〇〇の本性? その14
数分後。悪魔型モンスターチルドレン製造番号 一の『ベルモス』が手と足を同時に出しながら、やってきた。なんでそんなに緊張してるんだ?
「おーい、大丈夫かー? ベルモスー」
「わ、私は大丈夫だよ! 師匠! 今、そっちに行くからね……って、うわっ!」
「ベルモス!」
緊張のあまり、足がもつれて、こけかけたベルモス(悪魔)を助けようと俺は瞬時に体を動かした。
幸いにも俺は立っていたため、瞬時にベルモスの両肩を支えることができた。
「大丈夫か? ベルモス。ケガはないか?」
「私は大丈夫……だけど」
「ん? どうしたんだ? どこか痛むのか?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど……」
「じゃあ、どうしたんだ?」
「だ、だって、師匠の手が……私のか、肩をガッシリ掴んでる……から」
「え? あー、すまない。非常事態とはいえ、びっくりさせたよな。ごめん」
その時、ベルモスの顔が真っ赤になっているのに気づいた。
「えっと、もしかして他人に触られるのは嫌だったか?」
「ち、違うよ! 師匠は全然悪くなんかないよ! 私が勝手に緊張しちゃっただけだから、その……心配しないで!」
「いや、そうはいかないな」
「え?」
「今日は【正直になってもいい日】なんだからさ、いちいち遠慮する必要なんてないんだぞ?」
「そ、そうだね、そうだよね。あははははは」
「それで? お前は俺に何をしてほしいんだ?」
「私が師匠にしてほしいこと?」
「ああ、そうだ。性行為とキス以外ならなんでもいいぞ」
「……えーっと、それじゃあ、私の名前をつけてくれないかな?」
「名前? ああ、そういえば、お前はまだ仮名だったな」
「うん。まあ、今の名前でもいいんだけど、ベルフェゴールとベヒモスを合わせただけだからね」
「そうか。『怠惰の姫君』である、お前にふさわしい名前だと思っていたのだが、お前が改名を望むのなら、そうしよう。でも、本当に俺が名付けてもいいのか?」
「うん! いいよ! 私は、師匠に一生ついていきたいからね!」
「そうか。なら、ちょっと待ってろ。今考えるから」
「うん! 分かった! じゃあ、それまで私は、師匠を『よしよし』しててあげるね!」
「いや、別に俺は……」
「こんなんじゃ物足りないの? じゃあ……脱ごうか?」
「今、座るから勘弁してくれ」
「分かった! それじゃあ、行くよー! よしよしー!」
俺がその場に座って、ベルモスに新しい名前を考えている間、ベルモスはずっと俺の頭を撫でていた。
____数秒後。(体感時間だから、詳しくは分からない)
「……ベルモス」
「なあに?」
「新しい名前、思いついたぞ」
「本当!」
「ああ、本当だ」
「じゃあ、早く教えて!」
「待て待て、そう焦るな。というか、座れ」
「うん! そうする!」
ベルモス(悪魔)は、俺と向かい合うように座った。
先端が尖っている黒いしっぽをフリフリとうれしそうに揺らしながら……。
俺はその様子を見てから深呼吸した後、少し間を置いてから、ゆっくりとこう言った。
「今からお前の名前は……『ライカ』だ」
「……えーっと、漢字で書くと、どういう字なの?」
「『雷』と華やかな方の『華』と書いて『雷華』だ」
「えーっと、ライカの雷は、私が使う固有武装の属性が雷だから?」
「ああ、そうだ」
「じゃあ、華は?」
「ん? ああ、それか。それはな、お前が『怠惰の姫君』とは思えないくらい明るいからだよ」
「へえ、そうなんだー! ありがとう! 師匠! ハグしてあげるー!」
「おっとと、急に抱きつくのは危ないぞ?」
「えへへー! 平気だよー! だって、師匠は絶対に私を受け止めてくれるんだもん!」
「ははは、ライカは本当に甘えん坊さんだな」
「あー、やっぱりいい名前ー! もっと呼んでー!」
「はいはい、分かったよ。その代わり、大人しくしてろよ?」
「はーい!」
こうして、モンスターチルドレン十人分の『心の暴走』……いや、『心の解放』状態を何とかすることができた。
俺は、この後、朝の八時まで寝るつもりだ。だって、もう深夜を過ぎているのだから……。
俺の鎖の力は使えば使うほど、体が化け物じみていくが、使いすぎると体が敏感になったりするため、休息が必要となる。
だから、一刻も早く寝たいのだ。
さてと、それじゃあ『ライカ』を寝室に連れて行きますか。