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〇〇は『主人公がショタ化』するのを目の当たりにするそうです その2

「えーっと、言いたいことは分かったんだけど、そこに行くのは変わりないんだから、どこかでゆっくりするのもいいんじゃないか?」


 俺がそう言うと、コユリ(本物の天使)はこう言った。


「分かりました。それでは、マスターの世界で言うところの修学旅行の自由行動の時間をもうけましょう。それでいいですか?」


「ああ、それでいいぞ。ありがとな、コユリ」


「いえ、私はマスターの望みをできるだけかなえたいだけですので……」


「そうなのか? でも、ありがとな」


「はい、どういたしまして……」


 なんだかコユリ(本物の天使)の顔が少し赤くなった気がしたが、俺は特に気にせず、みんなに改めて次の目的地を伝えた。


「よし! それじゃあ、次は『蒲公英たんぽぽ色に染まりし花畑』に行くぞ!」


 俺が片手をグーにして、上に突き出すと。


『おーーー!』


 全員が俺のマネをした。よし、これで次の目的地が決まったな。

 良かった、良かった……と、俺が思っていると、急に胸が苦しくなった。

 なんだよ……これ!

 俺はその場でむねを押さえながらひざからたおれた。

 その直後、俺の体から白い光があふれ出した。

 その時の俺には心配して近づいてくる、みんなの声や足音がまったく聞こえなかった……。

 しばらくすると、白い光は消え、いたみもひいていた。

 だが、みょうに体が軽くなっていた。

 俺はミノリ(吸血鬼)たちにそのことを伝えようとしたが、目の前で俺を見ているミノリたちは驚きをあらわにしており、その場に立ちくしていた。


「なあ、ミノリ。俺って、今、何歳くらいに見える?」


 俺が思い切って、そうたずねると。


「え、えーっと、今のあんたは……」


「今の俺は?」


「……見た目だけで言うなら、十歳くらいになってると思うわ」


「……マジか?」


「ええ、マジよ」


「身長はどれくらいだ?」


 俺がそう質問すると、ミノリは。


「あたしとせいくらべしてみる?」


「お、おう、頼む」


 俺の服は、おふくろが作ってくれたものなので俺の身長に合わせて形状を変化させることができる。(もちろん、くつも!)

 俺は、お袋が作ってくれた衣服等に感謝しながら、スッと立ち上がると、ミノリと背中を合わせた。

 すると、コユリ(本物の天使)が俺とミノリの身長を肉眼とそれぞれの頭に手を乗せて測定した。

 その結果……。


「マスターの身長は今、百三十センチです」


「な、なんだと!」


 コユリからそれを聞かされた時、俺はおどろきをあらわにし、激しく動揺した。


「コユリ、もう一度やってくれ!」


「いいえ、それはできません。天使型モンスターチルドレンである私の目は真実を見通すことができます。なので、マスターが小さくなったことは紛れもない事実です」


「そ、そんな!」


「大丈夫です。マスターが小さくなっても私は大丈夫です」


「いや、そういう問題じゃなくてだな」


「あー! もう! とりあえずアパートに戻ってからにしない? ナオトだって朝ごはん食べてないんでしょ?」


「ん? あー、そういえば、そうだったな。ありがとう、ミノリ」


「これくらい当然よ!」


「お前はやっぱり頼りになるな」


「小さくなっても、ナオトはナオトでしょ! しっかりしなさい!」


「そうだな。そうだよな。えーっと、それじゃあ、みんなー、朝ごはんを食べに一旦いったんもどるぞー」


『はーい!』


 コユリ(本物の天使)だけは返事をしていなかったが、俺はみんなを連れてアパートに戻った。


 *


 その頃『ナーラのまち』では。(この世界でいうところの奈良県)


「あれ? ここはどこだ? あたしらは確か、奈良の大仏を見に行くために集まってたよな?」


「私にも分かりません。ですが、ここが私たちの知っている日本ではないことは分かります」


「私の力……使ってみる?」


「うわっ! お、おどかすなよ! 高木! ああ、びっくりした」


「ごめんなさい。私、存在感ないから……」


「そ、そんなことないですよ! 高木さん! 元同級生である私から言わせてもらうと、あなたほど、その力を活かしきれている人はいませんよ! だから、気を落とさないでください! ほら、黒曜こくようちゃんも!」


「あ、ああ! そうだな! 相馬そうまの言う通りだ! お前のその力は使い方次第では、スゲーものになるぞ!」


「ほん……とう?」


「ああ、本当だ! だから、そんな悲しそうな顔すんなよ」


「うん、分かった。ありがとう、黒曜こくようちゃん、夏樹なつきちゃん」


「いいってことよ! じゃあ、このまちを探索たんさくしようぜ!」


「そうですね。何はともあれ、まずは情報収集です。ほら、行きますよ。高木さん」


「うん……そうだね」


 こうして女子三人は探索たんさくを開始した。さて、彼女たちが探索している間に彼女たちのことを紹介しておこう。

 男勝りな彼女の名前は『杉元すぎもと 黒曜こくよう』。杉元式激槍(げきそう)術の使い手で、名槍めいそう黒神槍こくじんそう』の所持者。

 上半身は胸部きょうぶを『サラシ』でかくしていて、下半身には黒いスパッツと黒いスカートをまとっている。(くついておらず、両足にテーピングをしている)

 長いかみは黒く、白いひもでポニーテールにしている。赤いひとみは血のように赤く、はだは白い。

 先ほど紹介したやりは黒い布でかくした状態で持ち歩いている。


「ん? なんか、あたしのことを紹介されているような……気のせいか」


 次に丁寧ていねいな口調で話していたのが相馬そうま 夏樹なつき

 相馬式操馬(そうま)術の使い手。馬のたぐいなら、なんでも召喚でき、操れる。一番のお気に入りは『首なし馬』。

 馬に乗っているときは、本来の持ち主であったものの武器を使える。つまり『セ○ティ・ストゥルルソン』さんの影の力も使える……かもしれないということだ。

 服装は白い半袖はんそでTシャツと水色のショートパンツ。(動きやすい格好かっこうが好きらしい)

 白い靴下と黒と白が混ざったスニーカーをいている。

 父親と同じ金髪はショート。黒いひとみは母親と同じで肌は白い。


「そうですね、先ほどから妙な視線を感じます」


 そして、無口キャラの『高木たかぎ 弓子ゆみこ』。高木式射撃(しゃげき)術の使い手で、弓のたぐいなら、なんでも召喚可能。

 彼女は弓以外の武器も普通に使えて、なおかつ運動神経も抜群ばつぐんである。

 お気に入りは『与一よいちの弓』。(矢は構えると装填そうてんされ、なおかつ透明なので、厄介)

 身長『百四十センチ』という小柄こがらな体型だが、存在感のなさを活かして静かに敵を殺す。

 高校時代から無表情だったが、ナオト(主人公)にだけはなついていたらしく、時折、笑みを浮かべていたそうだ。

 服装は黒と白のシマシマ模様もようがあるTシャツと白い上着と水色のショートパンツ。白い靴下と白い運動靴も着用している。

 白く長い髪と黒い瞳と何を考えているのか分からないポーカーフェイスが特徴。

 背中に背負っている黒いリュックが気になるが、中身を調べるのは困難こんなんである。


「やっぱり見られている……そこ!」


 物陰ものかげに隠れていた僕の方を向いた高木さんが飛ばしてきた短剣をかわした瞬間、僕の目の前に黒い布におおわれた『黒神槍こくじんそう』の切っ先が向けられていた。


「よお、久しぶりだな。時坂ときさか


「あ、あはは、久しぶりだな。三人とも」


「時坂式時間拘束術の使い手で、その力でタイムマシンを作るとかいう野望を持っていたメガネ野郎が、なんでここにいるんだ?」


「まあまあ、落ち着けよ。杉元。元同級生である、この俺にこんな挨拶あいさつをするのは失礼だぞ」


「あいさつじゃねえ、おどしだ」


「おー、怖い、怖い」


「ところで、お前はなんでここにいるんだ? というか、お前が知っていることを全部話せ」


「……はぁ、仕方ないな。分かったよ、今から説明するから、ちゃんと聞けよ?」


「さっきからやっているナオトのマネをやめたら聞いてやらんこともないぞ」


「……あははは、やっぱりダメかー。まあ、僕みたいなのがナオト(あいつ)のマネなんかしても無駄むだだってことは分かってたんだけどね」


「今、お前のことはどうでもいいんだよ。さっさと教えろ」


「はいはい、分かりましたよ。コホン、えー、それではここがどこなのかをお教えしましょう」


「時坂くん、自分の自己紹介はしなくていいの?」


「おっと! 僕としたことがすっかり忘れていました! さすがですね、相馬さん。コホン、えー、僕の名前は……『時坂ときさか 賢太郎けんたろう』。時坂式時間拘束術の使い手で、メガネ属性の持ち主! どうぞ、これからもよろしくお願いいたします!」


「時坂くんも……あの頃と全然……変わってないね」


「そう言う高木さんも、あの頃と全然変わってないですね」


「ねえ……それ、どういうこと?」


「い、いえ、特に深い意味はありません。気にしないでください」


「……分かった」


「えー、それでは改めまして、ここがどこかをお教えしましょう! コホン、えー、ここは『神獣世界(モンスターワールド)』という異世界です!」


「それで? お前の目的は何なんだ?」


「僕の当面の目的は『ナオト』を見つけることです。そして、今度こそ勝ってみせます!」


「やめとけ、やめとけ。お前は一生、あいつには勝てねえよ」


「なぜ、そこまで断言できるのですか?」


「お前とあいつとじゃ、くぐってきた修羅場しゅらばの数が違うからだ」


「そうですか。ですが! 僕は諦めませんよ!」


「はいはい、それはもう分かったから、あたしらがこれからどうしたらいいか早く教えてくれ」


「はい、分かりました! ……とは言っても、あと僕が知っているのは、このまちが日本で言うところの奈良県だということだけなのですけどね」


「ちっ……使えねえな……。はぁ……んじゃあ、あたしらもとりあえず『ナオト』を探すからお前もついて来い」


「ぼ、僕が同行してもいいのですか!」


「あぁん? お前は、今も昔も『副リーダー』だろう?」


「そ、そうですね。そうですよね……。分かりました! ならば、僕も全力で三人をサポートしますよー!」


「はいはい、分かった、分かった。じゃあ、とっとと出発するぞ。日が暮れちまう」


「そうですね、先を急ぎましょう」


「ナオト……この世界にいるんだね……早く会いたいな」


「ちょっと! 置いてかないでくださいよー!」


 こうして、杉元、相馬、高木、時坂の四人は『ナオト』の波動を追うことにした……。

 ちなみに、時坂 賢太郎(黒髪)は、白いワイシャツと黒いズボンと白い靴下と白い運動靴を着用している。

獄立ごくりつ 地獄高校』の最初で最後の卒業生は、卒業記念でもらった『白いおまもり』で同級生の位置を特定することができる。

 探す対象を脳内のうないで意識することによって、その人物の居場所を特定できる。

 そしてこれは、絶対に肌身離さず持っていなければならないという意識を先生に植え付けられているため確実に探し出せる。


 *


「あれ? なんか、俺の元同級生たちが俺のことを探しているような……気のせいか」


 俺が朝ごはんを食べながら、そんなことを言うと。


「当たり前だ……ここに転移したやつはみんな、お前と合流することを……まず考える」


 名取がそう言った。(名取なとり 一樹いつき。名取式剣術の使い手で名刀【銀狼ぎんろう】の所持者。ナオトの高校時代の同級生。前髪で両目を隠しているのは、彼が人見知りだから。いつもは途切れ途切れに話すが、武器のことになるとよく話す。今はナオトたちと共に旅をしている。存在感がうすい)


「そういうもんかな?」


「そういう……ものだ」


「……そうか」


「ああ、そうだ」


 俺と名取は、ちゃぶ台の周りに座っている十人のモンスターチルドレンとその他の存在たちと共に、朝ごはんを食べながら、そんなことを話していた。

 はぁ……早く元の姿に戻りたいな……。

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