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その2 有子曰く、其の人とりや孝弟にして、上を犯すを好む者は鮮し。

これも元短編です。

内容はやっぱり変わりません。

「【有子(ゆうし)(いわ)く、其の人と()りや(こう)(てい)にして、(かみ)を犯すを好む者は(すくな)し。上を犯すこと好まずして、乱を()すを好む者未だ之あらざるなり。君子は(もと)(つと)む。(もと)たちて道生ず。(こう)(てい)なる者は、其れ仁の(もと)()るか。】」


 先輩が今日の教えを提示する。


「はいじゃあ琴浦君、これの意味は?」


「……高校入学直後の1年生にいきなりふられても困るんですが」


「まったく、琴浦君はダメダメね。修行が足りないわよ」


 普通にいらっとした。


「何の修行ですか。で、結局どういう意味なんですか」


「これはね、『有先生が言うには、親に孝行で兄に従順な人が社会で年長者に不遜であったことはめったにない。年長者に不遜じゃない人で好んで社会を乱し、乱を起こすような人はいまだかつていない。君子というものは根本を大切にする。根本を確立することで進むべき道も自然と生まれてくるからだ。きっと君子の持つ仁とは親や兄を大切にすることが根本にあるのだろう。』だいたいこんな感じね。要は家での行いがその人を形成しているってことね。あ、有子ってのは孔子の弟子ね」


「なるほど。つまり先輩は家でもこんな残念な感じだから学校でもこんな残念な感じということなんですね。納得です」


「私のどこが残念だっていうのよ!」


「そのムダに自信満々なところとかでしょ」


「何言ってるの。私なんて謙虚塊みたいなものじゃない」


「それこそ何言ってんの!?」


「もうあれよね。謙虚の中の謙虚。謙虚オブザイヤーを受賞してもいい勢いだわ」


「なんなんだそのムダな自信は……」


「昔から謙虚には自信があるのよ」


「……そうですか」


 謙虚に自信って、どっちなんだよ。


「ていうかあなたこそ先輩に対する態度おかしいじゃない。家でもおかしな感じになってるんじゃない

の?」


「はっはっは、何言ってるんですか先輩。僕がこんな態度とってるのは先輩だけに決まってるじゃないですか。僕は家でも学校でもいたって普通ですよ」


「と本人だけは思っていた」


「なんですかその変なナレーションは」


「琴浦君、変な人っていうのはね、その多くが自分のこと変な人だって思ってないものよ」

なんか先輩がものすごい優しい感じで言ってくる。なので……


「確かにそうかもですね」


 僕は先輩のことを見ながら肯定した。





「さて、話がそれちゃったけど今日のテーマよ」


「ほんと大分それましたね。それで、今日はどんな超理論を繰り出すんですか?」


「よくぞ聞いてくれたわ。それはね……有子、実は政府からの刺客だったんじゃないか説よ」


「……一応なんでか伺いましょうか」


「まずこの文章なんだけどね、おおざっぱに言っちゃえば家でのその人はそのまま社会でのその人につながってるってことじゃない」


「まぁおおざっぱに言えばそうかもしれませんね」


「家で年長者を敬えるような人は社会を乱すようなことをしない」


「そうですね」


「つまり家庭内で子どもを洗脳することで政府への造反者を出すなってことよね」


「そうで……はい?」


「洗脳された子どもたちが親の世代になり、知らず知らずのうちにさらにその子供たちに洗脳教育を施

す」


「……」


「こうして国中を政府の手先にするのよ!」


「じゃあ有子が孔子の弟子になった意味は?」


「そんなの決まってるじゃない。テロリストであるところ孔子の教えをある程度抑制するためよ。いわゆ

る虎穴に入らずんば虎児を得ずってやつよ」


「まだそのテロリスト説引っ張るんですね」

いったいどういう思考経路をたどればこの発想にたどり着くのか……


「テロリストである孔子と政府の回し者である有子。きっとものすごい、それこそデスノ○トのごとき頭脳戦が繰り広げられていたんでしょうね」


「それはどうなんでしょう……」


「どうもこうも、そうに決まっているのよ!」


「いやいや、有子もそんなわけのわからない陰謀論に巻き込まれて草葉の陰で迷惑がってますよ」


「……あなた、やけに有子の肩を持つわね。ま、まさかあなた、すでに有子によって洗脳済みなの!?」


「それこそいやいや。そもそも有子って過去の人ですよ。もうお亡くなりになってますって」


「つまり有子の弟子の弟子の弟子あたりによってすでに洗脳済みというわけね」


「ていうかそんな洗脳された覚えまったくないんですが」


「ふっ。わかってないわね琴浦君。洗脳というのは相手に気づかれないようにやってこそじゃない」

 なんか鼻で笑われたんだが。理不尽な。


「ところで琴浦君、あなたの両親、儒教とかやってたりする?」


「この人ほんとに疑ってやがった。やってないですってば」


「ならあなたのおじいさんやおばあさんは?」


「それは……聞いたことないんで知らないですけど」


「ならそのあたりが怪しいわね」


「……そうですか」


「よかったわね琴浦君。この私のおかげで洗脳に気づけて」


「……そうですね」


 正直、なんかもう疲れた。

 こうして今日も有子政府の手先説と琴浦怜は洗脳教育が施されていた説という2つの新しい仮説が生まれた。

 うん、やっぱりわけがわからないよ。


次から新しい話になります。

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