間
「操り人形は今何処に?
それは柔らかなしなやかな孤独の獣
それは死を告げる慈愛の天使
血染めの衣に、真っ赤な瞳、闇よりも深い髪
逃げ出した、すべてを投げ捨てて遠くへ
どこへとしれない場所に
光に行きたいともがいた愚かで愛しい人形」
歌うように囁くように男は剣を手にして
「帰らないと叫ぼうとも通らない
人と生きたいと泣こうと
操り人形は操り人形のまま
すべてはこの手に戻る」
禍々しく哄笑し、男は振るう。
鮮血が男を彩る
「さぁ、取り戻そう?
私の可愛い愛し子『イリス』
お前の生きる道は私の傍らで深紅に染まること
そして、私の手によって闇に眠ること」
次々と鮮血が男の回りに散る。
「お前はもう、逃げられない」
狂ったかのように笑い続ける男は血の真紅の瞳を空に向けた。
ゾクッと背筋に冷や汗が流れた。
今のは、何だろうか。
この言い知れない恐怖を誘うのは
セシル様のお部屋を辞して、後はもう寝仕度を整えるだけと言うのに
背筋に走った寒気に目が冴えてしまった。
誰か呼ぼうか。
少しは気が紛れるやもしれない。
だが、フッと考えれば誘える人物は限られてくる。
なにせ、自分の過去を知るのはあの二人しか居ない。
だが今はどちらも自分の不安を聞かせる暇はなさそうである。
かたや、妃として愛し愛されており、一人は私の分までいやもしかしたらそれ以上働いているかもしれない。
これ以上迷惑は掛けられない。
それに、親しい人を作るべきでない。
もしかしたら、この手がその人を傷付けてしまうかもしれないのだから
恐い、嫌われたくない、失いたくない
そんな気持ちを知ってしまった今
自分は果たして耐えられるだろうか。
「血塗れなこの手でも」
だけど、血塗れの代わりに
大切だと感じる人達を守る力がある。
心を殺して手に入れた死神の、チカラ
「どうか、私の今が壊れてしまわないように」
切に願う。
私は戻らない、あの暗闇しかない世界には
絶体に
「あれは、戦いの星
どこかでまた戦いが起きるのか」
星空を見上げ、目を細めるは幼き少女
だが、瞳に宿るのは悟りを開きし光
「厄介な者が此度の戦いに火を付けたようだな。
我の出番も出てくるかも知れないが
今は馬鹿弟子達にでも任せるか
どうやら、一人はその渦中に巻き込まれるようだからな」
楽しげに笑う少女は森の中に消え行く
時が来るのを静かに待ち受けるために
運命の歯車を巡る時まで
とりあえず一章はここまで
次回からは二章に入ります。
なんか一章はグダクダで、自分で冷や汗をかいてますよ
しかも無理矢理終わらせた感じで読んで下さってる皆さんに「はぁ?」みたいに思われてるかもしれません。
もう修行して出直したい気分で一杯です。