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プロローグ
真っ暗な部屋の片隅で、途方に暮れている男がいた。
「彼奴さえ居なければ………勇者なんぞ居なければ、あの国も落とせるものを」
自分の力で勇者を倒す事は出来ても、戦った代償は大きい。勇者との戦闘は、それ相応の深手をもたらし、最悪の場合は相打ちになる恐れもある。
そもそも、一国一城の主たる者が、勇者と言えども一兵卒程度と相打ち覚悟の戦闘など、愚かにも程がある。
「なぜこんな事になってしまったのか。全ては順調にいっていたのだ!あの勇者さえ召喚されなければ………」
「このままでは、何時かは押し返されて、こっちが滅ぼされかねん。何か打開策は無いのか………」
「そうか!!!あるではないか、勇者を葬り去る手段が!!!勇者を召喚してよいのは人の国だけでは無い!!!」
後に殺戮勇者と呼ばれる一人の青年の物語の始まりである。