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〇〇は『若葉色に染まりし洞窟』に行く? その4

「それにしても、ここはモンスターが出ないな」


 俺がそんなことを言うと、メルク(ハーフエルフ)がこう言った。


「ここに住むモンスターたちは、ここに鉱物がある限り、私たちをおそったりはしません。食べ物に困っていない時には、モンスターをたおす必要がないのと同じです」


「そっか。なら最深部には、すんなり行けるな」


「いいえ、そうとも限りませんよ」


「えっ? それはどういう意味だ?」


「この洞窟どうくつに限らず、あらゆる場所には『ぬし』がいます」


「ほほう、それでそれで」


ぬしは、その土地の王様ですから、自分の土地に入ってきたもの抹殺まっさつするよう部下に命令することは容易たやすいことです」


「なるほど。ということは、そのぬし機嫌きげん次第で俺たちの生死が決まるわけだな」


「はい、その通りです。なので、十分注意して進まないと……」


 その時、三本の長針ながばりが俺の方に向かって飛んできた。

 俺は、マナミ(茶髪ショートの獣人ネコ)をおんぶしていたため、(マナミは寝息を立ててねむっている)それを回避かいひしようにもできなかった。

 だが、メルクはそれらをタイミングよくキャッチして、俺を守ってくれた。


「こうなりますよ?」


「あ、ありがとう、メルク。助かったよ」


 メルクはニコッと笑って。


「いえいえ、お安い御用ごようですよ。さぁ、先に進みましょう」


「お、おう」


 その後、俺たちはどんどんおくに進んでいった。


「……なあ、なんか空気が重くなってないか?」


 俺がメルクに、そうたずねると。


「そうですね。なんでしょうか? このいやな空気は」


「うーん、なんか何かに見られているような気がするな」


「……ナオトさん、ちょっといいですか?」


「ん? なんだ? 何か分かったのか?」


「いえ、少し目を閉じていただけたらな、と思いまして」


「やっぱり、何かいるんだな」


「……はい、少なくとも二十体はいますね」


「モンスター……だよな。やっぱり」


「はい、その通りです。どうやら私たちは、ここのぬしに目をつけられてしまったようです」


「……そうか。よし、分かった。ここで待ってればいいのか?」


「はい、私が合図をしますので、それと同時に目を閉じながら、その場で立ち止まってください」


了解りょうかいした。気をつけろよ」


「はい……それでは、行きます。せーの……はい!」


 メルクの声が聞こえたため、俺は目を閉じながら、その場で立ち止まった。


『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』


 その直後、複数のモンスターの断末魔だんまつま背後はいごから聞こえたが、俺はその場にとどまり続けた。


「ハーフエルフに勝とうだなんて、一億年早いのよ。ザコモンスターども……。ナオトさん、もう大丈夫ですよ」


 俺は目を開けて、振り向こうとしたが。


「こちらを見ないほうがいいですよ。若葉色ですが大量の血液を見ることになりますから」


「そ、そうか。あははは、メルクは強いんだな」


「いえ、ハーフエルフの力はこんなものではないですよ。私の住んでいた村の中で一番強かったもの打撃だげきで竜のうろこくだいていましたからね。もちろん、強化魔法を使っていましたが」


「なんだそれ、すげえな」


「では、ナオトさん。先を急ぎましょう」


「お、おう」


 メルクの活躍かつやくにより、俺たちは洞窟どうくつの最深部へと近づいていった。

 だが、それをここのぬしは許さなかった。

 なぜなら、最深部手前の少し広いフロアで俺たちの前にその姿をあらわしたからだ。(広いフロアに来た時には、もういた)


「ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


 それは全身が『若葉色の水晶(エメラルド)』でできている獅子ししだった。

 体長は十メートルほどで、その姿はまさしくこの洞窟どうくつぬしにふさわしいものであった。


洞窟どうくつぬしよ! 私たちはここをらすためにきたのではありません! 通してください!」


 メルクがそう言うと『獅子しし』は。


「ハーフエルフのむすめよ。われ貴様きさまではなく、貴様きさまの後ろにいる男に用があるのだ。席を外せ」


「できません! このかたは関係ありません!」


「ほほう、この洞窟どうくつぬしである、【エメライオン】にさからうのか? きもすわったむすめだ。だが、貴様きさまの要求は却下きゃっかする」


「なぜですか! この方は、ただの人間なのですよ!」


「人種は関係ない。ただ、その男から感じるオーラが気になっただけだ」


「では、彼に何もしないとちかってください」


「……ふん、いいだろう。では、ここでちかおう! われはその男に一切の危害きがいを加えぬと!」


「もしも破ったら、あなたを跡形あとかたもなく破壊はかいしますからね」


「約束は絶対に守る。それがこの土地の……」


「さっきから、ごちゃごちゃうるせえよ。用があるのは俺なんだろう? なら、手短にませてくれよ。頼むから」


「ナオトさん! そんなことを言ったら……!」


 メルクが最後まで言い終わる前に【エメライオン】は急に笑い始めた。


「ふふふふふ……ふははははは!! なるほど、やはりそうか! ただの人間がわれを目の前にして恐れをいだかないのは、そういうことか! 貴様きさまは、おのれの肉体に【誕生石】を宿しているようだな?」


「えっ? ああ、うん、『力の中心(センター)』……いや、『アメシスト・ドレッドノート』のことだろう? たしかに俺の体内にいるが、それがどうかしたのか?」


「まさかとは思ったが、伝説を知らずに宿しているものがいたのだな。いいだろう、貴様きさまの中にいる【誕生石】についての情報を与えよう! 光栄こうえいに思うがいい!」


 た、誕生石……! 所持者の体の一部と引き換えに石言葉の力を与えるという、伝説の石じゃないですか! どうしてこの方がそんなものを?

 メルク(ハーフエルフ)は心の中でそう言ったが、まずは彼とぬしの話を聞くことにした。


「あー、はいはい。分かったから、手短にな」


「うむ、では話すとしよう」


 そこから、【エメライオン】の話が始まった。(話が長すぎるため、ナオトが脳内で情報をある程度、取捨選択したものをお伝えします)

 話を聞き終わった俺は「要するにあれだろ」と言ってから、誕生石のことについて話し始めた。


「この世界に人類が誕生して少しったある日、この世界に災厄さいやく降臨こうりんした。それが『五帝龍ごていりゅう』の実の父親である【帝龍王ていりゅうおう エンペラードラゴン】。人々はこの世界を破滅はめつへと導く存在と勘違いして、そいつを天界に帰そうとした。けど、帰ってくれなかった。そこで人類は誕生石の力を使って、そいつを天界に帰そうとしたがそれに適合した者は一人しかいなかった。人類は仕方なく、そいつにまかせて、自分たちは安全な場所に避難ひなんした。当時の誕生石使いは全二十八個のうち二十七個の石をその身に宿し、たった一人でそいつを天界に送り返すために戦い、最期さいごは石の力に心身ともに耐えきれなくなってその一生を終えた。こんなもんか? エメライオン?」


「うむ、人間にしては上出来だ。しかし、それだけでは九十点だな」


「ん? まだ何かあるのか? お前の話からは、これ以上のことは分からなかったぞ?」


「そんな……まさか!」


 突然、驚嘆きょうたんの声を出した、メルク(ハーフエルフ)の顔を見ると青ざめていた。両手をほほに近づけてガタガタと体をふるえながら……。

 俺は、その理由をメルクにたずねた。


「メルク、どうしたんだ? そんな声を出して。何か気づいたのか?」


「……ナ、ナオトさん! あなたの中にいるのは!」


「いるのは?」


「そこまでだ、小娘。ここからはわれが直接こやつに話す」


 俺は【エメライオン】の方を向いて。


「俺は『本田ほんだ 直人なおと』だ! こやつじゃない!」


「そうか、それはすまなかった。では、ナオトよ。答え合わせだ」


「おう、言ってみろよ」


【エメライオン】は少しを置いてから語り始めた。


「ナオトよ、お前の中にいるのは先ほど言った全二十八個の【誕生石】の中で唯一ゆいいつ、先代の誕生石使いが使おうとしなかったものなのだ」


「……ふーん、そうなのか」


「ん? あまりおどろいていないようだな」


「いや、だって、こいつはもう俺の相棒あいぼうなんだぜ? 自分の相棒あいぼうを俺がこわがってたら、この世界でやっていけねえよ」


「ふふふふふ……ふはははははははは!! なるほど! その石に認められるほどのものは、考え方も面白いときた! これは傑作けっさくだ! ふははははは!」


「…………なあ、そろそろ俺にその話をした真の理由を教えてもらえないか? エメライオン」


【エメライオン】は、笑うのをやめて本題に入った。


「ふむ、やはり気づいていたか……いかにも! われこそは、この洞窟のぬしにして若葉色の水晶(エメラルド)を守りし者! さあ! お前の力をわれに見せてくれ! ナオト!!」


 俺はメルク(ハーフエルフ)の方を向いて。


「……メルク、ちょっといいか?」


「は、はい! なんでしょうか! というか、なんで戦う雰囲気ふんいきになってるんですか! 明らかにおかしいですよ!」


「話が終わったから、お前とあいつの約束は破棄はきされたんだよ。それよりも、マナミと俺のバッグを安全なところに運んでくれ」


「し、しかし! それでは、あなたが……!」


「……第二形態」


「えっ?」


「俺は、とりあえず【アメシスト】の力を使いこなせるようにならなきゃいけない。できれば今日中に第二形態になれるようになりたいな」


「そんなの無理ですよ! あの大きさのモンスターと戦うなんて! 今からでも遅くありません! 逃げましょう!」


「……メルク、出会って早々(そうそう)に悪いが先にあやまっておく。俺は昔からこういうやつなんだよ。だから、頼まれてくれるか?」


「…………絶対……絶対に五体満足で勝つと、約束してください! そうじゃないと、私は……!」


 俺は、メルクのひたいに俺のひたいかさねた。


「……ありがとう。頼りにしてるぞ。メルク・パラソル」


「…………!!」


 俺は、マナミを下ろして、バッグを地面に置くと【エメライオン】に向かって走り出した。


「ナオトさあああああああああああああああん!!」


 結局けっきょく、俺はいつも、こうなっちまうんだよなな。でも、それが俺の生きがいでもあるから仕方ないよな!


「『大罪の力を封印する鎖トリニティバインドチェイン』!!」


 さぁて、りの時間だ! こうして、俺と【エメライオン】との戦いがまくを開けたのであった。(くさりの力は【アメシスト】が俺にくれたものである)

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