たりにするそうです その4
一方、その頃。『ナーラ』というまちでは。(日本でいうところの奈良県)
「なぁ、この辺に反応が複数感じられるのは、あたしの勘違いか?」
杉元 黒曜(杉元式激槍術の使い手。
名槍『黒神槍』の所持者)がそう言うと。
「いえ、勘違いではありません。たしかに、私たち以外の反応があります」
相馬 夏樹(相馬式操馬術の使い手。どんな馬でも召喚でき、操れる)がそう言った。その後。
「たしかに……私たち以外に……ここに……来てる人が……いる」
高木 弓子(高木式射撃術の使い手。どんな弓でも召喚でき、どんな位置からでも的確に敵に当てられる。そのほかの武器も手足のように使える)がそう言った。その後。
「やはり、僕たちと同じように『ナオト』に会うためにでしょうか?」
時坂 賢太郎(時坂式時間拘束術の使い手。黒髪と黒縁のメガネが特徴)がそう言った。
「なら、路地裏にでも行って呼んでみようぜ。あいつらもそれでこっちの位置がだいたい分かるだろうから」
杉元がそう言うと、四人は路地裏に向かった。
「さて、全員『おまもり』を持ったな。それじゃあ、行くぜ! せーの!」
一列横隊になった状態で、杉元の合図と共に他の三人も呪文のようなものを天に向かって唱え始めた。
『白いおまもり』は卒業記念に先生から渡されたもので遠くにいても、これを持っていれば、それぞれの波長で位置が特定できる。
先生の力で生徒全員が常にそれを身につけなければならないという意識を植え付けられた。
『聞け! かつての獄立 地獄高校の同士たちよ! 今、十年の時を越え、我らのもとに【先導者】は蘇った! 我々の時代はまだ終わっていない! お前たちの気高い理想は……決して絶やしてはならない! 彼の意志は常に我々と共にある! 獄立 地獄高校の真理はそこだ! 皆……! 先導者の同士であるのなら、今こそ、ここに集え!!』
____数秒の時が……流れた。その場にいる全員が恥ずかしさのあまり、この場から立ち去ろうとした、その時……。
『呼んだ?』
彼女らの目の前に、彼ら彼女らが姿を現した。(これからの『』は杉元、相馬、高木、時坂が言う)
「あれー? どうしてこんなところに君たちがいるのー?」
『黒沢式植物召喚術の使い手! 黒沢 昴!!』
「久しぶりだな、お前たち。元気にやっていたか?」
『小宮式剣術の使い手! 小宮 光!』
「待たせたな、貴様ら」
『加藤式忍法の使い手! 加藤 真紀!』
「おいおい、俺のことも忘れてもらっちゃ困るぜ」
『月影式忍法の使い手! 月影 悠人!』
「えーっと、みなさん、どうしてこんなところにいるのですか?」
『坂井式撲殺術の使い手! 坂井 陽代里!』
「おう! 久しぶりだな! お前ら!」
『布田式抹殺術の使い手! 布田 政宗!』
そこに現れた六人は、間違いなく獄立 地獄高校の元同級生たちであった。
「あー! なんか人数が多いから、数分置きに、まちの外に出て、ここじゃない場所で『釣り』でもしながら話そうぜ!」
杉元がそう言うと、全員が「それもそうだ」と言って、まちの外に数分置きに出ることになった……。
*
その頃、ナオトたちは……。
「ナオト……気づいたか?」
名取がまだ眠っているナオトの近くに座ってそう言うと、ナオトは寝言(?)で。
「んー? あー、なんか、かなりの人数が一箇所に集まってるのはポケットの中にある『おまもり』でバッチリわかるぞー」
「俺は今からそこに行ってくる……そして、なんとかして、ここに連れてくる……」
「ああ、頼んだぞー」
「ああ……それじゃあ、行ってくる」
「ああ、気をつけてなー」
「ああ……任せておけ」
その後、名取はナオトのアパートにいる十人のモンスターチルドレンとその他の存在たちに事情を説明し、チエミ(体長十五センチほどの妖精)の風の加護を受けてから、大空へと飛び立った……。
『名取 一樹』。名取式剣術の使い手で名刀『銀狼』の所持者。
前髪で両目を隠しているのは、人見知りだから。
異世界の神社で再会してからはナオトたちと旅を共にしていた。
しかし、今回から先ほど登場した者たちの元へ向かう。
存在感が薄いが、武器のことになるとよく話す。
*
その頃『モンスターチルドレン育成所』では。
「……! 私の元生徒たちが一箇所に集まり始めたようね。ふふふ……そろそろ計画を第二段階に進める必要がありそうね。……待っていてね、ナオト。あなたは絶対に私が幸せにしてみせるから」
先生は『例の高校』の元教師。身長『百三十センチ』。衣服類は全て『白』。
宇宙が誕生する前から存在しており、あらやる能力値が測定不能。
ナオトのことを愛しているが、未だに言い出せずにいる。
モンスターチルドレンを生み出したのは彼女であり、モンスターチルドレン育成所で彼女たちの教師とそこの所長を兼任している。
彼女は『ある人物』から依頼を受け、その計画を実行している。
【ナオト覚醒計画】
本田 直人を覚醒させ、本来の姿に戻すために、彼女は『その人物』に手を貸している。
ちなみに今日は自分の担当の生徒を自分の実像分身の一体に任せているため、ヒマである。
彼女は白チョークで魔法陣を書いて、自室から外に移動すると、グリフォンの『クゥちゃん』を指笛で呼んだ。
すると、バサバサと音を立てながら『クゥちゃん』が彼女の元に舞い降りた。(育成所は地下にある)
「クゥちゃん、『ナーラのまち』までお願いね」
「クゥー! クゥー!」
クゥちゃんは彼女が乗ったのを確認すると、大空へと飛び立った……。
*
そして、その頃。ナオトたちの住んでいるアパートでは。
「……ナオト様」
フィア(四大天使の遺伝子を持つ守護天使)が眠っているナオトに膝枕をした状態で頭を撫でていると、ミノリ(吸血鬼)がやってきた。
彼女は腕を組み、仁王立ちをすると『フィア』に話しかけた。
「あれ? あんた、人間が嫌いじゃなかったの? フィア」
「……ナオト様は別です」
「へえー、そうなんだ。じゃあ、なんで人間嫌いだってことをナオトに言ったりしたのよ」
「私は……構ってほしかったのかもしれません」
「えっ? そうなの?」
「分かりません……。私は今までナオト様に、ずっとお仕えしてきました。ただし、姿を現してはならない、声をかけることもしてはならないという条件付きで」
「そうなんだ……けど、いいじゃない」
フィアがその言葉に反応して、ミノリの顔を見た。
「えっ?」
「だって、あたしたちなんか最近出会ったのよ? それに比べて、あんたはずっとナオトのことを側で見守ってきた。正直、羨ましいわ」
「そう……なのでしょうか?」
「ええ、そうよ。ねえ? みんな」
ミノリがそう言うと、他のメンバーがぞろぞろと集まってきた。どうやら会話の内容は全て聞かれていたらしい。
「あたしたちはあんたを歓迎するわ! あんたは今日から、あたしたちの家族の一員よ! これからよろしくね! フィア!」
皆、それに便乗したのか、口々にフィアを歓迎する言葉を言い始めた。
フィアはそれを聞いているうちに、目から自然と涙が溢れてきた。
涙を服でゴシゴシと拭うと、彼女は全員に向かって、とびきりの笑顔を全員に見せながら、こう言った。
「はい! 不束者ですが、どうぞよろしくお願いします!」
それを聞いた全員がその言葉に反応し、祝福の言葉を口々に言い始めた。
それと同時にナオトがゆっくりと目を覚ました。
「ん……うーん……なんか騒がしいな……って、あれ? フィア? 何してるんだ?」
「あっ、おはようございます。ナオト様。今から私もあなたの家族の一員です。私は今、うれしい気持ちでいっぱいです!」
「ん? あー、分かった。これからよろしくな、フィア」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。ナオト様」
「うん……それじゃあ、昼に……なったら、起こしてくれ……」
「また眠ってしまいましたね。ふふふ、やっぱりナオト様はかわいいですね」
『ごもっとも!』
全員の息がぴったりあった瞬間であった。
*
『ナーラのまち』……裏路地……。
普通の人でもモンスターチルドレンと同様の力を欲しいと願う人々にその薬を販売している裏の組織があった。
それが『漆黒の裏組織』。
この組織を支えているのは四人の幹部である。現在、この組織に所属している人数は百名ほど。
【ブラック・ダイヤモンド】
【グリーン・コンペア】
【レッド・ネーム】
【グレー・アイランド】
彼らの名前の由来は『金〇型四姉妹』の名前の一部とスカートの色であるということに、ナオトと名取は瞬時に見抜いた。
____彼らは人に姿を見せることはない。しかし、彼らは金さえ払ってくれるなら、誰にでもその薬を渡す。
一瓶で金貨四枚(四千円)もする薬の効果は絶大であるが、成功する確率は『一パーセント程』であるため、あまりいい商売にはならない。
しかし、平和なこの世界にも心の闇を膨張させたせいで、このようなものに手を出す人々がいるため、やめるわけにはいかない。
なにせ、その薬を提供してくれるのは【長老会】のメンバーの一人なのだから。
(長老会とは『十六人の大魔法使い』で構成された、この世界の大黒柱とも言われる組織である)