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〇〇の本性? その13

 俺は遊びつかれてねむってしまったシズク(ドッペルゲンガー)を寝室までおんぶで運んだが、どうやら休んでいるひますら与えてもらえないらしい。

 なぜなら、俺の背後に何者かの気配を感じたからだ。


「さて、次はお前の番だな……キミコ」


「待ちわびたぞ、あるじよ! さあ! わらわを楽しませておくれ!」


 俺はゆっくりと振り返りながら獣人型モンスターチルドレン製造番号(ナンバー) 一の『キミコ』(きつね巫女みこ)にこう言った。(俺とキミコは立っている)


「お前、いつのまに、いつものキミコに戻ったんだ?」


「い、いや、その、あれはうそだったのじゃよ」


「はい?」


「じゃからの、あれは……」


「そっかー。でも、残念だなー、俺のことをお兄ちゃんって言ってくれるのは、もう一人のキミコだけだったから、まあまあ好感度高めだったんだけどなー」


 俺がわざとらしく、チラチラとキミコを見ながらそう言うと、キミコは俺の望みを叶えてくれた。


「へえ、そうなんだー。けど、実はまだ別人格のキミコだから、お兄ちゃんって呼んであげるよー」


「そっか、そっか。それで、お前は俺に何をしてほしいんだ?」


「え、えーっと、その」


「ん? よく聞こえないぞ? もうちょっと声のボリュームを上げてみようか」


「いや、だから、その……」


「あー、眠いなー。なあ、俺もうても……」


「ダメえええええええええええええええ!!」


 俺が横になろうとすると、キミコ(きつね巫女みこ)は俺を押したおす勢いで、突っ込んできた。

 しかし、俺はその勢いを利用してキミコを両手で目の前まで持ち上げた。

 キミコは、足が地面についていないことに気づくと急に大人しくなった。そして、目をパチクリさせながら俺の顔を見ていた。

 俺はキミコをゆっくり下ろすと、ギュッ! と抱きしめながら、こう言った。


「俺がそんなことするわけないだろう?」


 その直後、キミコはギュッ! と俺を抱きしめた。


「うん、知ってるよ。お兄ちゃんが私たちにひどいことはしないってことくらい」


「俺って、そんなに信用されてるのかな?」


「お兄ちゃんは無意識に人を好きにさせる力があるから多分、そのせいかもしれないね」


「そうなのか? 全然自覚がないんだが」


「そんなこと私に分かんないよ! けど、少なくとも私はお兄ちゃんのこと、大好きだよ」


「ははは、そうか、そうか。ありがとな」


「うん! どういたしまして!」


 こんな時間がずっと続けばいい……そう思ったが、俺の目的はそれではなかったため、本来の目的を果たすために俺はキミコと目線を合わせた。


「それで? お前は俺に何をしてほしいんだ?」


「私がお兄ちゃんにしてほしいこと?」


「ああ、そうだ。あっ、性行為とかはしな」


「えー、そうなの?」


「当たり前だろ。俺がつかまってもいいのか?」


「でも、いずれは私たちの中のだれかとしなくちゃいけないよ? 分かってる?」


「分かってはいる。けど……」


「けど?」


「やり方が……分からないんだよ」


「えっ? お兄ちゃんって、チェリーさんなの?」


「うっ! 人が気にしてることをよく言えるな」


「ご、ごめんね、つい」


「別にいいよ、わざとじゃないんだろ?」


「うん!」


「なら、許す」


「本当! それじゃあ、お礼に私が教えてあげようか?」


「……え?」


「だーかーら、私がお兄ちゃんにやり方を教えてあげようって言ってるの!」


「え? そ、それは、その……あれか? セ……」


ちがうよ、お兄ちゃん。何言ってるの?」


「え? 違うのか?」


「私がお兄ちゃんに教えてあげられるのは【好感度の上げ方】だよ?」


「え? そうなのか? 俺はてっきり……」


「さあ! 始めるわよ! 第一回! お兄ちゃん育成講座!!」


「またこのパターンかよ」


「ほら! 文句言わない!」


「あー、はいはい」


「『はい』は、一回!」


「はーい」


「伸ばさない!」


「……はい」


「よろしい! では、最初のシーン!」


「……ホントに始まっちゃったよ」


「お兄ちゃんがまちを歩いていると、小さな女の子が泣いていました! さて、こんな時、お兄ちゃんはどうするべきでしょう!」


「えーっと、なぜ泣いているのかをいて、最善の策をり、それをすみやかに実行する」


「すばらしい! さすがはお兄ちゃん! 略して『さすおに』!」


「魔○科のネタを使いたかっただけだろ、それ」


「さ、さあて、次のシーンです!」


「おーい、無視するなー」


「お兄ちゃんが路地裏を歩いていると、小さな女の子が一人の男性に拉致らちされそうになっていました。さて、どうする?」


「うーんと、男性そいつなぐってでも止めて、女の子を安全な場所に誘導ゆうどうする、かな?」


「すばらしいですよ! お兄ちゃん! まさに神対応です!」


「そ、そうかな? なんか照れるな」


「はい! それでは、最後のシーンです!」


「よし、頑張るぞ!」


「こほん、えー、お兄ちゃんがまちで知り合った十数人の女の子に好意を持たれているとします!」


「ふむふむ」


「しかも全員、超絶かわいいです!」


「ほほう」


「そして、全員がお兄ちゃんのことが大好きだとします!」


「お、おう」


「ある日のこと、その十数人の女の子たちから求婚きゅうこんの申し出がありました!」


「なぜに?」


こまかいことは、気にしない!」


「いいんだ……」


「さあて、こんな時、どうするべきでしょう! それでは、お兄ちゃん! どうぞ!」


「……うーん、そうだな」


「正直な気持ちで言ってね?」


「分かってるよ。えーっと……すまない! 俺には、高校時代からずっと好きな人がいるから君たちの気持ちにはこたえられない! ……けど! 俺の兄妹きょうだいになってくれるという条件でいいのなら、俺の家族になってください! ……みたいな感じかな?」


「…………」


「どうしたんだ? 急にうつむいたりして。どこか具合でも悪いのか?」


 キミコ(きつね巫女みこ)は目元を片腕かたうででゴシゴシとこすって何かをぬぐうと、ニコッと笑った。


「ううん! 何でもない! お兄ちゃんはやさしい人なんだなって思っただけだよ!」


「え? ま、まあ、今のは、その子たちに家族がいないという前提での行動だから、適切かどうかは……」


「ううん! そんなことないよ! お兄ちゃんは、自分の気持ちを正直に言ってくれたから、今回の講座こうざはこれで終わりだよ! ということで、解散!!」


「え? 終わりなのか? というか、お前、俺に何かしてほしいことがあるんじゃなかったのか?」


「ううん、もういいの。私ね、今すっごく満足してるから!」


「そ、そうか。なら、寝室にもどるついでに、【ベルモス】に『次はお前の番だ』と伝えてくれないか?」


「うん! 分かった! それじゃあ、おやすみ! お兄ちゃん!」


「ああ、おやすみ。キミコ」


 キミコ(きつね巫女みこ)は、トテトテと寝室へとけていった。

 それにしても、おかしな講座こうざだったな。特に最後のは今の俺の家庭内事情に似てた気がするな。うーん、考えすぎかな?

 俺は特にそれを気にすることなく【ベルモス】(悪魔)が来るのを待った。

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