表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

117/420

〇〇の本性? その6

 前回のあらすじ。俺は、毎月十五日に『心の暴走』状態になるという、モンスターチルドレン(十人)を救うために、一人ずつではあるが俺にしてほしいことをかなえてやっている。

 今のところ、三人を攻略……というか、元に戻してやった。

 今は午後十時。朝の三時までに、あと七人を元の状態に戻さなければならないから、一人あたり一時間以内に終わらせなければならない。

 さあてと、睡魔すいまおそってくる前に終わらせるとするか!

 俺は寝室でねむっていたツキネ(変身型スライム)をおんぶでお茶の間に連れてくると、ツキネが仰向あおむけになるように床にそっと置いた。


「おい、ツキネ。次はお前の番だぞ、起きろ」


「……う、うーん……。兄……さん? あれ? 私どうしてこんなところに。さっきまで寝室でていたはずなのに……」


「それはな、お前をふくめた七人分の『心の暴走』をなんとかしないと、俺は一睡いっすいもできないからだ」


「なるほど、そういうことでしたか。つまり、今は兄さんとイチャイチャしても大丈夫ってことですね?」


「ん? ま、まあ、そうだな。それで? お前は俺に何をしてほしいんだ? 耳かきか? それともハグか?」


「ハグですー。私は今、猛烈に兄さんとハグしたいですー。ほーら、兄さん。早くこっちにおいでー」


 ツキネが両手を広げると、彼は彼女を膝の上に乗せた方がより密着できると思った。

 数秒後、彼はそれを実行に移した。


「はぁ……俺は赤ん坊かよ、まったく。じゃあ、俺のひざの上に乗せるぞ……っと。えーっと、これでいいか?」


「わーい! 兄さんの顔が目の前にあるー。でもー、私がかわいいからって、あんまりジロジロ見ないでくださいね?」


「はぁ? そ、そんなことするわけないだろ?」


「えー、そうなんですかー? 兄さんは、私のこときらいなんですかー?」


「いや、別にそんなことは……ない……ぞ」


「えー、本当ですかー?」


「あ、ああ、本当だ」


「あっ、今、一瞬躊躇(ためら)いましたね?」


「い、いや、決してそんなことは……」


「ほら、やっぱり。もしかして、照れてるんですかー?」


「そ、そんなわけあるか! というか、お前まだぼけてるだろ?」


「いえ、全て演技です」


「は?」


「あははははは! 兄さんってば、はとが豆鉄砲をくらったような顔してますー」


「え? あー、そういうことか。今までのは全部、演技だったのか」


「はい、そうですよー。ムギュー!」


「こ、こら! いきなりきつくなって!」


「ふふふ……兄さんは照れ屋さんですねー」


「う、うるさい」


「どうですか? 私の体。いつもの人間のはだとは違いますけど」


「どうって……お前は変身型スライムなんだろ? 全身水色の幼女に変身する必要あるのか?」


「……何言ってるんですか? これが、私の真の姿ですよ?」


「えっ? じゃあ風呂場で見た、ブヨンブヨンとした『ド○クエ』風のスライムは、なんだったんだ?」


「あれは、私の第三形態です」


「じゃあ、第一と第二は?」


「第一形態は『ウズラの卵』ぐらいの大きさで、第二形態は『野球ボール』ぐらいの大きさです」


「じゃあ、今は第何形態だ?」


「第四形態です」


「じゃあ、なんでいつも『橋本 かな子』さんの姿に変身しているんだ?」


 彼女は、このアパートの管理人。しかし、それ以外は何も分からない。ただし、家賃やちんはちゃんと取りに来る。


「私が兄さんの世界に行った時、初めて出会った人が彼女だったからです」


「そうだったのか。えっと、じゃあ、かな子さんの姿になってる時は、第何形態だ?」


「え? あー、えーっと、他人に変身している時は、そういう名称では呼ばれません」


「へえー、そうなのか」


「はい、そうです。あっ、ちなみにそのことを知っているのは今のところ兄さんだけです。だから……その……せ、責任とってくださいね?」


「そう……だな。じゃあ、お前の願いをかなえてやるよ。何か俺にしてほしいことはないか?」


「兄さんにしてほしいことですか?」


「ああ、そうだ。性行為とキス以外なら、なんでもありだ」


「そう……ですか。じ、じゃあ……私をもっときしめてください」


「ん? そんなのでいいのか?」


「はい、お願いします」


「そうか。じゃあ、行くぞ」


 俺は、ツキネ(変身型スライム)をギュッ! ときしめた。すると。


「えへへ、兄さーん」


 ツキネはそう言いながら、俺の胸に頭をこすり付けてきた。


「そんなにいいのか? これ」


「あー、なんだかクセになっちゃいますー♪」


「……まるで聞いちゃいねえ」


「えへへへへー、すりすりー」


「まったく、ツキネはいつからこんなに甘えん坊になったんだろうな……よーしよし、ツキネはかわいいなー」


「えへへー、もっと頭をでてくださーい」


「はいはい、分かったよ」


「んふふー。兄さーん、だーいすきー」


 おい、誰か! どうしてツキネがこうなったのか俺に教えてくれー!

 俺は心の中でそうさけんだが、結局ツキネ(変身型スライム)が満足してねむるまで頭を撫で続ける羽目になった。

 ____ツキネ(変身型スライム)がねむりにつくと俺は寝室までツキネを運んだ。

 その時、ふと、ツキネの目の色って変わってたっけ? と思った。

 説明しよう。『心の暴走』状態の時のモンスターチルドレンのひとみは、赤、青、緑、黄、黒が五分割された色に変わるのだ!

 しかし、ツキネの満足そうな寝顔を見ていると、そんなことは、どうでもよくなってきた。

 俺がツキネの頭を優しくでると、ツキネ(変身型スライム)は「えへへ、兄さーん」などと寝言ねごとを言いながら、気持ちよさそうに寝息を立てていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ