表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

112/420

〇〇の本性? その1

 俺たちが、アパートに戻ると留守番組が晩ごはんの準備をして待っていた。

 今日は『にゃんカツ』らしい。なんの肉か気になったため、ミノリ(吸血鬼)にくと、ライチーターという体にライチの実がなるチーターの肉だと言った。

 この世界の動植物は、独自の進化をげている。まるで『ト〇コ』の世界のようだ。

 俺たち冒険組はちゃぶ台の周りに座って、晩ごはんを食べ始めた。

 ____晩ごはんが済むと、俺はメルク(ハーフエルフ)も旅に同行させることをみんなに報告した。

 すると、彼女らはメルク(ハーフエルフ)の方を一斉に凝視ぎょうしした。

 まるで、体の外側と内側を調べるかのように。

 数秒後。それが済むと、今度は俺の方を向いた。


「な、なんだ? 俺の顔になんかついてるか?」


『………………』


「な、なんだよ……」


『……………………』


「お、おーい、生きてますかー?」


 その直後、複数の何かが目にも留まらぬ速さで移動した。

 そのすごさは俺がびっくりした拍子ひょうしにその場で硬直こうちょくしてしまうほどのものだった。

 俺が硬直しているのにもかかわらず、複数の何かは俺の体に自分たちの体を密着みっちゃくさせてきた。


「え、えーっと、これはいったいどういうことなんだ? だれか説明してくれ」


 俺がそう言うと、ミノリ(吸血鬼)が説明し始めた。


「別に説明する必要はないと思ったけど、あんたが理解できてないみたいだから説明するわね」


「ああ、よろしく頼む」


「それじゃあ、簡単に説明するわね」


「お、おう」


「あたしたちがこんなことをしている理由……それはズバリ! あんたのエキスを補充ほじゅうしているからよ!」


「……は?」


「だーかーらー! あんたの成分、つまり『ナオトエキス』を補充ほじゅうしてるのよ!」


 ナオト……エキス? なんだそれ? 俺の体の中にしか存在しない未知の物質か?

 説明しよう……。『ナオトエキス』とは、彼の体に密着みっちゃくすることで得ることができるプラスのエネルギー、つまりぬくもりのことである!

 ちなみに、ここに住んでいる彼女らは彼の温もりがしくて毎晩、誰が彼とるかで議論している。

 しかし、彼女らは彼のことに関しては一切、ゆずる気がないため結局決まらないのである。


「なるほど、そういうことか。けど、そろそろ終わりにしてもらえるとうれしいな」


 すると、彼女らはこう言った。


『あと、五時間ー』


「おい、それは、あと五分の間違いだろ! というかいい加減にはなれろー!」


 俺が必死にはなそうとするが、彼女らの握力あくりょくすごすぎて一向にはなれなかった。

 その時、俺がふと、まどを見ると、外が暗くなっていた。


「お、おい、お前ら。外見てみろよ。もう夜だぞ?」


 ミノリ(吸血鬼)は。


「それがどうしたっていうの?」


「いや、その……風呂ふろに入りたいからはなれてくれないか?」


「……はぁ……仕方ないわね。みんなー、一旦いったんナオトからはなれるわよー」


『はーい』


 全員がそう言いながら、ようやく俺からはなれてくれた。はぁ、よかった。ずっとあのままの体勢たいせいだったら、どうなっていたことか。

 まあ、何はともあれはなれてくれたから良しとするか。俺は、そう思いながら、風呂ふろ場に向かった。

(彼女らは水が弱点なので風呂ふろに入れない。しかし、その代わりに風呂ふろに入らなくていい。なぜなら、よごれをはじうすまくおおわれているからだ。だが『例の火山』の温泉のようなところなら入れる)


「……暴走……するんだよな? あいつら……。うーん、でも何で毎月十五日の満月の夜に暴走するんだ? 満月の光を浴びると変身するわけでもないのに。はぁ……モンスターチルドレンの体の構造はよく分からないなー」


 俺が湯船にかりながら、そんなことを考えていると。


「そんなこと言わずに、もっと私たちに関心を持ってくださいよー」


「いや、そうは言ってもだな……って、あれ? 今のだれの声だ?」


 あたりを見渡すが、人の気配はなかった。人の気配は。


「兄さん、どこを探してるんですか? 湯船ゆぶねかった時から、私は兄さんの頭の上にいますよ」


「えっ? 俺の頭の上?」


「はい、そうです。軽すぎて分からなかったですか?」


「俺の頭に乗れるやつはチエミぐらいしかいないと思うが、その口調から察するに、お前はチエミじゃないな?」


 ※チエミ(体長十五センチほどの妖精)。


「はい、そうです。私はチエミさんではありません。では、私はいったいだれでしょう!」


「クイズか。何か賞品はあるのか?」


「そうですねー、じゃあ、正解したら背中を流し合いっこできる権利を与えましょう!」


「……そうか。うーん、誰かなー」


「三分間、待ってあげます!」


 どこぞやの大佐のセリフを言っていたが、俺はそれを無視して、考え始めた。

 頭に乗っていたのにもかかわらず、俺が気づかないくらい軽いやつなんていたかなー?

 でも、俺のことを知っているということは、この家にいるだれかだよな。

 よし、まあ、とりあえず俺がこの世界に来る前に出会ったモンスターチルドレンの名前を挙げていくか。


 ミノリ(吸血鬼)。


 マナミ(茶髪ショートの獣人ネコ)。


 シオリ(白髪ロングの獣人ネコ)。


 ツキネ(変身型スライム)。


 コユリ(本物の天使)。


 ん? 待てよ。変身型スライムなら、自分の体を好きなように変えられるんじゃないか?

 あくまでも予想だが、確信はある。よし、言ってみよう。

 俺は思い切って、彼女にこう言った。


「お前は……ツキネだな?」


 数秒の沈黙ののち


「ピンポーン! 大正解でーす! 兄さんなら、答えられると信じていましたよ!」


「そうか。なら、早く頭の上から下りてくれないか? というか、お前は水にれても大丈夫なのか?」


「はい! ツキネは大丈夫です!」


「それは『か〇これ』の『は〇な』のマネか?」


「な、なんのことですか? ツ、ツキネに落ち度でも?」


 今のは『か〇これ』の『し〇ぬい』のマネだな。


「……前から思っていたが、お前らのそういう知識はどこから……いや、だれから教わったんだ?」


「さ、さぁ? 誰からでしょうねー?」


「……うーん、まあ、今はいいよ。いずれ分かることだから」


「は、はい、ありがとうございます」


「……で? 背中を……その……流し合いっこするのか?」


「え? あっ、そういえば、そうでしたね。すっかり忘れてました」


「忘れてましたって、お前な……。まあ、いいや。それより、早く下りてくれないか?」


「あっ! はい! すみません!」


 ツキネ(変身型スライム)は、そう言うと、俺の頭からいなくなった。


「さて、やりますか……って、あれ? おーい、ツキネー。どこにいるんだー?」


 俺が湯船から出て、ツキネを探していると、足元から声が聞こえた。


「兄さーん! 私はここですよー! ここー!」


 俺が声のした方を見ると、直径二十センチほどの水色の液体のかたまりが円と楕円だえんの間の形になって、フヨン、フヨンと動いていた。


「なんだ? このスライムは……。いったい、どこから……って、お前、もしかしてツキネ……なのか?」


「はい! そうです! スライム型モンスターチルドレン製造番号ナンバー 一の『ツキネ』です!」


「えっと、それがお前の真の姿なのか?」


「いえ、少し違います」


「そうか」


「はい! まあ、今はそんなことはどうでもいいんですけどね」


「いいのかよ」


「それよりも、早く背中を流し合いっこしましょうよ!」


「悪い、ちょっと待ってくれ」


「何ですか? 何か不満でもあるんですか?」


「いや、不満というか、お前はスライムなんだよな?」


「はい! 変身型スライムです!」


「水にれても大丈夫なんだよな?」


「問題ありません! この姿になるだけです!」


「水はモンスターチルドレンにとって弱点じゃないのか?」


「ご安心を! 私の体の九九・九九パーセントは水でできているので問題ありません!」


「そうなのか。というか、脳みそはちゃんとあるのか?」


「失礼ですね! ちゃんとありますよ! まあ、私の体、そのものが脳みそのようなものですけどね」


「そ、そうか」


「はい! そうです!」


「うーん、でも、その姿のままだと背中を流し合うのは無理だろ?」


「兄さん!」


「な、なんだ?」


「無理と疲れたと面倒くさいを今後一切、私の前で言わないでください!」


「えーっと、お前はシャーロック・ホームズ四世である神〇・H・アリアさんか?」


「いえ、違います……って、今はそんなことどうでもいいです!」


 どうでもいいのか。


「というか、兄さんは『緋〇のアリア』の見過ぎです!」


「えっ? そうかな?」


「そうですよ! 今は、私と話しているのですから私と話してください!」


 話題を出したのはお前だったような気がするが……まあ、いいか。


「兄さん、聞いてますか?」


「ああ、聞いてる、聞いてる。で、なんだっけ?」


「私と兄さんは背中を流し合いっこできる! ということについてです!」


「ああ、そうだったな。それで? 具体的にはどうするんだ?」


「それはですねー」


「うんうん」


「兄さんは、少し目を閉じていてください」


「ん? あ、ああ、分かった」


 俺は目を閉じて、ツキネ(変身型スライム)がいいと言うまで待った。そして……。


「もういいですよー!」


 ツキネの声がしたため、目を開けてみた。すると、そこには。


「えーっと、どちらさまですか?」


「えー! どう見ても私じゃないですかー!」


「いや、でもな」


 分かりやすく言うと、全身水色で髪はこしの少し下のあたりまである幼女がそこにいた。

 先ほどまで、そこにはフヨン、フヨンとしていたスライムがいた場所に。

 だれだって先ほどまでスライムだったやつが幼女の姿になってあらわれたらおどろくと思う。

 俺だって、体は化け物じみていっているとはいえ、心は普通の人間なのだ。そういうのは察してほしい。

 俺がそんなことを考えていると、ツキネ(変身型スライム)は俺の右手を両手でにぎってきた。


「ん? どうしたんだ? ツキネ。急に手なんかにぎって」


 ツキネは、俺の手をまるで産まれたての赤子を見るような目で見ながら、こう言った。


「相変わらず、兄さんの手はとてもさわり心地がいいですねー。あー、このまま私のものにしたいぐらいですー。さすさすー♪」


「え、えーっと、お前、大丈夫か? なんか少し顔が赤いぞ?」


「えー、そんなことないれすよー」


「いや、しゃべり方もおかしいぞ? 本当に大丈夫か?」


「大丈夫れすってー。んふふー」


 うーん、これはまずいな。明らかに様子がおかしい。

 いつからだ? いや、おそらく風呂ふろに入ってきた時から、そういう兆候ちょうこうはあったはずだ。

 だが、ツキネ自身もそれに気づかなかった。なぜだ? まさか、今日がモンスターチルドレンが暴走する日だからか?


「兄さーん!」


「うわっ! ちょ! おま! いきなり何すんだ! はなせ!」


 俺がそんなことを考えているとツキネ(変身型スライム)が、いきなり俺に抱きついてきて、そのまま俺を押し倒した。


「兄さーん、好きれすー」


「こ、こら! 引っ付くな!」


 俺が抵抗ていこうすると、ツキネは。


「ダーメーれーすー! 兄さんは私のものれすー!」


 俺をはなすどころか、さらにきつく俺を抱きしめた。

 ま、まずい! ツキネの柔肌やわはだが直接俺の体に当たって! や、やばい! このままでは俺がどうにかなってしまう! 何か! 何かいい方法はないか! 考えろ! 俺!

 俺が必死に考えていると、ツキネはいつのまにかスウスウと寝息ねいきを立てていた。

 俺がツキネの顔を見ると、ツキネは幸せそうな表情を浮かべながらねむっていた。


「んふふー、兄さーん、好きー」


「……えっと、助かった……のか?」


 ツキネ(変身型スライム)は完全に俺に身を預けている。

 まったく、信用しすぎにもほどがあるぞ。俺がお前をおそわないとは限らないのに。


「兄さーん、愛してるー」


「……幼女に好かれるのにはれたが、理性をたもつのにはれないな。よいしょ……っと」


 俺はツキネを抱きかかえると頭をそっとでてから、風呂場を出た。

 俺は自分とツキネの体をタオルでくと俺は寝巻きに着替えた。

 ツキネの体にはタオルを巻いた。

 その後、俺はみんながいるところまで、ツキネをおんぶで運んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ