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その3わ

   ☆

 

 

 報告、連絡、相談が重要なのはどこの世界でもどこの国でも一緒である。しかし報連相の相手を間違えてしまうと意味を為さなくなってしまう。

 エーリックはシズメさんから教えられた情報に慌てふためいてしまった為、報告する相手を間違えてしまった。

 自分に割り当てられている収納箱から武具を手に取り、その場にいた武官に次席侍女様に伝えて欲しいと頼んだ。


「申し訳ありませんが次席侍女様に姫様らしき女の子が北の樹海の方に向かって行ったようなので、捜索隊を出してもらえるように伝えて下さい。僕は先に追いかけますので宜しくお願いします!」


 訝しげに見ている武官を背にエーリックは辺境伯邸を出て北へと向かっていった。

 それを聞いた武官は馬鹿にしたようにエーリックを見て、そのまま自分の持ち場へと行ってしまった。

 彼は子爵家の次男であまりにも自己中心的な性格なので、この辺境伯邸で性根を叩きなおさせられている最中であった。 

 

 文官見習いのガキの言うことなど何で俺が聞かねばがならないのだ。馬鹿馬鹿しい。

 それが幸か不幸か――――彼にとってはマリアに説教&お仕置きが待っているので不幸なのだが、辺境伯領にとっては結果的に良かったのかもしれない。



   ☆



 レリアは速い。すごく速い。エミュティアはどんどん流れていく景色を、レリアの背に乗って眺め楽しんでいた。

 レリアも久しぶりの全力を持って駆けていたのに、疲れることも無くひたすら風を切り走り抜けていく。


“あ、やっちゃった”


 てへっと笑うような言葉を浮かべてだんだんと速度を落としていく。

 そこは辺境伯邸を遠く離れた未踏樹海の手前だった。速度は落としたものの急には止まれないレリアは樹海の中程まで駆け抜けてしまう。ようやく止まったレリアの背からエミュティアがポンと飛び降りる。


「ここはどこなのでしょう」

“えっと、北の森の中?”

「北の森……ですか?」

“そう、ずーっと先の北のもりー”

「れりあはすごいのですねっ」


 エミュティアは良く分かってなかったが、何かすごいなぁーと感じながら辺りを見回す。レリアも一緒に辺りを見回して木々に実っている果実を見つけて喜色をみせて声を上げる。


“あれ、とってもおいしーの!”


 トコトコと果実の生ってる木に近づきパクリと囓る。レリアを真似てエミュティアもそばにある果実をもぎ取ってひと口囓る。口の中いっぱいに甘さと酸っぱさが広がっていく。


「ほんとに美味しいです!!」


 果実をしゃくしゃく囓りながら奥へと進んでいく。




   ☆




 辺境伯領主街を走り抜け、北へ北へと突き進むエーリックに、シズメさんが姫様の状況を教えてくれる。


“まずいわよ、えーりっく。どんどん森の奥へと進んでいるみたいだわ”


 わぁーまっずいよなー。ジトリと汗を掻きながら道を走り進み、人が見当たらなくなった頃シズメさんにお願いをする。


「シズメさん“跳ぶ”んで少し力を貸して貰える?」

“良くてよえーりっく。いま風化精シルフィにお願いするわ”


 流れるようにエーリックのそばを滑空しているシズメさんが、何やら呟くと周囲に風が巻き起こる。


“タイミングを合わせてえーりっく”

「はい、お願いします」


 未踏樹海まではまだまだ距離がある道をひた走りながら、シズメさんと呼吸を合わせて跳び上がる。


“さん、にぃ、いち!”

「はいっっ!!」


 エーリックが地を蹴るとドンと地面が抉られ土煙が舞い上がる。瞬間エーリックは遥か上空を跳び上がった姿勢のまま滞空していた。そして何も無い空中に1歩足を踏み出し蹴り出すと、さらに上空へと跳び上がる。

 そうして本来1ヶ月掛かる未踏樹海への道のりを、エーリックは空中を蹴り跳び上がりながら進んで行った。



   ☆



 何かがこの森にやって来た気配がする。普段と違うこの気配に熊魔獣ベアーガは警戒をする。

 気配のする方角へと足を進める。たわわに実る果実をとって齧りつつ進んでいくとその姿見えてきた。

 はぁ?な、何でここに人間がいるんだ?

 そこには、ベアーガの目にはまばゆく光る白い仔馬と、小さな人間が果実を頬張りながらこちらに歩いてきていた。

人間は危険だ。人間は俺達を意味も無く殺しに来る。幼い頃のガルガノが見た人間はとても恐ろしくおぞましいモノだった。

 たとえ見た目が幼くとも、人間にこの森で好き勝手させるわけにはいかないのだ。

 人間である少女を目指して腕を振り上げながらベアーガが駆け出す。


「グゴォォォオオオオゥウウウウウ!!(やってやんぜ、おらおらああああっ!!)」


 その雄叫びでエミュティアへと向かってくる魔獣に、2人は気付いてきょとんと迫ってくるそれを見ていた。

 やがて己の身が危ういことにに気がついた2人は慌てるが、その時には目の前に魔獣の巨体が立ち塞がっていた。その大きく太い腕が振り上げられ、鋭く尖った黒く光る爪がエミュティアを襲う。


“あぶないエミュー!!”


 エミュティアの危機を察してレリアがエミュティアを庇うように立ちはだかる。

 エミュティアもそれを見て思わず叫ぶ。


「だめぇっっ!!」

“だめぇっっ!!”


 2人の言葉と心が重なりあったまさにその時、レリアとエミュティアの間にピカァっと眩い光が迸る。


「ガオッ!?ガガオオオッ!!(何だ!?眩しいっ!!)


 その瞬間周囲が白い光に包まれていった。




(ー「ー)ゝ お読みいただき嬉しゅうございます

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