表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

106/420

〇〇は『若葉色に染まりし洞窟』に行く? その5

 えー、俺が今、どんな状況かというと……。


われはお前の体に宿る、その力をわれの体の一部にして、この世界の王になる! その野望をかなえるためには、お前が邪魔だ! さっさとくたばるがいい!!」


「お前みたいなやつに、この力を渡すわけねえだろ!」


 洞窟どうくつぬしである【エメライオン】(体長十メートルほどの獅子しし)と戦っています。


「なあ、『力の中心(センター)』! 第二形態になるにはどうしたらいいんだ! 俺の体力がきる前に教えてくれ!」


 俺は『大罪の力を封印する鎖トリニティバインドチェイン』という十本のくさりを背中から出して戦っている最中に、俺の体の中にいる【誕生石】の一つ【アメシスト・ドレッドノート】にそんなことをいた。

 ちなみにこの時、俺の目は黒から赤に、かみの色は黒から白に変わっている。そして、俺のくさりはもともと彼のものである。


あるじの願いは理解した。しかし、第二形態になれるかは……」


「俺次第ってことか? 定番だな、おい」


 俺は【エメライオン】の攻撃こうげき回避かいひしながら、そう言った。それに対して、彼は。


「第二形態になるということは、人ならざるものへの階段を上がるということだ。われの力を先代の誕生石使いが使わなかったのは、それだ」


「へえ、それは……すごいな」


 注:これからのナオトのセリフの『……』は【エメライオン】の攻撃を回避している時です。


「だが、それゆえに強力な力を手に入れることができる」


「『紫水晶の形態(アメシスト・モード)』と比べて、体の負担は……大きいのか?」


「いや、あれとは根本的こんぽんてきに違う。あれは最終形態に似ているが、所持者の潜在能力せんざいのうりょくを無理やり引き出すため、体にかかる負担はきわめて大きい。【暴走】の一歩手前の形態と言っても過言かごんではない」


「そっか。で? 第二形態になるには……何をすればいいんだ?」


「……もし、われを今以上に受け入れることができればなれるやもしれん」


「なんだよ、お前自身もよく……分かってないじゃないか」


われと適合できたのは先代を除いてあるじだけなのだ。仕方ないだろう」


「それも……そうだな。なあ、先代の誕生石使いって【誕生石】をそれぞれ体のどこに……入れてたんだ?」


われが知る情報によると頭部、右腕、左腕、右足、左足にそれぞれ五つ。そして胴体どうたいに二つだったそうだ」


「お前がもし先代に使われてたら……どこに入ってたんだ?」


「うーむ、おそらく胴体に入っていただろうな」


「どうして……そう思うんだ?」


「胴体に入っていた二つはそれぞれ胸筋きょうきんの中に入っていた。よって、われが入っていたであろう場所は……」


「【へそ】ってことだな。なるほど、なるほど。たしかに【へそ】には入れたく……ないな」


「そういうものなのか?」


「母親とつながっていた場所に何かを入れるなんてことは、普通のやつはしない……からな」


「もし、あるじなら、そんな時はどうするのだ?」


「えっ? 俺か? そうだな……まあ、勝つためなら【へそ】の中だろうと【〇〇たま】の中だろうと入れるだろうな」


「……なるほど……よし、今の言葉をわすれるなよ? あるじよ」


「ああ! もちろんだぜ! 相棒あいぼう!」


 俺は【エメライオン】のすきをついて【エメライオン】がひっくり返るくらいのりをひたいに入れて着地した。

 注:空を飛べるのは、チエミ(体長十五センチほどの妖精)から風の加護かごを受けたからである。


「よし、今だ! 第二形態になれ! あるじよ!」


「なあんだ、意外と簡単じゃねえか。あと、俺のことは、これから名前で呼んでくれ。堅苦かたくるしいからさ」


承知しょうちした。では、ナオトよ。第二形態に名前をつけてくれ」


「名前? うーん、そうだな」


「早く決めろ、やつがおそってくるぞ!」


「分かってるって! えーっと……」


 第二形態か……うーん、『ア〇メがる!』に出てくる『イ〇クルシオ』みたいな、かっこいい名前がいいな。かっこいい名前……かっこいい名前……おっ! これでいいんじゃないか!

 俺がピコン! と思いついたその名前は、かなりかっこいい名前だった。

 『力の中心(センター)』にそれを教えている時、その声は【エメライオン】が動く音でかき消されてしまった。


「よし、それで行くぞ! ナオト!!」


「ああ! やろうぜ! 相棒あいぼう!!」


「ベラベラとひとごとを言いながら、ちょこまかと動きおって! 正々堂々、戦わんか!」


【エメライオン】はおこりながら、そう言った。その後、俺はニシッと笑った。

 注:【エメライオン】には、彼が彼の相棒と話している間は、彼の声しか聞こえない。

 それは、彼の相棒が念話で彼に話しかけていたからである。

 分かっているとは思うが、ナオトの『……』は【エメライオン】をったあとからは、を表している。


「これから見せてやるよ! 俺の……いや! 俺たちの新しい力を! 行くぞ! 相棒あいぼう!」


承知しょうちした! われともにやつをたおすぞ!」


「言われるまでもねえ! やってやるさ!」


「よし、ならばともさけべナオト! あつたましいで!!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 その時、ナオトの体から放たれた風圧は【エメライオン】だけでなく、その場にいる全ての生物の体をふるわせた。

 ____そして、ついにその時はやってきた!


『【白くあどけない香雪蘭(ホワイト・フリージア)】アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』


 その時、ナオトの体から放たれた風圧はその場にいる全ての生物が吹き飛んでしまうかもしれないような勢いであった。

 メルク(ハーフエルフ)は瞬時しゅんじに半球型の結界を張って自分とマナミ(茶髪ショートの獣人ネコ)とナオトのバッグを守った。

【エメライオン】は必死に地面をみしめて、吹き飛ばされないように踏ん張っていた。

 それが止んだ時、ナオトの姿が一変していた。

 全身をおおう『白いよろい』と『あかひとみ』が特徴的であったが、くさりの数は変わらず十本であった。


「これが俺の……いや、俺たちの新しい力だ!」


 俺が両手を開いたり閉じたりして、自分の力がどれほどまでになったのかを確認していると【エメライオン】が嘲笑ちょうしょうしながら言った。


「ふん! 姿が変わったところで、われには到底とうていおよぶまい!」


 俺は【エメライオン】の方を見上げながら、こう叫んだ。


「それは今から証明してやるよ! 未来のことは未来予知でもなけりゃ分からないからな! それじゃあ、行くぞ! エメライオン!」


「望むところだああああああああああああああ!!」


「第二形態の力を見せてやる……『電光石火ジェットアクセル』!!」


 その時の俺には、こちらにおそいかかってくる【エメライオン】の動きがとてもおそく感じられた。

電光石火ジェットアクセル』はくさりの力を入手した時から使えたが、今回は明らかに違った。

 俺の目が相手の動きについていけるようになったということなのだろうか?

 いや、だとしたら今ごろ俺はやつを瞬殺しゅんさつしているはずだ。だとしたら、これが第二形態の効果だということだな。

 そんなことを考える時間があるほど、やつの動きがおそく感じたため、俺は【エメライオン】のひたいねらいを定めると、大地を踏みしめた。

 その後、圧縮されたエネルギーを一気に解き放ち、目標めがけて跳躍ちょうやく&飛行した。


「これで! 終わりだあああああああああああああああああああああああああ!!!!」


 俺のこぶしは【エメライオン】のひたい直撃ちょくげきした。

 その直後、『若葉色の水晶(エメラルド)』製の体にピキピキと亀裂きれつが入り、それは徐々(じょじょ)に全身に広がっていった。


「戦いながらおのれかべを打ち破り、新たな力を得た……か。ふん、なかなか面白いやつだな。お前は」


「いや、それは違うよ。お前がいたからこそ、俺は新たな力を手に入れることができたんだ。ありがとう、【エメライオン】」


おのれを進化させた敵に感謝をする戦士……か。ふん、それもまた、一興いっきょうやもしれんな……ナオトよ、お前に全二十八の誕生石の一つ、『若葉色の水晶(エメラルド)』の力を与える。受け取ってくれるか?」


「試験は合格……ってことだな。いいぜ、お前の力は俺がきっちり受け取ってやる! だからもう、ゆっくり休んでくれ。これからは、俺が……いや、俺たちがお前の力を受け継ぐんだからよ!」


「そうか。ならば、が身にれよ。さすれば、お前の望みはかなうだろう」


「ああ! 分かった!」


 俺が【エメライオン】の方にると、【エメライオン】は俺の方にひたいを近づけた。


「えーっと、さっき俺がこわしたところが空洞くうどうなんだが、大丈夫なのか?」


「問題ない。さあ、お前の手でわれの中にある力をつかるがいい!」


「……ありがとう【エメライオン】。お前が今まで守っていた力……大切に使わせてもらうよ」


 俺はそう言いながら、【エメライオン】のひたいの穴に手を入れた。

 すると、少し進んだところに何かがあったため、俺はそれを取り出した。

 それは、あたり一帯を照らすほどの黄緑色の光を放ちながら、俺の手をはなれると空中をふわふわと飛行し、胸骨きょうこつあたりから俺の体の中に入ってしまった。


「これで終わりか? なあ、【エメライオン】。今のでおわ……」


「さらばだ、二代目の誕生石使い。また会える時を楽しみにして……いる……ぞ」


 そう言い残して【エメライオン】は黄緑色の光のつぶとなって消えてしまった。まるで最初からそこには何もいなかったかのように……。


「……ありがとな、【エメライオン】。お前のこと、絶対に忘れない。また会えるといいな……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ