2話「Here we go!Count zero」
Hero2:Here we go!Count zero
・英雄部。
それがその男達の活動するサークルだ。
顧問は便宜上にはいるのだが一度も来たことはない。
活動内容:ロマン。
「もう一度確認しますが、本当に救出してきたんですね?」
部室。
赤羽美咲は問うた。
「ああ。ヤクザに人身売買されそうになったのを救ってきただけだ多分。」
零は当然のように答えてその幼女まほろを抱きしめ
共に04年放送の日本語で言うと「絆」な特撮番組を
ぶっ続けで見ていた。
「お兄さん、この女の子どうなったの?」
「ああ、このジャケットのお兄さんの目の前で爆殺されたんだよ。」
「そして何をそんな刺激の強いものを見させているのですか。」
赤羽美咲。17歳。高校3年生。
4年前に零がまほろとほぼ同じ経緯で非人道的組織から救い出した少女だ。
身寄りがなかったため零と同棲しているのだ。
どうせ零は家に帰ってこないためなし崩し的にこの部室にやってきている。
「ということはこの子もどこか改造を?」
「いや、普通の人間だと思うぞ。
ちょっと浮いたり睡眠も食事も必要なかったり触れずに機械操ったり、
時折キレるとアクセルクリムゾンスマッシュ
放ったりするけど普通の人間だとうぞ。」
「・・・いや、それ生命体としてすら怪しいのですが。」
「赤羽ちゃん、あまり気にしちゃダメですよぅ。」
間垣明代。18歳。大学1年生。
いつも胸にテディベアのあきちゃんを抱いている少女。
「零さんはぁ~こんな方なんですからぁ~。」
「・・・昔はこんなんじゃなかったと思うんですが・・・。」
「ねえお兄ちゃん。これも見てみようよ。
12歳未満禁止って書かれてて男の人二人が肩を組んでて片方の仮面が割れてて
真ん中の炎の海の中に人が立っていて全てを超えるって
書かれた表紙のこの映画。」
「ああ、いいよ。でもこれ前編後編の後編の方なんだよね。
The Firstの方を先に見よう。」
「うん。」
「赤羽も試合の時に参考になるかも知れないから見ておけよ。」
「側転しながら廻し蹴りとか階段の上での飛び蹴りとかが
どうやって参考になるというんですか。」
「少なくとも囲碁で制空圏を習うよりかはマシじゃないかと。」
「あなたがやらせたんでしょ!?別の世界の話ですが!」
「もう~。零さんも赤羽ちゃんもぉ~あまりコアな話しちゃうとぉ~、
多くの人がついてこれないよぉ~?」
「・・・私のはそこまでコアじゃないと思うんですが・・・。」
「それに制空圏学ぶ必要ないしなぁ。
この世界にはあの制空圏が完璧すぎる天才少女いないわけだし。」
「え・・・!?そうなんですか!?」
「だってあれ君とレズレズしすぎてラブコメ要素が完結してるじゃないか。」
「仮にギスギスしていたとしても私を振ったのはあなたの方ですからね?」
「はいはい。二人共ぉ~?」
という訳で4人でDVDを見続けていた。
別世界では海の化身たる蒼い巨人だったり俺の占いは当たるが口癖な
感じがする2号の人がバーに現れた辺り。
「ところで朝吹さんたちは?」
「・・・あぁー・・・そう言えばあの時付いてきてたっけ?
あらゆる道路が完膚なきまでにぶっ壊されたわけだから
しばらく帰ってこれないんじゃないかな?
ジキルの奴とかかわいそうに免停くらってたし。」
「・・・甲斐さんが無理矢理連れ出したのでは?」
「あぁー、そんな歴史もあったなぁ。
でもまあ、刻は未来に進むものだしそういう歴史は月の冬に捨て置こう。」
「そして1万年後に明るみに出るんですね。
そんなものを探すために月に吠えるんですねあの銀髪は。」
「はぁ・・・はぁ・・・・強い・・・強いよこの人達・・・はぁ・・はぁ・・」
まほろを抱く零とその隣で漫才する赤羽。
その横では明代が激しく息を乱していた。
テディベアの中から鎮静剤を次々と手首に打ちながらも
収まる気配は見せていない。
「お兄ちゃん、この人だいじょーぶ?」
「まほろちゃん。世界にはいろんな人がいるんだ。
悪鬼羅刹とか男のツンデレとかハッピートリガーとか
リアル改造人間とかその試作型の一人とかロリコン女とか
妖精とか元暴走族とか這いよる無貌なる存在とか
そこにいる強者に対して凶悪なまで性的興奮を催すため
インド象でさえそのまま息を引き取るとまで言われている
最強クラスの鎮静剤を数十本用意しないとヒーロー物を
とても見れないような核弾頭クラスの変人とかね。」
「?そうなんだぁ。」
「あたしぃ・・・これ以上はぁ・・・年齢制限オーバーしちゃうからぁ・・・
別室行きますねぇ・・・・?」
「赤羽、混じってもいいぞ?」
「人を危ない人専用のレズ扱いしないでください。」
「いやぁ、だっていくらボーイミーツガールが成立しないと
最初から予定されていたくせに半分を過ぎたあたりで
やっとその事実に気付いて振られてそのショックで
女子小学生と未来を共にすることに確定されたような
当時中学生の女の子はそういう勘違いと言う名の風評被害じみた正しい見方を
されても仕方ないと思うんだ。
作者が言うんだから間違いないんだよ、うん。」
「待ってください!そんな言い方は・・・!
いくら次回作といっても世界観はつながっていませんし
前作のファンだって数億人に一人くらいはいるものなんですよ!?」
「いやまあそうだけど・・・出来ればもう少しくらいは居て欲しいけど。」
「第一私が振られた理由は中々納得できません!
何ですかあれ!一応恋愛モノ混じってるというのに
あらかじめ主人公が別の女の子と結ばれていたというのに
後からメインヒロイン面した女がノコノコと登場するなんてピエロ!
第一最初あの人登場予定なかったでしょ!!」
「・・・それ以上はいけない。いいね?」
「・・・すみません。言い過ぎました。
少し過去の記憶が暴れすぎました。」
「それでいい。さあ続きを・・・」
「オンドルァァァァァァァァァァッ!!!」
と、そこでやっとトゥオゥンダ、ジキルが帰ってきた。
「何だお前ら遅いぞ。あれから二日もかかっている。
出席は大丈夫なのか?」
「誰のせいだ!?誰のォォ!!!」
「・・・妙に気張ってるな。何か嫌なことでもあったのか?
このお兄さんが聞いてやろう。ほらほざけ。ん?ん?」
「・・・もうこいつ八つ裂きにされてもいいと思うんだ。」
「と言うかもうやっちまおう。答えは聞いてない。」
そうして零は別室に連れ去られていった。
「・・・ところで近藤さんは?」
「ああ、自家用ヘリ呼んで先に帰りやがった。」
「・・・お嬢様でしたっけね。彼女。」
別室の乱痴気騒ぎを聞き流しながら
赤羽はまほろと一緒にDVDを鑑賞していた。