①サンバルド村の危機
ここセスティナ帝国北部に位置する村々では戦争終結で職を失った傭兵達による略奪が横行しており深刻な状況になっていた。サンバルド村でも同じような危機が起ころうとしていた。
ある少年が椅子に座っているサンバル村の村長に両手を後ろにやり、兵士が上官に伝令を伝えるが如く話し出した。
「村長大変です元傭兵どもがおそらく略奪のため、こちらに向かって来ています。」
村長が住んでいる家に報告に来ている少年サット・ミルド(通称サット)は自警団に所属しており10代そこそこの少年であるが体系は同年代よりも劣るものの、強い精神力や交渉力があることから、伝令係の任務や他の村との交渉にあたっている少年であった。
セスティナ帝国とアルドレイク帝国との戦争が終結し一年各地では戦争処理のため帝国軍は大きな都市を中心に活動しており、地方の村々は帝国軍の恩恵を受けられずにいた、そのため村々では自分達の村は自分達で守らなくてはなくなったため、渋々自警団を組織するのが村々では当たり前になっていた。サンバルド村も同じである。
渋い顔をさせながら歳というのもあり、少し枯れた声で村長はサットに尋ねた。
「セスティナ帝国には救援の連絡を入れたのか?」
サットは冷静な口調で返答した。
「ここから一番近い帝国の駐屯所に救援連絡を送りましたが…」
ため息をした後、渋い顔をしながら、村長は再度尋ねた
「で……どうだった?」
サットは申し訳なさそうに答えた。
「やはり駄目でした。帝国によりますと都市の警備で人員を割いているため、向かえないと既存の戦力で対応しろと返答されました。こちらが駐屯所からの書簡になります。」
サットから申し訳なさそうに渡された手紙を受け取り、無念さと怒りを顔に出さないようにしながら、村長は書簡を読みだした。
そこにはサットから聞いた内容と同じような内容が書かれており、右下に駐屯所のお偉いさんの印が押してあった。
「既存の兵力とは自警団のことを言っているのか!何を考えているのだ、帝国は。」
怒りを押し込め、村長は即急に対応するためサットに命令をだした。
「サット、村の男衆と自警団に所属する者を即急に広場に集めろ、今後の方針について話す。それとすまないが、広場に集める前に自警団のリーダーを私の家に呼んでくれ。」
サットはいつものように冷静な口調で返事をした。
「了解しました。」
村長が何をしたいのか悟ったサットは準備の手を辞め、直ぐにリーダーを探しに行った。
村長とリーダーの会談が終わり、何かしらの作戦が話し合われたのであろう。
男衆と自警団に所属する者が広場に集まってから1時間近くたったであろうか、村長とリーダーが広場の方へ来ると村長は広場の壇上に登り、リーダーは壇上の下の村長の隣に位置どった。
すると壇上にいる村長は杖を片手に男衆300人を前にし、力の入った声で話かけた。
「皆集まってくれてありがとう。ここに皆を呼んだのは今後の方針を話し合うためである。元傭兵どもが略奪を目的とし、この村に向かって来ている、そのため我々は今後の方針を話さなくてはならなくなった。まず一つ言っておく、もし戦闘になった場合帝国からの救援は期待できないだろう。」
男衆は真剣な眼差しで、話を聞いており村長片手で動作を交えながら、さらに力の入った声で話を続けた。
「さらに敵の数は未だ不明なため、既存の兵力で戦わなくてはならないことから勝てる可能性は低い。我々の選択肢は二つしかないと思ってくれ戦うか逃げるかだ。しかし我々は生まれ育ったこの村を守れねばならん、過去も将来もこの村は我々の村であるべきなのだ。無理強をする気はない、生きるため違う村や都市に行くにもいいだろう。もし戦うとなれば命を落とす可能性が高いのでな。」
村長は男衆と自警団員を前にし、率直な気持ちをぶつけた。
「それでもわしとこの村を守ってくれる意志のある者は、ここに残ってくれ。すぐに決めるのは難しいと思う、一時間後残る意志のあるものは再度ここに集まってくれ、以上だ。」
村長は軽く頭を下げた後ゆっくりと壇上を降り、男衆と自警団員を見渡し村長は、ゆっくりと自分の家に帰っていった。
読んでいただいた方有り難うございます。
まだ主人公は登場していませんがかっこいい登場にご期待ください。
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読みづらい点などありましたら申し訳ありません。