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〇〇は『若葉色に染まりし洞窟』に行く? その3

 前回、俺とマナミ(茶髪ショートの獣人ネコ)とシオリ(白髪ロングの獣人ネコ)とキミコ(きつね巫女みこ)とルル(白魔女)で、『若葉色に染まりし洞窟どうくつ』の中を調査していた。

 しかし、途中でマナミ以外とはぐれてしまった。それだけでなく、黒いローブを着たうすい灰色のショートヘアと黒いひとみが特徴的なハーフエルフと出会った。

 彼女は、この洞窟のどこかにあるというハーフエルフ族の宝と複数のモンスターチルドレンと契約している俺を探しに、この洞窟に来たらしい。

 戦闘になることも考えていたが、マナミのおかげでそんなことにはならず、訳あって名前がなかった彼女に俺は【メルク・パラソル】という名前をつけた。

 そのお礼に、この洞窟を案内してもらうことになったのが、例の三人が何をたくらんでいるのかよく分からない状況での探索たんさくとなりそうだ。


「ナ、ナオトさん、もう大丈夫ですから、その……下ろしてください」


 泣き疲れてねむっていたマナミをおんぶで運んでいた俺はマナミが起きたのを確認すると、その場に静止し、ゆっくりと彼女を地面に下ろした。


「もう大丈夫なのか? マナミ」


 俺はマナミの視線に合わせるためにしゃがんで話しかけた。

 すると、マナミはほほを真っ赤に染めながら、こう言った。


「えっ、あっ、はい。だ、大丈夫です。ご心配をおかけしました。すみません」


「いいんだよ、そんなことは。それより、お前のあの熱弁はすごかったな。マナミの意外な一面が明らかになったよ」


「あ、あれは……その……自分の気持ちが制御しきれなくなっただけなので、全然すごくないです」


「そうか? 俺は堂々と話している、お前はかっこいいと思ったけどな」


「そ、そうですか。そ、それより、先を目指しましょう」


「ん? ああ、そうだな。早くしないとミノリ(吸血鬼)とかにおこられそうだからな」


 その時、ハクション! とアパートにいるミノリがくしゃみをした……。


 俺はしゃがむのをやめて、進行方向を向き、歩き出そうとした。だが、その時。


「ナオトさん、目を閉じながら、こちらを向いてもらえますか?」


 マナミ(茶髪ショートの獣人ネコ)がそう言ったため、俺は。


「ん? ああ、分かった」


 マナミの言った通りのことをした。

 すると、マナミが俺の体をよじ登ってきた。


「あ、あの、運んでいただいて……その、ありがとうございました。今からするのは、そのお礼です。受け取ってください!」


 なるほど、そういうことか。俺はそう思いながらもマナミにこう言う。


「俺ははなからそのつもりだよ。だから、遠慮えんりょはするな。お前のやりたいようにやれ」


「は、はい! でででで、では、やりますね!」


 俺は目を閉じたまま、マナミのお礼を受け取るために、その場で静止していた。

 少し躊躇ためらっているのか、ほんの少しだけ間があったが。


「大好きですよ、ナオトさん」


「……チュ」


 その音と共に俺のひたいに、ほんのり温かくてやわらかいものが数秒間、れた。

 まったく、シオリ(白髪ロングの獣人ネコ)といい、マナミ(茶髪ショートの獣人ネコ)といい、姉妹そろって同じことをするとはな。

 俺はそう思いながら、マナミの合図を待った。


「ナオトさん、もういいですよ。目を開けてください」


 マナミがそう言ったので、俺は目を開けた。すると、目の前にマナミの顔があった。

 ほぼゼロ距離だったため、心臓しんぞう鼓動こどうが少し早くなった。


「え、えーっと、マナミ。そろそろ下りてもらってもいいか?」


「いやです。私は、出番が少ないうえにセリフも少ないので、今回は私の言うことを聞いてください」


「そ、そうか。まあ、たまにはいいかもな」


「そ、そうですよね。じゃあ、遠慮なく……えいっ!」


「ファッ!!」


 マナミが急に抱きついてきたため、マナミのはだぬくもりや、心臓の鼓動がしっかり伝わってきた。

 俺は、マナミが落ちないようにマナミの背中に両腕を回して。


「まったく、マナミは甘えんぼうさんだな」


「今だけ、ナオトさんは私のものですからね。私が我慢してたことを全部やりますー」


 マナミの『ほっぺすりすり』。ナオトは麻痺まひ状態にな……らず、心身がいやされた。


「じゃあ、せめて『おんぶ』にしてくれよ。前が見えづらいからさ」


「はーい」


 マナミは俺の背中に移動しても、とてもうれしそうにしていた。(背中の黒いリュックは高校の卒業記念にもらったもので、カバンに似ているものなら、自由自在に変形できるすぐれもの。今回は、ウエストバッグに変形した。カバンの中は変形しても変わらず、いくらでも入る。『四○元ポケット』みたい? たしかにそうだな)


「さて、そろそろ行くか」


「はい!」


 その時、メルク(ハーフエルフ)は、家族……いえ、これはそれをも超えた関係ね……と思った。

 そして、その様子を岩陰いわかげから見ていた、シオリ(白髪ロングの獣人ネコ)とキミコ(きつね巫女みこ)とルル(白魔女)は二人の距離きょりちぢまったのを知り、三人で計画したものを実行しないことにした。

 だが、今さら出て行っても二人のいい雰囲気ふんいきこわすことになるため、二人……いや、三人が最深部に到着とうちゃくするまでは自分たちの姿は見せないようにしようとちかい、忍者にんじゃのように、その場から離脱りだつした。


 *


 その頃、ミノリ(吸血鬼)たちは。(ミノリはちゃぶ台に頬杖ほおづえをついている)


「ナオト、大丈夫かな……ケガしてないかな……迷ってないかな……また、たおれたりしてないかな……」


 ミノリ(吸血鬼)がそんなことを言っていると、めずらしくカリンがやってきてミノリと向かい合うように座るとミノリに話しかけてきた。(カリンは、『黄竜こうりゅう』と『麒麟きりん』と『いん』と『よう』の力が合わさって誕生した存在。昔は【聖獣王せいじゅうおう イリュウ】と呼ばれていたらしい)


「ふん、あんたがそんなだから、みんなが不安になるんでしょう? もっとしっかりしなさいよ」


 ミノリは、頬杖ほおづえをつくのをやめると。


「う、うるさいわね! 金髪きんぱつツインテール! あたしだって不安になる時くらいあるわよ!」


「あっ、そう。じゃあ、くけど、あんたがナオトのことになると異常に心がみだれるのは、どうしてなの? 黒髪くろかみツインテールさん」


「あんた、ケンカ売ってんの? それとも死にたいの?」


「はあ? あんたごときにこの私が負けるとでも? ふん、冗談じょうだんはそのみにくい顔だけにしなさいよ」


だれみにくい顔ですって!」


「あんたしかいないじゃない。それとも、そんなことも理解できない知能しかないのかしら?」


「あんた、ぶっ殺されたいの?」


「この私とり合うつもりなら、やめといたほうがいいわよ? お・バ・カ・さ・ん」


 ミノリ(吸血鬼)はそれを聞いた直後、スッと立ち上がって、自分の右手の親指をみ、自分の血液で【日本刀】を作った。

 ミノリは、その刀の切っ先をカリン(聖獣王せいじゅうおう)に向けた。


「あたしとあんたはどこか似ているから、今は殺さないでおいてあげる。けど、もしナオトに何かしようと考えているのなら、あたしは今すぐあんたをる」


 カリンは、ほんの少しみを浮かべながらこう言った。


「そっか。私はまだそんなに信用されてないってわけね。あー、はいはい、分かったわよ。あんたに殺されるのはごめんだから、しばらくは大人しくすると誓うわ」


「しばらく? あんたは信用ならないから、未来永劫みらいえいごう大人しくしてなさい!」


 カリンは少し落ち込んだ。


「分かったわよ。あんたの言う通りにするから、この話はもうおしまいにしましょうよ。ねえ?」


 ミノリ(吸血鬼)は血液を自分の体内に戻すと、うでを組みながら、こう言った。


「それなら今から私のりに同行しなさい! あんたとは、ゆっくり話がしたかったから!」


 カリンは、め息をきながらも、ゆっくりと立ち上がった。


「仕方ないわね。で? 何を狩るの?」


 ミノリは少し考えたあと、それにこうこたえた。


「そうねー、この辺だと……『ライチーター』がいたはずよね。それにしましょう!」


 カリンは、それを止める。


「ちょっと待って。あんた『ライチーター』の最高時速を知ったうえで言ってるの?」


「ええ、もちろん。最高時速二百キロでしょ?」


「そうよ、その通りよ。それで? いったいどうやってつかまえるの?」


「えっ? あたしの固有武装はつばさだから、すぐに追いつけるでしょ?」


「確かに空からなら、いけるかもしれない。けど、その考え方は五十点よ」


「どうして? あんなちょっと足の速いネコに何が……あっ」


「そうよ、やつらは自分たちの体にみのっている『ライチ』を食べる。やつらの『ライチ』は魔力、ケガ、体力、精神力などを完全に回復できる、まさに反則級の果実。まあ『仙豆《せ○ず》』みたいなものだけど。それで? そんな相手にあんたはどうやって戦うの?」


「うーん、なら、それをあんたが打ち落としてよ」


「はあ?」


「だから、あんたはその『ライチ』を全部打ち落としてって、言ってるの」


「最高時速二百キロの動物の体にみのっている果実を打ち落とせですって? あんた、頭おかしいんじゃないの?」


「できないなら、あたしが一人でやるからいいわよ」


 それを聞いた、カリン(聖獣王せいじゅうおう)は自分の目の前にいる吸血鬼よりも自分の力がおとっているわけがないと思った。


「……いいわよ」


「えっ? 何か言った?」


「その大役を私がやってもいいわよって、言ったのよ! 難聴なんちょうなの?」


「もちろん、聞こえたわよ。あたしがそうしたのは、あんたの口から、今のを言わせるためよ」


「あっ、そう。なら、さっさと行くわよ。やつらがりをしている間がチャンスなんだから」


「武器とかいらないの? あたしには固有武装があるからいいけど」


「私はかつて【聖獣王せいじゅうおう イリュウ】と呼ばれ、恐れられていた存在よ? 自分の肉体以外の武器は知らないわ」


「……そう、なら早く行くわよ」


 それを聞いてもまったく動じず、スタスタと玄関げんかんに向かうミノリ(吸血鬼)をカリンは呼び止めて。


「ちょっと待ちなさいよ! 黒髪ツインテール!」


「あたしにはミノリっていう名前があるの。あたしもあんたのこと『カリン』って呼ぶから、あんたも名前で呼んで」


「はぁ……分かったわよ。名前で呼べばいいのね。コホン……ねえ、ミノリ。あんたは今の私の話を聞いて怖くないの?」


 ミノリはカリンに背を向けたままこたえる。


「あたしたちモンスターチルドレンは、かつて人類を恐怖のどん底に突き落とした『五帝龍ごていりゅう』の力が宿っているのよ? 今さら、何が出てきてもおどろかないわ」


「……なるほど。どおりで、あのバカ兄弟たちの力をあんたたちの中から感じるわけね。呼び止めて悪かったわね。行きましょう」


「そうね。早く行きましょう。……で? みんなはどうするの?」


 ミノリ(吸血鬼)がそう言うと、いつのまにか全員が二人の後ろに集合していて、親指を立てていた。ミノリは後ろをチラッと見ると。


「じゃあ、留守番組全員で今日の晩ごはんのおかずを取りに行くわよ!」


 ミノリが右手のこぶしを天井に振りかざすと。


『おーーーーー!!』


 全員でそう言った。

 その後、一同はりに向かった。

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