二十話
眠れない。
あの後、クローディア様に暇を告げて帰って来たものの
何か引っ掛かる。
ここに来てからの記憶を探るが出てくることはない。
起き上がり、窓の外を覗く。
しばし、そうしていると小さな物音が廊下から聞こえて来た。
そちらに目を向け、耳を澄ます。
何だろうか?こんな時間に誰かいるの?
まわりを見回し、武器になりそうな小ぶりの壺を抱えて扉に近付いていく。
なるべく音を立てないように扉をすこし開き、廊下をうかがう。
暗闇でなにも見えなかったが徐々に目が慣れ、見えてきた者に息を飲む。
そこには屈強な男達が足音も立てずに肩に、ぐったりとした女性を担いでいたからだ。
これは、一体何を
一度身を引き、手を口に当てる。
そうでもしないと声が出ていたからだ。
落ち着きを取り戻してからまた覗き込む。
やはり男が女性を荷物のように運んでいる。
そして、その中程にこの屋敷の執事、しかも子爵に側近くいたあの執事が指示を行っているのだ。
知らせないと、でもどうやって?
彼等に知られずに宰相様に知らせるには自分では見つかる可能性が高い。
一生懸命考え抜いた結果一つの案が浮かぶ。
それしかない。
拳を握りしめ、行動に移る。
まずはシャナを起こさなければ
隣りの侍女用の小部屋に続く扉に駆け込む。
その勢いのまま、シャナの眠るベットに上がり込む。
「だ、誰」
「静かにして、私よ」
シャナが上がり込んだ衝撃で目が覚めたのか鋭い誰何の声を上げかけたので私は慌ててシャナの口を塞ぎ、自分がミーシャであることを囁く。
すると強ばった体から力が抜け、ミーシャを恨めしげに見上げた。
それを苦笑し、確かめてから口から手を離して小声で先程の廊下の状況と宰相閣下に知らせにいきたいと告げる。
「・・・・分かりました。
男達は私が見張りに走ります。ミーシャ様は閣下に知らせに行って下さい。
廊下は使えませんから、そちらの窓のテラスから行って下さい。」
素早い判断に感謝し、ミーシャは急いで駆けて行くシャナを見送り
テラスに走る。
冷たい風が入ってきたのを感じ取り、レイは意識を覚醒させた。
刺客ですか?それにしてもお粗末な刺客のようだ。
全く気配を隠さずにこちらに近付いてくる者にレイは枕の下に隠していた剣の柄を掴み、いつでも抜けるようにする。
そしてついにレイが横になるベットに近付いた者の腕を引っ張り倒し、自らはその反動で起き上がり抜いた剣を侵入者に突き付けた。
月明かりが部屋に差し込み、レイは剣を突き付けた相手の顔を見て、強ばる。
なぜ、この女性が自分のベットに侵入してきたのか
分かってるのはまだ剣を向ける相手ではないと言うこと
「どうして、ここに」
剣を引き、助け起こして尋ねれば
突き付けられたショックに固まっていたミーシャがレイにすがるように見上げた。
「今、廊下で女性が変な男達に浚われてるんです。
それを指示する子爵の執事も見ました。」
矢継ぎ早に告げるその言葉に扉を見、それからミーシャと窓を見比べ苦笑する
「だから窓の外から来たんですね。危険を顧みずに」
「今はシャナが見張っています。どうしますか?」
その問いにレイはベットから降り、窓の外に向かって行く。
慌ててそれを追いかけて行き、なにやら懐を探るレイを見つける。
そしてようやく探り当てたのか懐から取り出し、勢いよく投げた。
目を丸くして目で追ったそれは最初はただの球体だった。
しかし、すぐに球体から変わり鳥の姿となった。
「今のは?」
「あれですか?あれは応援部隊に連絡をいれたのですよ
『今すぐ集結せよ、作戦開始を早める』とね
さぁ、行きましょうか?シャナ殿は隣にいらっしゃるんでしたね」
はじめて見るレイの不敵な笑いに、ミーシャは笑顔を浮かべ頷き返し、差し出された手に体を預けようとしたが、レイは立ち止まり少し待つよう言われ待つミーシャ、レイは一旦部屋に戻りローブを携えて戻ってきた。
「申し訳ありません。これを着て下さい。
その格好は目のやり場に困りますから」
そう言われた瞬間、自分が夜着のまま来たことに気付き、顔を紅潮させてローブを急いで着る。
もう少し早く言って下さい。
しっかり見てから言うなんて、最低です。
心で叫ぶも、自分がしっかり何か羽織って来なかったのかが悪いとすぐに気付き落ち込んだ。




