三十一話
「とにかく、子爵を連行しましょうか。
そうですね、ニール
来たところ早速何ですが何人か人をつけますから子爵を王都までお願いします。
それとこれ以上子爵に手を出さないように、出して良いのは逃げ出したりした時だけです。
その際はもちろん、生きたままで捕まえて下さい
多少の傷は大目に見ます。」
「お前って、本当にえげつないな。俺が可愛く見えちゃうぜ
なんで女はこいつの本性に気付かないんだか」
ガタガタと震え、宰相を見上げる子爵
助けを求める相手を間違ったことを今実感しているだろう。
「トリィ、貴方はそちらのダールを含めた使用人達を王都に連れて来るように
私は子爵の屋敷で捜索の続きの指揮をしますので
まだエネルの女の捕縛情報がないと言うことは姿がないのでしょう?
せめて手掛かりを掴まなければ」
テキパキと指示を出し、宰相閣下は私の手を取ると再び魔法陣が書かれた札を持った。
「申し訳ありませんが、もう少し私に協力していただけますか?」
この手を取られた時点で逆らう事は出来ない。
「・・・解りました。協力いたします」
後ろに立つシャナを見れば、頬を引きつらせていた。
なぜそんなに鬼の形相なのだろうか
「シャナ、貴方はどうしますか?」
ミーシャの言葉にシャナは凄みのある表情でレイと向かい合う。
「宰相様、いつまでミーシャ様の手を取られているのです?
困りますのでお早くお離し下さい」
「これは失礼しました。」
そう言いながらもミーシャの手は離さない。
いや、それどころかシャナに見せつけるように握っている。
「ミーシャ殿、申し訳ありませんがもう一度今度は子爵邸、食堂を思い浮かべて下さいませんか?」
「はぁ、えっと子爵邸、食堂、位置は」
目を閉じ、記憶の戸棚の引き出しから目的のモノを引っ張り出し、思い浮かべたことの合図に手を握り返す。
「目は閉じたまま、先程は眩しかったのでしょうから、今度は光が引いてから開けた方が良いですよ?」
それを否定するものはないため、そのまま目は閉じておく。
目を閉じていても感じる光になんとかならないのかしら、と内心ため息がこぼれた。
やはり目を閉じていても眩しいものは眩しいと言うことに気付き、もう諦めが肝心だと悟る。
「もう大丈夫ですよ。」
目を開ければ、やはり思い浮かべた場所と寸分代わらないところに立っている。
隣に立つ、ようやく手を放してくれた宰相閣下を見上げる。
「お訊ねしても良いでしょうか?」
「ん?もしかしてこの札のことかな?」
それを聞きたかったため素直に頷く。
「教えても良いのだけど、一応軍事機密だからね
うん、約束してくれるならば良いかな。」
「最初から、約束もとい口封じされる予定だったのでしょう?
でなければ『軍事機密』の物を使う筈がないでしょうからね」
ぴしゃりと冷ややかにシャナはレイを見る。
それにはレイは優しく笑うばかりで答えない。
つまり計画的だったと白状しているようなものである。
「誰にも話さず君たちの心の中に仕舞っておいてもらいたいんだ。
それが約束だよ?
出来るなら頷いてくれると嬉しいな」
流石に帝国にこの人ありと言われる人である。
互いに顔を見合わせ、仕方ないとばかりに宰相閣下に向き直り、頷いた。
「流石にセシル妃に選び抜かれて来た人だ。
これは我が帝国が長年の研究の末に作られた小型移動転移陣『シルフ』
これはまだ、一部の者にしか実戦配備してない。
使い方は至って簡単なものだよ
転移したい場所を思い浮かべながら発動すること
欠点は発動者が知らない場所には行けない、発動しない点かな?」
機密といいながらそこまで話して良いのだろうか?
「もちろん、欠点なんて話すべきことではないが
頭の良い二人には話しても害はないだろうからね」
やはり確信犯な笑みにどう答えたらいいか分からない私と嫌そうに顔をしかめるシャナ
なぜこうまで信用されるのか
そんな変な信頼はちょっと遠慮したいと思ったのは無理からぬ話であった。
結局それから三日間、ミーシャ達は子爵邸の検分を手伝わされた。
だが、エネルの女が見つかることはなかった。
レイが現れた時点で既にいなかったと言う子爵の自供もあり、ひとまずは事件はここに終止符が打たれた。
説明が足りない気がしまして内容を付け足しました。
ちなみに、最初にこのページに投稿していた部分は次のページになります。
あしからず




