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比翼連理  作者:
10/50

九話

「では、裏が取れたんですね。」


「はい、命じられました通りに情報を集めましたところ


イスダラス子爵が不正を働き、なおかつエネル皇国と密通していた証拠を押さえました。


証拠の品も間もなく手に入れられるかと」


床に片膝をつき、平凡な容姿の青年がレイを見上げて報告をしていた。

それを見下ろしながらレイは顎に手をやり、しばし思案してから青年に微笑む。


「エネル皇国の密偵の女性の居場所は分かっているんですか?

分かっているならば子爵と共に捕らえるのが上策です。

逃がしますと厄介ですしね。」


「はい、現在その密偵の女はイスダラス子爵の別邸にいるとの情報も手に入れています。」


「さすがですね、トリィ


貴方にはいつも私は感謝しているんです。


一歩間違えば命の保証すら出来ない仕事をさせているのに」


レイは隣にあるソファに座り、未だに片膝をつく青年トリィを見る。

トリィは顔をあげると真っ直ぐにレイを見つめ返す。


「この命はあの時よりレイ様の物


レイ様のためにこの命はあり、レイ様のお役に立つことだけが私の生きる道でございます。」


真剣な眼差しに少し寂しげなレイ


「トリィ、貴方と言う人は・・・


いいでしょう、決めましたよ。


明日、騎士団から小隊を二つほど貴方に預けますから、皇国からの密偵の女性の捕縛を命じます。


イスダラス子爵の方は私が動きましょう。


恐らく相手も周到なはずです。

長期戦になります、覚悟しておきなさい。」


「畏まりました。仰せのままに」


同時に青年は恭しく一礼し、部屋から出ていった。

それを見送る間もなく、その扉から騎士の一人が入ってきた。


「相変わらずトリィは俺を無視しやがるんだが


ちゃんと躾しているのか?」


「ニール、それはあなたが悪いのでしょうが


トリィをあれだけイジメておいていまさら愛想よくしろ、だなんて


無視しているだけマシなのではないですか?」


するとニールと呼ばれる男が苦虫を潰したような顔をする。


「あれは、トリィがあんまり、そのなんだ。」


「貴方は、好きな子ほど苛めたくなるんでしたね。

トリィに嫌われては元も子もないのに

どこの子供ですか?ちゃんと好意を伝えないで苛めるのは嫌っていると言ってるも同然です」


どうやらレイの一言が効いたのかがっくりと肩を落とすニール


「なんでトリィは未だに男装なんかしてるんだよ


女のくせに、おまけにレイの密偵なんかやってやがるし」


トリィは青年ではなく女性だったようである。


ニールは恨めしげにレイを見るが、レイ本人はケロッとしている。


「彼女が決めたことですからね


私の役に立ちたいと、これでも反対したんですがね


まったく聞いてくださりませんでしたよ。

頑固なところがあるんですよ」


ため息を漏らすレイに少し悔しげなニール


「それで、何か用でなかったのですか?」


「・・・・・俺も参加させろ


どうせ明日辺りから仕掛けるんだろう?」


「鼻が効きますね、相変わらず


ですが、良いんですか?


仮にも近衛騎士団団長たるあなたが陛下の側を離れて、陛下からお叱りを受けたいんですか?

それでなくても叱られているのに」


不機嫌そうに睨むニール


「・・・・好きな奴を追いかけるためだといえば


今の陛下ならどうにか納得するんじゃ」


「それと仕事を放棄するのは違いますよ。


ちゃんと仕事してから追いかけろと言われるのが関の山です。」


ピシャりと言われ、押し黙るニール


それを黙って見守るレイ


しばし、無音の室内にその時小さなノック音が響き渡る。


「入って来なさい。」


「失礼します。


こちらにうちのバカ団長がお邪魔しておりませんか?」


レイの許可と同時にソプラノの綺麗な声とともに妙齢の女性が入室してきた。


「おい、今バカと言わなかったか?言ったよな?俺は団長だぞ、敬え」


「団長、やはりいましたか。


そして疲れてるんですね。私がバカなどと言う言葉を使わないのを知ってらっしゃるはずです。


うやまう?何ですか、それは楽しいんですか?美味しいんですか?

違うならば口にしないでください。」


言い合いが始まる。

前回説明していなかったので


エネル語は帝国(このお話しの舞台)から南に行ったところにある一帯で使われる言語です。


イース語は帝国一帯で使われる言語で


セシルの母国、クリーガナもイース語です。


因みに位置的にクリーガナは小国を挟んで帝国の東側にあります。

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